誰でもよくなかったべつにバスケじゃなくてもよかった。
森重寛は小さな頃から身体が大きかった。比例して力も強いし肝も太い。大抵のことには物怖じせずマイペースで、イメージした動きをするには身体をどう動かせばよいのかという感覚は、先天的に備わっていた。スポーツで頂点を取るには充分すぎる素質である。
両親は教育に熱心というわけではなく本人の好きなことをやればいいという方針だったため、なにかを強要されたことはなかったが、小学校にあがったあたりで周りの大人がなんやかんやと口を出してくるようになった。
最初は少年相撲だったような覚えがある。経緯は知らないが地域の大会に出場していて、そこで優勝したのだ。森重はすでに同級生よりもゆうに頭ひとつは大きかったためにまったく勝負にならなかった。そこからいくつかの大会に出た。学校の友だちと遊ぶときにはなにをするにしても手かげんをしていた森重にとって、本気を出してもいい勝負の場は楽しかった。勝つと褒められるのも気分がいい。
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