手をつなぐはなし その手に触れた。暖かい、柔らかい、人の、女の子の手。
けれど、ところどころまめのある、戦う術を持つ人の手。
その手を握っているのは、彼女が今眠っているからだ。
先の事件で、民間人が巻き込まれかけた。当然、かばおうとした。それは、おれも、ひかるちゃんも同じことだった。
偶然だった。偶然、おれよりも、ひかるちゃんの方が巻き込まれそうになった民間人に近くて。おれは、間に合わなくて。
目の前で、彼女の体から赤い血が、たくさん零れて。
必死で現場をどうにかして、冷たくなっていく彼女の体を抱えて、病院に駆けこんで。処置を受ける彼女を、眺めることしかできなくて。
今は、病院のベッドで横になる彼女の横に座って、その手を握っている。
彼女の手は、さっきよりは暖かくなっていた。
それに、どうしようもなく、安心する。
彼女は、まだ生きているんだ、と。
彼女の暖かさが、機体の表面から伝わってくる。それでも、普段よりはその温度は冷たい。
だから、怖くて手を離すことができなかった。
彼女が目を覚ますまで、ずっと。
その手を、離すことができなかった。