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    よるのなか

    二次創作文字書き。HRH🍣右、🍃右中心。

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    よるのなか

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    フェイブラ。フェ君お誕生日おめでとうな内容です。バーフレ出る前に書いたので誕生日のあれこれはなんとなくです。とりあえず二人にチョコ食べさせたかっただけ。

    溶けるまで ウエストのメンバーを中心に開いてくれたバースデーパーティは、先程無事に終了した。ディノが頼んだピザに、キースの料理、ジュニアのバースデーソング披露など、年々賑やかになってきているように思うが、嫌ではない自分がいる。昔は音楽が関わらない集まりごとなんて、面倒としか思えなかったのに。俺も色々変わってきたなと自分を顧みながら、フェイスは自室に戻った。片付けを手伝おうとしたのだが、本日の主役だからと免除された形だ。まだ休むには早いし、届いたプレゼントの整理でもしようかなと思っていたところで扉のノックの音。
     返事をすると、入ってきたのはブラッドだった。
    「……どうしたの」
     想像していなかった来訪者に驚いて、素直に問いかけてしまう。兄は表情を動かすことなく、手に持った袋を差し出してきた。
    「追加でお前宛のプレゼントが届いてな。ディノ達に届けてくるよう頼まれた」
     そうだった。この兄も先程のパーティには参加してくれていて、片付けも手伝っていたのだった。すぐに片付けを離脱しようとするキースのお目付け役も兼ねてだが。
    「……そう、ありがと」
    「…………」
     礼を言って受け取るったが、ブラッドはすぐに部屋を出ようとはしなかった。僅かな沈黙。まだ、何かあるのだろうか。推測しようとしたが、相変わらずの固い表情からは何も読み取れない。無言で先を促すと、ブラッドはもう一つ小さな包みを差し出した。
    「……これは、俺からだ。どこかで渡そうと思っていたのだが、タイミングが掴めなかった」
    「え」
     驚いて兄の顔を改めて見る。タイミングが掴めないなんてこの兄にしては珍しいと思ったが、表情はやはり変わらない。そのことに悩んでいたのか、戸惑っていたのか、そういった感情は読み取れなかった。
     プレゼントを贈られるなんて、思っていなかった。自分達兄弟は、険悪ではなくなったものの付かず離れず、という表現が近い。長い時間離れすぎていたために、簡単には歩み寄ることができなくて。自分もブラッドも、素直に感情を表すような歳は過ぎ去ってしまっている。だから、少なくともプレゼントを贈り合うような仲ではないと思っていたのだ。きっと、先程の沈黙も、その為だ。表情にこそ出ないものの、兄は兄で、どう切り出せば良いかわからなかったのかもしれない。フェイスは、少しぎこちない動きで差し出されたものを受け取った。中身は、何だろう。
    「ねぇ、開けても良い?」
     そう聞いてみると、ブラッドは構わないと返事を返してきたので開封した。
    「ショコラ……」
     抹茶やきな粉といった和のテイストが入ったショコラだ。グリーンイーストの店舗の一つに、こういったショコラの店があることはフェイスも知っている。ブラッドらしいプレゼントだと思った。
    「食べてみても、良い?」
     その問いにも同じ返事が返ってきたので、そのうちの一つ、おそらくきな粉が練り込まれているだろうものを摘んで口に運ぶ。きな粉のまろやかさと、カカオの甘みと苦味が程よく溶け合って、品の良い味だ。
    「美味しい」
     素直に感想を言うと、兄はそうか、と僅かに表情を緩めたように見えた。嬉しいのだろうか、そう思ったら何故か胸が締め付けられるような感覚を覚えて。少しだけ、近付きたいと思った。
    「食べる?」
    「……俺が渡したものだろう」
    「そうだけど、せっかくだし」
     フェイスは抹茶が入っていると思われるグリーンのショコラを一つ手に取り、ブラッドの前に立った。

     自らの口に運んでからブラッドの顔をぐいと引き寄せ、口を合わせる。

    「――っ」
     ブラッドは一瞬体を固くしたが、すぐに応じて口を開けた。フェイスはその中に、自らの舌とショコラを差し入れる。ゆっくりと、互いの舌の温度でショコラが溶けていき、抹茶とカカオの風味が口内に広がっていった。いつの間にかそれぞれの腕は互いの背に回されていて。室内に響くのは、互いの少し不規則な息遣いの音だけ。ショコラが溶け切って、完全に消えるまで長い間それは続けられた。
     溶け切って、なくなって。それからやっとフェイスは口を離した。少しだけ上がった息を整えてから、兄を見上げる。
    「……美味しかったでしょ」
    「……あぁ」
     同様に息を整えたブラッドは、頷く。僅かに目元や頬は紅潮しているが、先程緩んだように見えた表情は、もういつもの調子に戻っていた。
    「プレゼント、ありがと」
    「あぁ」
     もう一度礼を言うと、ブラッドは頷いて踵を返す。その姿が消えたのを見届けてから、フェイスはもう一つ手元のショコラを手に取り、口に運んだ。
     また一つ、口の中でショコラが溶けていく。ショコラは兄と自分の中で簡単に溶けて消えていったのに、自分達兄弟の間にある何かは、まだ溶けないままだ。それが何かも、ブラッドが抱えているだろう事情も、まだまだわからない。だから素直に手を伸ばすことができなくて、こんな方法ばかり取ってしまう。それはおそらく、ブラッドも同じだ。
     もう少しだと思うのに。口の中で溶けて消えていくショコラの余韻を感じながら、フェイスはそう思った。
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    よるのなか

    DONE幻想水滸伝webオンリーイベント「星の祝祭Ⅵ」のWEBアンソロ企画参加作品です。
    キャラ「2主人公とジョウイ」で、お題「緑」お借りしました(CPなし)
    ミューズ和議決裂後のどこか(設定はふわふわ適当)で、偶然二人だけで会うことになる2主とジョウイの話。
    ハーンとゲンカクも戦時中に酒を酌み交わしていたらしいし、二人にもそんな時があればいいのに、と想像した結果です。
    2主人公の名前→ミラン
     時折、一人になりたくなる時がある。城から出て、誰にも会わずに、ただ一人でぼうっと自然を眺める時間。勿論長時間そんなことをするわけにはいかないので、ごく短い間だけれど。そんな衝動に駆られた時は、ミランはこっそりビッキーを訪ねてどこかに飛ばしてもらい、一人の時間を過ごした後で鏡を使って戻っていた。
     今日も、そのつもりだったのだ。飛んだ先で、思わぬ人物に会うまでは。
    「やっばり、今の時期は緑が綺麗だと思ったんだよな。うん、ここにして良かった」
     そう呟いて、ミランは両の手を天に伸ばし一つ深呼吸をした。澄んだ空気と青々とした空の下で、鮮やかな緑が生い茂っている。乾いた風に揺られて緑が揺れる、その合間からきらきらと漏れる光が綺麗だ。人気のない山の中腹。少し歩けば、故郷が見えてくる。幼い頃冒険と称して、ナナミやジョウイと何度か訪れた場所だった。今日はどこで過ごそうか、そう考えていた時にふと頭の中に浮かんだのが、この場所だった。昔、ちょうどこの時期にも訪れたことがあり、その時に木々の緑がとても美しく感じたのを思い出したのだ。本来ならば今は訪れることは叶わない地であるが、こんな山奥に兵を置く程の余裕はハイランドにもないはずであり、ビッキーの転移魔法と鏡の力で、ほんの僅かな時間ならば滞在は可能だろうと判断して今に至る。勿論これが仲間に知られれば大目玉を食らうことは確実なため、こっそりと。
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    よるのなか

    MOURNINGキスブラ。酔っぱらって暴君極まりないブさんです。ブさんが大分いけいけどんどんおかしなことになってます、すみません…キさんを暴君振りで振り回すブさんが急に書きたくなりまして。
    書いててとても楽しかった。
    割増暴君『三十分後、お前の家』
     受信したメッセージには、それだけが表示されていた。理由も状況もさっぱりわからねぇが、とりあえず三十分後に家にいろ、ということだけはわかったから、ディノにそれを告げてオレは自宅へ足を向ける。ちょうどパトロールが終わったところだから三十分後に着けるけど、これタワーで受け取ってたら三十分後に着けるかなんてわからねぇぞ、とそこまで考えて、いや、パトロール中だとわかっていたんだな、と思い直した。あの男のことだ、それくらい把握済みで送った指示なんだろう。
     ぴったり時間通りに着くと、既にブラッドは玄関先に立っていた。
    「……来たか」
     そう言って、オレをじっと睨んでくる。来るなり睨まれても、とオレは思わず後退りしそうになって、それからよくブラッドを観察した。どうも、目が据わっているように見える。なのにどこか覇気がなくて、それから目元や首筋、頬など全体的に妙に赤いような。
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    recommended works

    佳芙司(kafukafuji)

    MOURNING前にピクシブに投稿してたやつ
    Like a bolt from the blue.(HeriosR/キース×ブラッド)

    「とにかく聞いてくれ、俺は昨日お前等と飲んで、リリーが帰った後にジェイと二軒目に行ったんだ、其処でもしたたか飲んじまって、まぁその時は後悔してなかったんだけど、会計済ませた後になってから段々吐き気を催す方向に酔いが回っちまったんだ、何度も泥酔の修羅場を潜り抜けてきた俺も流石にヤバいなと思って意識がある内にブラッドに連絡したんだ、俺はその時リニアの駅前のベンチにいたから大体の場所と、あとマジヤバい水飲みたいって事も伝えた、ちゃんと伝わってたのかどうか不安だったけどとにかくもう何とかしてくれーって気持ちだった、意識飛びそうなくらい眠気もあったけど、スられちゃ困ると思ってスマホと財布を握り締めて俺は大人しく待ってた訳だよ、そしたら着信があってさ、出たらブラッドなの、アイツなんて言ったと思う? 『項垂れてだらしなくベンチに座っているお前を見つけた。今そっちに向かう』って言ってさ、だらしなくって余計な事言いやがって、こっちはもう気分は最悪だってのによ、んで正面見たらさ、いたんだよ、真っ直ぐこっち見て、人混みの中を颯爽と歩いてくるブラッドがさ……なんかもう、今お前が歩いてるのはレッドカーペットの上ですか? ってな具合に迷いなくこっち来んの、しかも上手い具合に人の波も捌けててさ、もう何がなんだか分かんねーんだけど、目が離せなくて、ぼーっとしてる間にブラッドは俺の近くに来て、またアイツなんて言ったと思う? 『待たせたな』とかクッソ気障な事言いやがったんだよ笑いながら、いや待ってたけど、待ちかねてたけどさぁ、その確信を持った態度は何? って、唖然としちゃうってもんだよ、しかもこっちが何も言わないでいたら一言も言えないくらい体調が悪いのかって勘違いしたのかどうかは知らねーけど、わざわざ近寄って『立てるか?』とか訊いてくるし、いや立てるからって思って立ち上がろうとしたらさ、情けねーけど腰抜かしてたみたいで、よろけちまったんだよ、でもアイツは平然とこっちの腕引いて、オマケにアイツ、腰まで抱いて支えてきてさ、もう大混乱だよ明日雹でも降るんじゃねーのって思った、この天変地異の前触れを予感して困惑する俺を尻目にアイツは『手のかかる奴だな』とか笑いやがってさぁ」
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