今日は何の日リオヌヴィ『10/25』※現パロ設定
「……なんなんだ、これ」
先ほど宅配業者から受け取った荷物。
ヌヴィレットさんが通販したもので、今日届くから受け取っておいて欲しいと頼まれた物。うっかり注文数量を入力間違えるという可愛いミスをすることもたまにあり、この前はお茶缶が10セットも届いた。
お茶はよく飲む方だし、飲みきれない分はそれぞれの知り合いに譲って消費したのが懐かしい。
宅配業者が持ってきた荷物が思ってた以上に大きい箱でまた注文ミスかな? と思っていたがそれよりも重量に驚いた。受け取った瞬間あまりの重さに変な声がでた。
持てない重さではなかったので何とかリビングまで持ってきたはいいが……いったいヌヴィレットさんは何を頼んだのだろうか。勝手に開けるわけにはいかないので帰りを待っているのだがとても気になる。
ガチャリ、と玄関のドアが開く音がする。
パタパタとスリッパの足音。何処か浮かれているように聞こえるのは気のせいだろうか。
「ただいま、リオセスリ殿」
「お帰り、ヌヴィレットさん。帰ってきて早々にすまないが今回は何を通販したんだい?」
ただいま、のハグをしながらヌヴィレットさんに荷物の中身を聞く。
「ああ、届いたのだな。受け取ってくれて感謝する。重かっただろう」
「持てない重さじゃなかったから大丈夫だったさ……って、ヌヴィレットさん。重かっただろうって、いったい何が入ってるんだ」
じっと、茶色い段ボールを見つめる俺。
「米だ」
「……米」
「米の産地で有名な新潟米の新米を10キロと、同じ産地の天然水をとりあえず5リットルほど」
水は一度の注文では欲しい数量の発送が出来なかったらしく後日また送られてくるらしい。
なんで米? そして水?
頭の中が疑問で埋まりそうになる。
「前にフリーナと旅行に行った時に食べた新潟米がとても美味だったのだ。ニュースで新米の時期と聞いた時にそれを思い出してリオセスリ殿にも食べてもらいたいと思ったのだ」
柔らかく微笑むヌヴィレットさんにこっちの口元も緩くなりそうになる。
俺の為、と言われて喜ばないヤツはいないと思う。
「ありがとう、ヌヴィレットさん。……所でこの大量の天然水は必要だったのかい」
水ならすでにヌヴィレットさんが全国各地から取り寄せている水が沢山ある。米を炊くならそれでもいいと思うのだが、それを指摘するとヌヴィレットさんの眉間に少し皺がよる。
「君の考えもわからなくはない。だが折角の新米。それも一等米コシヒカリを炊くのなら同じ産地の水が最も適している」
水、というワードにスイッチが入ってしまったのか新潟米の栽培方法から水との関連性。そして普段好んで飲んでいる水と今回取り寄せた水の違いについてのプレゼンが始まった。
どうにか宥めて、当初の目的である新潟米を俺に食べさせる方に軌道修正し二人でキッチンへと向かう。
ピー、という炊飯器の炊ける音。
直ぐに開けず数分蒸らしてから炊飯器の蓋を開けると甘いご飯の炊ける匂いに思わず涎が出そうになった。
茶碗一杯の白米に陥落する日がくるとは思わなかった……。
この後、ご飯にあうおかずをめちゃくちゃ買ってしまい沢山あった米は予定より早いペースで消費された。
旨いのが悪い。
さらに悪魔の囁きが追加される。
「新潟には海が近くて美味しい海産物を購入出来るだけでなくその場で食すことの出来る地元では知名度のある場所があるのだが……」
とスマホである画像を見せてくるヌヴィレットさん。
イカ焼、アユ焼、ホタテ貝。カニ汁なるものもあるらしい。
クルル……と胃袋が食べたいと訴えてくる。
無言で俺とヌヴィレットさんの休み予定の確認とルート検索を始める。
スマホの画面とにらめっこしていると控えめに腕をツンツンされる。
調べ物に夢中になってしまっていた、とヌヴィレットさんの方を見ると手に小振りの瓶があった。
「……今回の米を使った日本酒という物も気になって購入したのだが。明日は私も君も休みだろう」
有名な名前の日本酒を持ってヌヴィレットさんが晩酌のお誘いをしてくる。
「へえ、あの旨い米から作られたってんなら酒もさぞ美味なんだろうな」
硝子の器に注がれた透明な液体からは芳醇な香りが漂う。一口飲むと口当たりが良く、飲みやすい。が、度数もそこそこ高いと思う。
しばらくすればあまりお酒を飲まないヌヴィレットさんの白い肌が赤く染まるだろう。
程よく酔いが回る頃を見計らって、食べ頃になった可愛い恋人を美味しく頂くとしよう。
後日。
「まって日本酒飲みまくれるイベントあんのやべえだろ。いっそ泊まりでいくか」
「それならここの水族館と近くにあるジェラート屋にも行ってみたい。距離的に諦めていたのだが泊まりなら……」