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    あらた

    @arata00msms

    20↑成人済女性。文字書き。
    現在は原神で活動。
    リオヌヴィ、カピオロ(スラオロ)メイン。
    カプなしSSも書いたりします。

    Xのまとめ中心。ピクシブにも同じ内容か加筆修正したものを公開することがあります。

    参加してるWEBオンリーの開催期間中、該当しない作品は一時的に非公開にしています。

    マシュマロでの感想はコチラ↓
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    あらた

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    リオヌヴィWEBオンリー1で公開してた季節SSです

    リオヌヴィ季節SSjuillet

    雨季も終わり、じんわりと汗ばむ季節に変わってきた。
    本格的な夏はもう少し先とはいえ動くと少し暑く感じる。
    今日は曇も少なく、眩しく感じる日差しを手で軽く遮りながら足早に目的地へと向かう。もう一方の手に握られた少し大きめの紙袋を持って。
    パレ・メルモニアに入ると冷却用マシナリーによって少し冷やされた風が汗ばんだ身体に心地よく感じる。
    もう少し小型化できれば一般市民にも浸透するのかもしれないな。
    風を送るだけなら簡単な構造で済むのだが、冷たい又は暖かい風を安定して送るとなると複雑になりマシナリーのサイズも大きくなってしまう。現状ではパレ・メルモニアとエピクレシス歌劇場、そして開発場所であるメロピデ要塞にしか設置されていない。
    とはいっても建物内全てとはいかないのでパレ・メルモニアでは最高審判官の執務室があるフロア。歌劇場は舞台と客席。メロピデ要塞は機械熱が最も集中する場所、と重要と思われる所で使用されている。場所も限定されているというのももう一つの課題ではあるのでそれは開発チームに頑張って頂こう。
    と、話題が逸れた。
    最高審判官の執務室への扉をノックすればすぐに中から入室の許可が出る。
    「失礼するよ。ヌヴィレットさん」
    「リオセスリ殿。ごきげんよう。暑い中ご足労だった」
    「ヌヴィレットさんの顔を見たら疲れも飛んでいくさ」
    私の顔にそのような効果はないのだが……と真面目に返してくるヌヴィレットさん。
    「ところでリオセスリ殿、その手にある荷物は?」
    「ん。ああこれか。今日は暑いから」
    溶けてなければいいのだけども、と紙袋の中身をテーブルに広げていく。
    出てくるのは旬のフルーツを使ったジェラート。
    テイクアウトはしていなかったのだが、カップ入りだったので無理を言って紙の箱に詰めてもらった。こういう時に自分の神の目が氷元素で良かったと思う。
    生身までカチコチにならないよう箱の外側を凍らせて、袋に入れてきたそれはちょうど良いタイミングで元素の氷が溶けていた。
    ジェラートは無傷で、ひんやりとした冷たさを保っている。
    「暑さはあまり得意じゃないだろ? 休憩がてら涼を取れたらと思ってな」
    「君の気遣いに感謝しよう。しかし、すぐに食べてしまわないと溶けてしまいそうだ」
    チラリ、とデスクの上で山になっている書類を見るヌヴィレットさん。
    「書類は後回しにしても消えてなくならないさ。少しばかり早いがティータイムにしよう」
    ジェラートのカップをヌヴィレットさんの頬に近づけると冷たさで僅かに驚くものの、冷気が心地よいのか目元が若干緩んだ表情にこちらの心が溶かされそうになった。




    août

    水の下とはいえ夏本番にもなると要塞の気温や湿度は快適とは遠くなる。
    暑い陽射しを受けない分マシだと思われそうだが内海の水温も上昇しているので外から熱を冷ます力が落ちてしまう。冷却装置をフル稼働にしていてもマシナリーの熱や季節特有の湿度はそうそう下がらない。
    なので、日中の作業は無し。納期の都合で作業をしないといけない場合は気休めではあるが多少はマシであろう夜の時間に追加作業を許可している。
    その都合上、執務室での仕事も夜中から早朝にかけてやることが増える。
    看護師長には「あまり無理はダメなのよ」と注意されている。一時的なことなのであまり強く言われてないがそろそろミルクセーキがやってきそうなので休憩はこまめに取るようにしている。
    今日も夜遅くまで作業していた囚人に労いの言葉をかけて、夜勤の看守に後を任せると日中に出来なかった書類を片付け始める。
    深夜のデスク作業は嫌いではない。喧騒の絶えない要塞内も物音ひとつ無いとまではいかないがそれなりに静かで。
    紙を捲ったり、ペンを走らせる音が普段より耳に届きほどよく集中できる。
    どのくらい時間が経っただろう。
    ふと時計を見ればあと少しで夜明けという時間。
    今日も徹夜か……看護師長のミルクセーキがやってくる日も近そうだ。
    ずっと同じ姿勢でいたから身体が固まってしまっている。
    少し動いてから一眠りするか、と執務室を出ていく。
    向かうのはメロピデ要塞と水の上を繋ぐ唯一の出入口付近にある内海を眺められる窓辺。触れると硝子越しに伝わる水の冷たさが心地よい。
    いっそひと泳ぎでもしたら気持ちよさそうだな、とぼんやり水中を眺めている。すると遠くの方に魚の鰭のように漂う長い銀髪が見えた気がした。
    「……まさか、なぁ」
    近くにあるメンテナンス用の出入口から水中に入り、目当ての元へ泳ぐ。気の所為、または疲労による幻覚かと思っていた存在は正しく現実で。
    向こうもこちらに気付いたのか、指先を上へと向けてくる。ゆっくり浮上して水面に顔を出せば濡れた前髪が顔にへばりついて視界を隠してきたのでおもむろにかきあげる。
    「……このような時間帯に君に会えるとは思ってもみなかった」
    「俺も、こんな時間に泳ぐヌヴィレットさんに遭遇するなんて思ってなかったなぁ」
    「驚かせてしまいすまない。最近の暑さに堪えたのもあるが、水が恋しくて泳ぎにきていたのだ。夜明け前ならば人の目を気にすることもないと思い」
    ヌヴィレットさんなりの気分転換だったらしい。
    最高審判官が泳いでいる姿を見られたら市民は驚くし、場合によっては次の日の新聞の一面を飾りそうではある。
    「息抜きは大事だしな。……んにしてもここの海域じゃなくても一目を気にせず泳げる場所はあるだろ」
    「それはそう、なのだが。……最近はパレ・メルモニアに君が赴くことが減っていた。仕方ないことだと理解はしている。が、メロピデ要塞付近の海でなら君の気配を少しでも感じられるかもと思い気がついたらここまで泳いでしまっていた」
    迷惑ならすまない。と若干申し訳なさそうに言うヌヴィレットさん。
    つまり、俺に会えてなくて淋しいからここまで泳いできたと。無自覚で。
    俺の恋人可愛いな、おい。
    顔がニヤけそうになるのをどうにか堪えて、いつもの笑みを浮かべる。
    「いや。俺もヌヴィレットさんに会いたいと思っていたところさ。夜が明けるまででよけけば、もう少し一緒に居ても?」
    「……ああ、喜んで」
    手を繋ぎ、再び水の中へと二人で潜る。
    短時間の水中デート。
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