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    ゲニー

    ZL小説
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    ゲニー

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    【現パロ/リーマンゾロ×喫茶店員ルフィ】
    ・2018年超GLCで配布した無料ペーパーのデータが出て来たのでまたどっかいかないうちに収納させて下さい(汗)
    ・書いたのは大昔なのでもうないかもしれないですツンデレ喫茶……(本当にありました)
    ・店員ルフィにゾロが落ちるまでの話
    ・女装に非ず
    ・何でも許せる人向け

    #ゾロル
    zolu

     『あのコはツンデレ』



    「そりゃまたマニアックなとこに……」
     と、電話口で聞いた同僚の言葉の真意を、ゾロはだいぶん後から知ることになった。
     気に食わない金髪頭を思い出しながら、一体誰のせいで……と内心ぶつくさ、「さっさと来いよ」と念を押す。
     同僚は頷き「ああそれなら」と続け、ゾロにあるひとつの名前を挙げた。
    「絶対ェお前のタイプだから」
     そんな、確信に満ちた声音を残して。


     ゾロは今、『ボア』という喫茶店の前にいる。
     同じプロジェクトを担当しているさっきの同僚、名をサンジというのだが、彼と得意先へのプレゼン帰りだ。
     結果は大勝利。サンジは大口の契約がとれたせいかたいへん機嫌がよく、「おれちょっと行く所あるから、お前先に帰ってていいよ」とゾロに言った。が、ゾロは極度の方向音痴である自覚が残念ながらなかったので、まんまと道に迷ってサンジに泣きつく羽目になる。
    「やっぱ一緒に帰るから用事が済んだら迎えにこい。あー、喫茶『ボア』ってトコで待ってる」
     そして冒頭に繋がるわけだった。
     ゾロがその喫茶店を指定したのは単に見上げたそこにあったからだ。喫茶店はテナントビルの二階にあって、一面ガラス張りの窓には不気味な蛇の絵がかかれていたが、気にするゾロでもない。
     とにかく歩きまわってのどが渇いた。潤したい。
     さっきサンジに告げられた女(だと思う)の名前を頭の中で反芻しながら、特に疑いもせず階段を上がり喫茶店の扉をくぐる。そこに、何が待っているかも知らないで──。
     さっそく「いらっしゃいませ~」の軽やかなウエイトレスの声……はなく。
    「なんできたの? 誰がいいの?」
     そんな、「ここどこですか?」と疑いたくなるような出迎えの言葉がかかった。

    「なんでって……ここは喫茶店だと認識してるんだが」
     迎えてくれたオレンジ髪の女は、白に水玉模様のメイドチックな制服姿で、その膨らんだ袖と可愛らしいひらひらエプロンつきフリフリミニスカートのいでたちに似合わず、整った顔をむっつりしかめて「ふーん」と目を眇めた。
     いやふーんてなんだ、ふーんて。
    「なんにもわかってないんだぁ。じゃあ、指名はなしね?」
    「指名? あ、いや……それは〝ルフィ〟ってコを頼む」
     悔しい話だが、こうも待遇が悪いと悪友の「お前のタイプ」に望みをかけるほかないと思ってしまった。どうせここを出たら自分はまたどこへ行ってしまうかわからない。ちなみにサンジはマーメイド喫茶のケイミーちゃんとかいうのにただいま入れあげ中。蛇足だが。いや足は魚だが。
    「ルフィ? ほんとにルフィがいいの?」
    「いいつってんだろ」
     こうなると目も据る。
    「わかった。じゃ、ちょっとここで待ってて」
    「ああ。急いでくれよ」
     で、待たされること10分……。たいがい遅い。

    「お~いこっち!」
    「あ?」
     目線やや下から、声。
    「なんだよ。入るの入んねェの?」
    「あー、そりゃ入るけど」
     いきなり目の前に現れた店員を、ゾロはつい上から下までまじまじ眺めてしまった。
     舌足らず気味の語尾が特徴的なその声は女の子にしてはハスキーで、ショートカットの真っ黒い頭のてっぺんを可愛らしいボンボンでくくってはいるが、お世辞にもくしを通しているようには見えない。
     スレンダーな体躯はまるで少年のそれだし、よくよく店内の女性店員を見回してみても彼女らがミニスカートなのに対し、〝ルフィ〟だけ太もも丸出し短パン姿(に、やっぱりひらひらのスタイ型エプロン)。
     なぜ──?
     でもまぁ、その脚線美の見事さはダントツだ。
    「いや、待てよ?」
    「なに言ってんの待たねェよ。こっち来い。こっちこっち! ──はい、ここ座れば?」
    「あ、あぁ。いやなんでそんな適当……」
    「注文は? めんどくせーからさっさと言え」
    「悪ィ。じゃあアイスコーヒーを頼む」
     つーかおれ今、謝る必要あったか?
    「ええェー!? おれコーヒー嫌いなのにィ!!」
    「!? ここは店員の好みじゃねェと注文できねェのか? ………お前、今〝おれ〟っつったか」
     確かに〝おれ〟と言った。これはもしや……いや、もしかしなくても。
    「左目の下の傷、すげェな」
    「おおカッコいいだろ」
    「お前ってその……男、だよな?」
    「男だぞ。だったら何だよ」
     ゾロの予想は当たっていた。というより、気づくのが遅すぎたことを恥じたい。
     ルフィはれっきとした男の子(!)だったのだ。危うく騙されるところだった。あまりに線が細くて中性的だから、先入観もあって疑うのが遅れた。
     それにぷっくり頬を膨らませた小さな顔ときたら中学生でも通用するだろう童顔で……。
     うわ、犯罪だろこりゃ。
    「悪さする気はねェけど」
    「は?」
    「お前は何が好きなんだ?」
     ついつい甘やかすようなことを聞いてしまう。
     とは言うも。
     この態度は正直ムカつく……。
     いくらちっとばかし顔が可愛かろうが(そう可愛いのだ)(でも男)、サービス業の人間がやる接客ではない。
     それからゾロの問いに対し、返ってきたのは。
    「なんでもいいじゃん。ベー、だっ」
     客に舌を出す、そんな思わず握りこぶし固めたくなるような不遜な態度と返答だったのだから。
     おまけにぷいっとルフィはそっぽを向いてしまった。
    「お、お前なぁ……!」
     とうとうゾロの堪忍袋の緒が切れ……かけた、次の瞬間。
    「ルフィ! こっちに来てわらわを手伝うのじゃ!」
     奥からやけに高飛車口調の女の声が飛んできてルフィは「おー!」と返事をするなり、
    「じゃお前アイスコーヒーでいいんだな。これ伝票。自分で書いといて!」
     ベシン!と伝票をテーブルにたたきつけ、カツカツ(靴はブーツだ)厨房の方へ消えて行ったのだった。

    「な、何なんだいったい、この店は!?」
     ちょっとおかしい、と他人事には首を突っ込まない主義のゾロでもさすがに不思議に思い始めた。
     そう言えば愛想のいいウエイトレスなんか、この店にはいないような……? いやいやバカな。そんな飲食店があってたまるか。
     ゾロはがぶりとお冷を呷り(これも叩きつけられたので3分の1ほどこぼれている)、落ち着け自分、と己に念じた。あんな小僧に怒ってどうする。いい大人が。
     クールダウン、クールダウン……。
    「にしてもクソ生意気なガキだったよなァ。それにここのひらひらフリフリの制服着て、違和感ねェってどうなんだよ」
     ついついあの、半そでからしなやかに伸びていた細い腕やら、折れそうな手首やら、ゾロの両手で握れそうな腰やら、つるつるの膝小僧やら、耳障りのいい声やら、ふっくら柔らかそうな頬と天然朱色の唇やらを思い出し、ゾロはぶるぶる頭を振った。
    「な、なに細部まで思い出してんだおれァ……」
     不覚。少年相手に、不覚。ありえねェ……。
     しかしゾロの動揺知らず、ルフィが覚束ない手つきでトレイに乗っけたアイスコーヒーのグラスを運んできて、思わず手助けしたくなるからアタマが痛い。
     ほっとけほっとけ、こんな店員!!
     と、ゾロが決意した矢先。
    「おわ!!」
    「!?」
     何もないのに躓いたルフィがどうやらトレイの上にいくらかコーヒーを零したようなのだ。言わんこっちゃない。
    「ちぇ」と唇をつきだして、「まぁいいよな~~」とちっともよくないことをほざく。
    「おいおい。それでいいのか店員」
    「え、別にいーじゃんか。はい、アイスコーヒーお待ち~~」
     でん!と置くとまたさっさといなくなってしまった。
    「ごゆっくり、とかもねェのか! つーか半分しかないんですけど!?」
     あーあー、もう……。
     そろそろ怒る気力も萎えてきたゾロだ。
     こんな店を選んだ自分の運がなかったのだ、そう思おう。サンジはまだ来ないがさっさと飲んで出ようと決めた。
     ゾロはストローも挿さずに一気に飲み干し、カバンを手に席を立つ。自分で書いた(!)伝票を手に、レジへと向かった。
     レジ付近で待機していたオレンジ髪のウエイトレスが「ルフィ~、お客さんお帰りよー!」と声をかければ、くだんのルフィがまたすごすご姿を現した。
     で、出たな!? こんのタチ悪店員めっ!!
     でも、それがどういうわけだか。
     レジカウンターの向こう側へ立ったルフィが何やらじぃぃ、と上目遣いにゾロを見つめてくるのである。
    「う、でっけー目……」
     いやここでひるんでどうするおれ。金払って出るんだおれ。
    「おい。会計しろって」
    「えーだって……。なァ、もう帰っちまうの? おれのせい?」
    「はァ!?」
     今、ありえない言語を聞いたような。そしてこの目の前で、心なしかうるうるしている大きな瞳は現実なのか……。
     ゾロはついつい彼の顔をまじまじと見て、目が離せなくなっている自分に気づかなかった。けれど思いっきり動揺している自覚はある。
     そんなリーマンゾロに、さらなるカウンターパンチが待っていた。
    「なーなー、また来てくれるよなっ?」
     と、ルフィが可愛らしく首を傾げて、伝票を差し出しているゾロの手を両手でそっと握ったから……。

     な……っ。
     なんだコイツ……!!
     めちゃくちゃ可愛いじゃねェか──!!!(ゾロ心の雄叫び)

    「え、あー……。それはまァ、たぶんな」
     たどり着けたら、だけどな。
    「ホントか? 絶対だぞ?」
    「……約束、する」
     あああ言っちまった……。約束しちまった。

     ところが王者の猛攻はこれで終わらなかった。実にタイミングよく、それはキタのだ。
     とっておき右ストレートパンチが……。
    「よかったーァ! ありがとう!! お前いい奴だなっ」
     ぱぁぁっ、と。
     花も恥らうような眩しくてキラキラした天使の笑顔(すでにゾロフィルター搭載完了)のルフィがそこにいたのだ。
     ゾロはくらっと眩暈しそうなのを必死に耐え、男の威厳で踏みとどまった。もちろん顔になんか出さない。
    「わかったから、もう早く会計してくれ……」
     声だけは弱々しかったけれども……。
    「は~い♪ えっと560ベリーでーす」
    「ん……。じゃあ、またな。………ルフィ」
     名前、呼んじまった……。
     それから店員ルフィはうきうきとゾロを店の外までお見送りしてくれた。すぐ後ろをちょこまかついてきて、ゾロが振り返ると満面の笑顔で見上げてくる。つい「お触りはOKですか?」と聞きそうになって必死に思いとどまり、ゾロは「じゃあ」とビルの階段を降りたのだった。

    「バイバーイ!! こんど来たら名前教えてな~~~!!」
     歩道へ出たゾロに、ルフィが2階の踊り場から顔を出して手をブンブン振っていた。
    「早く店入れ!!」
     思わずゾロがそうたしなめてしまったのはルフィのあの格好を思い出したから。色々と、彼はヤバイ──。
     大きくコクンと頷いたルフィは言われるまま店内へ戻っていった。
    「ったく、すばらしくスリリングな試合だったぜ……」
     KO負けだったけどな、はっはっはっ!
     あああどっと疲れた……。
     そしてハァァ~~と長いため息(というか安堵の息)を吐いていたゾロの元へ、諸悪の根源がようやく現れたのである。
     言わずもがなの同僚サンジ。
    「て、てめェ今頃……。おいダーツ眉毛! なんなんだあの店は!!」
    「あ? なになに、つまんなかった? ツンデレ喫茶『ボア』ちゃん♡」
    「ツ、ツンデレだァ!?!」
    「そうさ。あそこはツンデレ店員が売りのツンデレ喫茶よ。最初はツンケン冷たくしといて、帰り際になったらガラッと態度を変えてデレデレしてくる。そーゆーお店!」
    「ツンデレ……。あれが世に言うツンデレなのか……」
     そ、そうだったのか……。
    「それよか店長見たかゾロ! すっげー美女だったろ!? ま、おれはいつもナミさん指名してんだけど~♪ あの女王様気質、たまんないのよねェ。で、ルフィはお気に召さなかった? ぜってーお前さんのストライクゾーンど真ん中だと思ったんだけどなァ……。ま、男だけど♪」
    「そういうことはなァ、もっと早く言いやがれ……」
     ゴゴゴゴゴ。
    「はい? あ、ちっと一服…」
    「吸うな! さっさと会社戻るぞ!!」
    「えぇ!? ちょ、ちょっと何怒ってるわけ!?」
    「うっせェ!!!」
     これが怒らずにいられるか!

     しかし、それは自分にだった。
     なぜならツンデレ喫茶だと知らず入店して、まんまとツンデレ〝ルフィ〟に振り回され、ばかりか「すっかりハマっちゃいました」なんて……。
    「誰が言えるか!!!」
    「ど、どーしたよ、さっきから」
    「てめェはなァ……」
    「おれ!?」
    「………また連れて来いよな」
    「あ、行くのね……」

     行ってやるさ、あのツンデレ小僧に〝ゾロ〟と呼ばせるために。

     ニンマリ顔のサンジはいつか斬るとして、ゾロは足早に歩き始めた。「あ、そっち逆ー」と追いかけてきたがそんなこと知るか。
     ゾロはもう振り返ることもなく、けれど〝ルフィ〟の色んな表情を思い出しながら、これから通いつめてしまうだろう未来の自分を呪った。


    ***


    「アイツ、また来たわよ? ルフィ」
    「ゾロか!?」
     同僚ルフィの童顔がペカーッと光る。
     最近すっかりお気に入りの緑頭のリーマン、彼はブレることなく一途にルフィを指名し続けている。
    「ルフィ、顔顔!」
    「!? ……お、おれデレてるか?」
    「デレデレよ。ちゃんとツン顔なさい! 仕事なんだから」
    「は、はーい」
     ばしばしとルフィが自分のほっぺを叩く。それからキリッと細い眉を釣り上げて、落っこちそうな大きな目をきつくして、むんっと口をへの字にして。
    「あ、でも適度に可愛くね?」
    「そんな加減おれにはわかんねェっていつも言ってんじゃんか……」
    「まぁいいわ。アンタの無表情から笑顔への落差、ハンパないから」
     ここじゃ黒(?)一点のルフィだけど、既にお得意様が何人もいたりする。しかも硬派な男ほど抜け出せなくする……それがツンデレ店員ルフィの、真骨頂。
    「今日もかっけーなァ、ゾロ~。でもまだまだ名前は呼んでやらねェんだ!」
     裏から店内をこっそり覗きこんでルフィがフンッと気合を入れる。
     呼んだらきっと、好きな気持ちがダダ漏れてしまうから……。
     その心理を正しく理解しているナミは、
    「お触りも許しちゃダメだからね?」
    「あ、あったり前だ!」
     ボッと真っ赤になったルフィに「ホントに大丈夫かしら」と鼻白むナミだ。
    「はいはい、じゃあ行ってらっしゃい!」
     伝票をルフィに押し付けて、ナミは手をひらひら振って送り出してやる。
    「も~なんてこと言うかなぁナミは……」
     ルフィはブツブツ言いつつも伝票を受け取って、ぷうと仏頂面したままゾロが待つテーブルへと向かった。

    「なんだよォ、また来たのかお前ェ~」
     お冷をドン、びしゃっ! とテーブルに叩きつけたツンデレのあのコは、
    「いい加減に名前で呼べっつってんだろうが、ルフィ」
    「や~だね。べーっっ、だ!!」
     今日も精一杯ツン全開、最後にはとびっきりの笑顔で客をメロメロにすべく、頑張っておもてなしするのだ。



    (おわり)

    続きのデータがどっか行ったんですよね……( ; ; )
    街中で出くわす話なんですけど。ちょっと進展ターンで。まぁいいか(笑)
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