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    sankakunoir

    @sankakunoir

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    sankakunoir

    DONEレノミス
    ミがレの部屋で油断して痕跡を消し忘れてしまう話
    ミ受けワンドロライさんのお題〈寝ぼすけちゃん〉に沿って書かせていただいたものですが、ほぼワンウィークライになってしまい大変申し訳ないです……!
    待ち針 ミチル・フローレスは困っている。とても、かなり、はなはだしく、切実に、困っている。
    「これって……もしかして……?」
     あかるいさみどりの目が、ベッドシーツの一点にひたと据えられている。彼の注目を浴びているのは、一縷の絹糸のような髪だ。白いシーツの波間で、忘れ去られたように浮かんでいる。彼がそっと持ちあげると、やわらかくカールした髪はくるんと指さきに懐いた。
     彼はそれを、魔法舎三階の窓から差しこむ朝の光にかざした。日に透けてなお、苛烈な色彩を失わない。
    「ミスラさん……?」
     問いかけに答えは返らない。ここは南の羊飼い、レノックス・ラムの私室である。

     朝、ミチルは学校へ通っていたころと同じように目を覚まし、同じように身支度を整える。次にすることといえばもちろん、隣の部屋で眠る兄を起こしにいくことだ。存外に寝汚い兄が職場に遅刻しないように、勢いよくカーテンをひらいて朝日をいれる。芸術的な寝癖をつけて起きだした兄は、まだ目が半ぶんあいたばかりの顔で「いい天気だなあ」と呟いた。
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