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    fuuumi_new

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    犬王
    犬王×友有

    初めて抱き合えた日のこと、覚えているか 初めて抱き合えた日のこと、覚えているか?
    あんなに嬉しかった日を俺が忘れるわけが無い。一度に夢が二つ叶ったんだからな。あの手を不便だと思った事は無かったが、もしこの足の様に皆と同じ腕を得る事が出来たら俺の光を存分に包み込む事ができるのに、って。でも、実際は友有、お前が先に抱きついてきたよなぁ。「犬王、大成功だ!」って叫んでさ。お前は見えんし俺はまだ言っておらんからどうするか迷ったけどそっと、お前の背中に腕を回した。力加減なんて分からないから本当にそっとだ。ビクッとお前の背中が震えて、「戻ったのか?」って聞いたんだ。「あぁ、戻ったぞ」そう答えれば更にギュッと首を締められたから同じように力を入れた。友有が自分の事のように喜んでいるのが堪らなく嬉しくてなぁ、はは、本当だって。初めて平家の魂が見えた時のお前の笑顔が好きだったから、もう一回見たいって思ってたから......本当だぞ?
    ではお前が俺の前で初めて泣いた日のことを覚えているか?全ての亡霊達が竜になって成仏されて。俺がこれが最後かもしれないなんて思ってたのに、お前はここから始まるって教えてくれたんだ。だから何も恐れずに舞えたんだ。お前の琵琶と共にな。でも、もう少し我慢出来なかったのか?はは、別に良いんだ。お前の泣き顔も独り占めしたかったと思っただけさ。でもやっぱり有り余る。俺はお前から有り余るほどに大切なものを貰ってしまったな。
    それから......最後に交わした言葉を覚えているか?俺は、思い出せん。お前との事は出会った時から全て記憶に残っているはずなのに、これだけは思い出せんのだ。何故って......お前は覚えとらんのか?あの日は、確か次の曲についていつもの山で話していたんだ。俺たちの周りにはもう亡霊はいないから何を語ろうかと。互いの事について話したよな。でも大半は俺たち二人の話でさ、
    「覚えちょる」
    「なぁにぃ?」
    「全部覚えちょる、って言っとる」
    「なら何故静かに聞いてたんだ?」
    「お前の声は随分と心地が良いからな。聞き惚れていただけさ。小さかったお前が町中駆け回っていた事も、あの大きな手の熱さも、鱗の少しザラザラとした感覚も、長い舌も。それから揃った手で抱きしめられるのだって全部忘れる訳がないだろう。お前の姿は見ることが出来ずとも魂はずっと見えとった。あたたかい色をしていたなぁ。声も感覚も匂いも全部、俺の記憶の中にはあるぞ」
    「本当?」
    「嘘をついてどうする?最後に交わした言葉、か。どれが最後になってしまったか潜って探してみるか?」
    「探せるの?」
    「いや、探せないがな」
    「探せないよな」
    「だが、俺が口にしたのはー」

    ふと、唇が重なった。
    会話に夢中だった唇にゆっくりと熱が伝わってくる。まるで、何かを流し込むように。思い出させるように。あぁ、あの日もそうだった。

    「言葉にせんと返答に困る」
    「しかしお前は、ちゃんと答えてくれただろう?」

    そう、離れる熱を追いかけるようにまた唇を重ねたのだった。友有の頭に手を回して、離さないように。離れないように。溢れてしまった感情を確かめる事は出来ないが、汲み取る事は出来たから。

    「好きだよ、友有」
    「はは、その言葉をきっと、六百年も待っていた」
    そう言って笑う友有は見た事ないくらい美しく笑った。誰にも邪魔されない今、存分にこの腕で大事なものを抱きしめることが出来る。
    「なぁ犬王、俺だってお前の面の下位は独り占めしたかったさ」
    「あの顔は一つの面に過ぎんからな。どんな場面であっても面の様にその役を通すための道具になる。だからな、こんなに笑ったり泣いたりする顔はきっと、お前だけのものだ」
    「そうか。こんなに美しいお前が俺だけのものか。俺はお前の隣でこれからもお前を語ることしか出来んが足りるか?」
    「充分過ぎるよ。友有、俺はお前の事を離す気はないのだから、このまま愛されていてくれ」
    「ふふ、何だか求婚された気分だ」
    「あながち間違いでもないだろう?」
    「そうだな。空白の分までお前の全てを愛するぞ」

    あの日の俺からしたら全てが夢みたいだろう。人を愛することも、こんなにも俺を愛してくれる人がいることも。きっと友有が俺の唯一の光なんだ。あの日の友有が言うんだ。「名前が無いと見つけられん」って。だから絶対に名乗ってくれ、己の名を。友有なら絶対に見つけてくれるから。そして俺は何度だって愛しいその名を呼ぶんだ。
    この先何度、引き裂かれようともな。
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    fuuumi_new

    MOURNING夏油傑×五条悟 死ネタです。
    9月の初め頃、宿儺戦で悟に負けるフラグが立ってきた時に保険で書いたやつです。だって!最強だから負けるわけない……確かにここで悟が勝ったら味気無さすぎるかもだけど、戦線離脱六眼が使えなくなるくらいで死にはせん…だって最強だよ?って思ってます。でもターミナルって生死の狭間表現有り得るので諦めてない。可能性はまだある……生きて。万が一の万が一の話でした。
    序章「悟、本当にお疲れ。頑張ったね」
    目の前にいる傑が顔を綻ばせた。
    あの日と同じ言葉を同じ表情で。
    「あ……すぐ、る」
    だけど、知っていた。ここが現実なのか妄想なのか、それくらい。だってこれは夢の中で何百回、何万回と想像した光景で……
    「悟、こっちへおいで」
    傑はそう言って両手を広げる。目の前にいるのは最後に見た袈裟を着た傑じゃなくて、高専の、あの3年間の傑だった。少しの違和感を感じながらも、吸い寄せられるように傑の方へと歩みを進めれば懐かしい温もりに包まれた。
    「傑」
    「なに?」
    「コレ現実?」
    「そうか違うかで聞かれたら、そう、だよ」
    「そうか……俺、ははっ。そっか」
    傑の言葉に目を閉じれば一気に記憶が蘇る。生前の記憶、ってやつ。
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    fuuumi_new

    PROGRESS夏油傑×五条悟
    夏休みの海!!のはずが、ホテルでイチャイチャセックスするだけの3日間になる予定の冒頭。
    なかなか進まないので尻叩きに。
    沢山えっちかくぞ!!!!
    ホテルで缶詰めいちゃラブ♡♡♡「うわっすんげぇ青!って水が透明過ぎんのか?なぁ傑!海ん中ぜってぇ魚いる!早く行こーぜ……すぐる?」
    猛暑日。
    真上から照らしつける太陽の熱と、地面からジリジリと伝わる熱に挟まれて目を細めることしか出来ない。
    「……だいじょうぶか?」
    「ん?どうした?」
    「どうした、はオマエ。体調悪い?」
    サングラスをわざわざ外して悟は傑の顔を覗き込む。ぱっと日差しが遮られ、同時に悟の顔面がこれでもかと近づいてきてハッとする。ガヤガヤと雑音のように聞こえるのは海水浴を楽しむ客たちの声で。今日からの束の間の夏休み、このビーチのあるホテルを悟が予約してくれて……。あぁ、休みを合わせるために二週間ほど詰め込んだ任務の疲れがここに来てどっと押し寄せて来たのだろう。段々と歪む視界を正そうと何度か瞬きをするも全然治らず、何とも言えない気持ち悪さが内蔵を締め上げるのをぐっとこらえる。というか、何があっても堪えたかった。なんと言ったって今日はやっと取れた久しぶりの休日で、一ヶ月も前からずっと楽しみにしていた日だから。
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    おはぎ

    DONEWebイベ展示作品③
    テーマは「くるみ割り人形」 現パロ?
    彫刻と白鳥――パシンッ
     頬を打つ乾いた音がスタジオに響く。張りつめた空気に触れないよう周囲に控えたダンサーたちは固唾を飲んでその行方を見守った。
     水を打ったように静まり返る中、良く通る深い響きを持った声が鼓膜を震わせる。

    「君、その程度で本当にプリンシパルなの?」

     その台詞に周囲は息をのんだ。かの有名なサトル・ゴジョウにあそこまで言われたら並みのダンサーなら誰もが逃亡しただろう。しかし、彼は静かに立ち上がるとスッと背筋を伸ばしてその視線を受け止めた。

    「はい、私がここのプリンシパルです」

     あの鋭い視線を受け止めてもなお、一歩も引くことなく堂々と返すその背中には、静かな怒りが佇んでいた。
     日本人離れしたすらりと長い手足と儚く煌びやかなその容姿から『踊る彫刻』の異名で知られるトップダンサーがサトル・ゴジョウその人だった。今回の公演では不慮の事故による怪我で主役の座を明け渡すことになり、代役として白羽の矢がたったのが新進気鋭のダンサー、スグル・ゲトーである。黒々とした艶やかな黒髪と大きく身体を使ったダイナミックなパフォーマンスから『アジアのブラックスワン』と呼ばれる彼もまた、近年トップダンサーの仲間入りを果たした若きスターである。
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