家族の中で一番オレに甘いのはにいさんだよね。家族の中で一番オレに厳しいのはにいさんだ。
例えば門限。
5分でも過ぎると携帯へ何度も連絡が入る。
一分置きに「どこに居る」「何時に帰る」「いつまで遊んでいるつもりだ」と連絡が入ってくるのは怖い。
そもそもその携帯だって小学校を卒業して中学になっても変えてもらえなかった子供用のスマホだ。
通話やメール、GPS機能くらいしかできない。
恥ずかしいし友達と同じように普通のスマホにして欲しいって頼んで、両親がそうだなと納得してくれたのに、にいさんが強固に反対するからこのままになった。
泣いて文句を言っても駄目だった。
スマホに変えてどんな問題があるかを一つ一つ丁寧にしつこく説明し、それに対する解決策をしっかり出さない限り認めないと許してくれない。
友達と一緒に調べて答えても新たな問題点を指摘されて全く先に進まない。
進まな過ぎて、お前には電話かメールで連絡するから諦めた方がいいと友達にもさじを投げられてしまった。
オレがスマホを手に入れられる可能性は限りなく低いままだ。
さて門限に話を戻そう。
その時間を過ぎて家に戻ると玄関先に兄が待ち構えている。
社会人で朝仕事をしに会社に行っているはずなのに、どうしてこういう時に限っていつも家に居るんだろうか。
とても不思議だ。
そんなことを考えて顔を引きつらせているのがバレると、「反省の色がないな」と言ってお説教タイムに入ってしまう。
反省してます、ごめんなさい!なんて慌てて言っても少しも聞いてくれず中へと連行される。
まだ父さんも母さんも帰ってきていない静かな、だけど明るい家の中。
にいさんはダイニングテーブルの椅子にオレを座らせると、用意していた料理を並べていく。
今日はハンバーグ。
生野菜のサラダは冷たくて、スープやハンバーグはホカホカと湯気を立てている。
パンにするかご飯にするか聞かれて、ご飯と答えると炊きたてのご飯を皿に盛って目の前に置いてくれた。
視線で勧められるままにナイフとフォークを手に取ると始まる夕食の時間。
まだお説教は始まらない。
ここでするのは今日の出来事とか学校生活についてとかそんなことだ。
にいさんはちゃちゃを入れたりしないでしっかり聞いてくれるから、お説教なんてわすれてついつい楽しくなってしまう。
あれこれ話しているうちに食事が終わると、リビングのソファへ場所を移して、そうしてやっと始まるお説教。
隣に座ってあれこれ言っているけれど、頭を撫でる手が気持ちいいので大体うとうとして寝てしまう。
そうして起きるとだいたいにいさんの肩か膝を枕にしている。
怒られることはない。
夜眠れなくなるぞととは言われるけど、そのくらいだ。
その後のお風呂の時間もお説教の続きがされるなんて事もなくて。
そんなだからお説教の内容は全然頭に入ってない。
寝てるのに気付いてないなんてことは無いはずだ。
変に思いながら、今日もお風呂の中でにいさんに言う。