そうだ、カーテンを洗濯しよう。
立香は良く晴れた雲の少ない青空を見ながらそう思った。
こんないい天気なのだ、カーテンだってすぐ乾くだろう。もう少ししたら雨が多くなって湿度も高くなる。そうなる前にやっておくべきだ。
思い立ったが吉日、と立香はすぐさま行動を開始した。
ベランダ入り口のガラス窓へ近づくとレールからカーテンを外す。端から一つずつ外して、一緒にフックも取り除く。できるだけ丁寧にやろうと思っているが、どうもスピードの方が優先されるようで時々焦りすぎてうまく外せないでいる。
立香が急ぐのには理由がある。
どうも家事をやりすぎていると思われるらしく、シャルルに見つかると止めに入ってくるのだ。
立香の家事はシャルルの為でもあるが、自分の為でもある。住んでいる家を快適に過ごせるようにしたいのは誰だってそうだろう。
まあ、その比率が九対一くらいなのが問題なのかもしれないが。
丁度よく今日はシャルルは出かけている。今のうちにやってしまうべきだ。
とりあえず一番大きな窓のカーテンは外した。ほこりをおとして、大きな汚れがないか確認して、と手順を考えていると横から伸びて来た手にカーテンを奪われた。
「あ」
釣られてそちらを見れば当然のようにシャルルがいる。にっこりと笑っているが、これは目が笑っていないというやつだ。
「今日は一日のんびり本を読むって言ってなかったかい?」
「そう思ってたんだけどね。あんまりにも天気が良いからきっと洗濯したら気持ちいいだろうなとか考えたらやるしかないと思い立ちまして。どうせなら大きいものをやりたくて」
「そうだなー。明日俺がやるって言ったの覚えてた?」
「……」
もちろん覚えていました、なんて言えるわけがない。
覚えていて、どうせなら暇な自分がやっておけばいいと思ったなんて言おうものなら、シャルルの本気のカミナリが落ちるだろう。
立香はそれを既に数回経験している。そのうえでやっているのだから、これはもう性分だ。
ぶすっと不機嫌そうに頬を膨らませて拗ねていると、シャルルはカーテンを半分立香に返す。
「一緒にやろうぜ」
呆れたように笑いながらだったけれど、それだけであっという間に不機嫌は飛んでいく。
シャルルに言ったことが全てではないが、嘘を言ったわけでもない。
この天気なら洗濯してもすぐ乾くだろうし、掃除も一緒に済ませてしまえば一日気持ちよく過ごせるはずだ。
立香は元気よく頷いて、カーテンを広げた。