カチャンカチャンとシャルルが皿の上のピーマンを子供用のフォークでつつきまわしている。
行儀が悪いとしかるべきだと分かっていても、嫌そうな顔で立ち向かう姿はかわいくて眺めてしまう。
ふふっと噴き出してしまった声にシャルルがピーマンから目を離してこちらを向いた。
いけないいけない。
笑われたなんて思われたらまた拗ねて口をきいてくれなくなってしまう。
「それ食べたら終わりだよ」
「……うう」
そう言うとシャルルはまたピーマンを恨めしそうに睨み始めた。
さて可愛くて見ていたけれどそろそろピーマンとの格闘も5分を超えてくる。
仕方ないなあとぎゅっと握ったシャルルの手からフォークを借りた。
「はい、あーん」
3つ残ったピーマンのうちの一欠片を指してシャルルの口の前に持っていく。
シャルルは困ったようにこちらとピーマンを何度も見るが、笑顔でピーマンを差し出し続けると諦めてぱっと大きく口を開いた。
そのままぱくり。
むぐむぐと微妙な顔をしながら咀嚼して飲み込むので、その間にもう一つ差し出すとまたぱくり。
そうしてなんとか皿の上は空っぽになる。
「頑張ったね、お皿空っぽだ!」
シャルルもそれを見てさっきまでの渋い顔から一転、いつもの明るい笑顔になった。
「がんばった!すごい?かっこいい?」
「うん。すごいね、カッコいいよ」
そう褒めれば腰に手を当てて大きく胸を張る。
どうだと言わんばかりの態度がまたかわいいが、それを言ってしまうと「ちがう!」と怒り出すので、拍手でその思いを抑え込む。
「それじゃあ、ちゃんとごちそうさましたら次は歯磨きだね」
「あ」
シャルルは歯磨きも苦手だ。
無意識なのだろうが体が守りの体勢に入り始める。
「カッコいいシャルルは歯磨きもしっかりできるよね」
「で、できる!」
勢いよく立ち上がるとシャルルはたたたっと洗面所へ走って行く。
またすぐに忘れたととぼとぼ戻ってくる姿を思いながら、シャルル用のカバンの中から歯磨きセットを取り出した。