洗濯機がピーっと音を鳴らして止まった。
駆けよって中からシーツやバスタオルを取り出して籠に入れて、ベランダへと向かう。
真っ青な空はよく晴れていてきっとすぐに乾くことだろう。
そう思いながら一枚一枚シワにならないように広げて物干し竿に干していく。
ヒラヒラと風に舞いそうになって洗濯バサミで端を止めた。
竿いっぱいに干された洗濯物を少し眩しく思いながら部屋へと戻る。
ちょうどよく電気ケトルから湯気が吹き出し始めている。ランプは消えていた。
棚からインスタントコーヒーを取り出してマグカップ二つにいれて、ケトルのお湯を注ぐ。さらに牛乳も、少し多めにいれる。
ダイニングテーブルに置いておいたサンドイッチの乗ったトレイにカップも置くと、そのトレイをもってリビングから続くドアをノックした。待ってみたけれど返事はない。
そっとドアを開けて隙間に体を滑り込ませると、カーテンの閉まった薄暗い部屋の中、ベッドの上の布団の隙間から恨めしげな目と目があった。
悪いのは自分だし、苦笑しながらベッドへ近づいてサイドテーブルにトレイを置く。
「おはよう」
窓へ近づいてカーテンを開けると眩しい光がいっぱいに入ってきて部屋が明るくなる。
ベッドの目も眩しげに目を細めている。
光を遮るように立って隙間を覗き込むと、またじとっと睨むような視線に変わりそらされた。
「こんなことじゃ許さないからな」
かすかすにかすれた声を聞くと申し訳なくなるが、あれは立香も悪いのだ。
いやだいやだと言いながらしがみついて離れない、体を離そうとしても巻き付いた手足をほどこうともしなかった。気絶するまで離さなかったのはそちらだ。
ベッドに乗り上げ、いつでも飲めるようにとサイドテーブルに置いておいたペットボトルを取って渡そうとするけれど、立香は見るだけで受け取ろうとしない。
喉は乾いているはずだし、水分は取らないといけない。
布団の中に入れて顔に押し付けるように無理やり渡そうとすると、押し返すように抵抗してくる。
困ってどうしようか悩んでいると、立香の表情が変わった。
「飲ませてくれなきゃやだ」
自分で言って照れているのか頬は赤く、視線はそらされていて……。
さて、聞こう。
言われるがまま布団を剥ぎ取って、ペットボトルの水を口移しで飲ませた俺は悪いのだろうか。