女王蜂、笑う 開け放した体育館の扉の方からは、いつもいろんな音が聞こえる。校庭で練習しているサッカー部の声、野球部のバットにボールが当たる高い音、文化部なのになぜかいつも外周を走っている演劇部の声、バスケ部の練習を見学してる女子の声(たまにオレの名前を呼ぶ声も聞こえるけど、それは聞こえないフリをする)、桜木を冷やかす水戸達の笑い声。このあたりはいつも通りだ。
そして、今日は金曜日だから。
「ちわーす。桜木いるー?」
来た。仙道。
毎週金曜日は陵南は練習が休みだからと言って、夕方になると必ず仙道がやってくる。釣りの帰りだと言って、いつも釣り竿やらクーラーボックスやらを持っている。
オレ達が休憩中なのをいい事に、仙道はサンダルを脱ぐと勝手に体育館の中に入ってくる。誰も注意をしないのは、みんなすっかり慣れきったからだ。
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