メイドサイボーグと旦那様 AM5:00、使用人の朝は早い。
簡素なベッドと本棚、机だけが置かれた一間の部屋で、俺はパンツ一枚で立っている。
そして壁に掛けていたメイド服を手に取り、バサリと頭からかぶった。
「っああ、クソ」
十年前に義手に変わった指はいまだ上手く扱えず、腰の後ろで白いエプロンのリボンを結ぶのが毎朝の耐え難い苦行だ。
どうにかこうにか結んで、机に置いた鏡を見つめる。
引き出しを開け、いまいましい髪飾りを掴み出した。
適当に手櫛で整えた銀髪に、黒を基調としたヘッドドレスを着ける。レース盛り盛りのふざけた飾りはこの屋敷の主の好みだ。
そう、いい年した男がメイドなんてやってるのは――『旦那様』のご趣味が良いゆえだ。
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