六日前。「雪原への誕生日プレゼントぉ?」
めんどくさそうな結城の声が事務所に響いて、メイは小さく肩をすくめた。
十二月二十日。
雪原の誕生日があと六日に迫り、メイは焦っていた。
紆余曲折あって雪原と恋人という関係に落ち着いてから初めて迎える誕生日。
こんなに何も思いつかないものか、と自分を不甲斐なく思ったのは記憶に新しい。というか現在進行形で落ち込んでいる。
「はい。いいものが思いつかなくて……」
一ヶ月前からいろいろ考えてはいたが、どれもピンとこない。
雪原とそこそこ付き合いの長そうな結城なら、と思い切って訊いたのだが。
「そんなんお前、ハトのえさでもあげとけばいいだろ。喜ぶぞー」
「喜ぶのハトでは……?」
かなり雑な返答に眉が下がる。
正直、ハトのえさは一回自分でも考えた。考えた上で却下した。
「んえー……じゃあ、あれだ」
納得いかないメイに結城はひどくかったるそうに言葉を紡いだ。
「お前がかわいく小首傾げて『カズくん好き♡』とでも言えばいいんじゃねー」
一瞬なにを言われたかわからず固まった。
理解するために結城の言うとおり実行した自分を想像して――
「……それ喜びますかね」
やっぱり理解できなかった。
「喜ぶ喜ぶ。スーパーハイパーめちゃくちゃ喜んで踊りまわる。あ、ちなみに最後のハートマークが重要だからな」
「はあ……なるほど……?」
――本当かな。
腑に落ちない点ばかりではあるが、結城がこれだけ太鼓判を押すのだから間違いないのかもしれない。
喜んで踊りまわる雪原はまったく想像つかないが、それくらい喜んでくれるのなら、とメイは手元の紙にメモを残した。
雪原先生のお誕生日お祝いメモ
・ハトのえさ
・カズくん好き♡(ハートマークが重要)