二日前。「雪原先生の誕生日?」
十二月二十四日。
まだ話を訊けていないジョージと山神の二人を捕まえて、メイはもはや定番となった質問を投げかけた。
「はい。なにかいい案があれば教えていただきたいです」
ぎゅっといつものペンとメモを握ったメイに、まず答えたのは山神である。
「エトワールが選んでくれたものならなんでも嬉しいさ」
それは直も似たようなことを言っていた。
ううん、と首を傾げるメイに言葉を足したのはジョージだ。
「そうだね。何かに関わらず、自分のことを考えて選んでくれたならとても嬉しいよ」
「そういうものでしょうか」
「そういうものさ」
再び山神が肯定し、メイはわかったようなわからないような顔で頷いた。
「二十六日は雪原先生と会うの?」
「その予定です」
そんなメイに微笑みながらジョージが訊く。
クリスマスは急患が多いらしいので会うことはできないが、その代わり二十六日は一日空けてくれると言っていた。
「じゃあその日はとびっきりかわいくしないとね。任せて」
「えっ、ええ……?」
思いがけない提案を受けて言葉に詰まる。
「ふむ。ただでさえ眩しい姫君をさらに光り輝かせるジョージくんの魔法だね」
山神も賛成らしく、楽しげに頬を緩ませていた。
「せっかくだから普段よりすこし豪華にして雪原先生を驚かせよう」
悪戯っぽく笑ったジョージに――ああ、なるほど。
「サプライズ……ってことですね」
それなら納得である。
これで、サプライズ・ケーキ・部屋の装飾・ご飯は出揃ったが、肝心のプレゼント案がハトのエサしかない。
さすがにハトのエサだけというのは……と思っていると、不意に山神と目が合った。
「ちなみに、山神さんは誕生日プレゼントといえば何か思いつくことありますか?」
「罪深い僕に誕生の祝福など……と言いたいところだが、そうだね」
雪原と関わりの深いであろう山神の意見は是非とも聞きたい。
メイの期待する眼差しを受けて山神はやや困った顔をしたが、すぐさまいつもの調子を取り戻して歌うように言葉を繋げた。
「プレゼントするものに悩んでいるのなら、彼は煙草を好んでいるようだから……それに関するものなんてどうだろう」
ぽろり、と目から鱗が落ちる。
「……! 素敵ですね!」
「ふふ、さすが斗真さん」
そうと決まれば明日にでも買いに行かなくては。
メイは気合いを入れつつ、二人の案をメモに書きこんだ。
雪原先生のお誕生日お祝いメモ
・ハトのえさ
・カズくん好き♡(ハートマークが重要)
→サプライズ感があって良い
・バルーン
・手作りケーキ(火村さんに要相談 済)
→野菜ケーキ(植物風?)
・肉
→焼き鳥
・おしゃれをする……?(ジョージさんにおまかせ)
→サプライズの一環
・煙草関連のプレゼント