四日前。「雪原先生のお誕生日ですか」
「あー、たしかにもうすぐだね」
十二月二十二日。
メイはもういっそのこと知り合い全員に相談をしようと決め、ナイトと東海林に向かい合っていた。
「そうなんです。そこで皆さんに意見をお伺いしていて」
ペンとメモを握りしめたメイに、ナイトが悩むように指を顎に当てる。
「やっぱり定番はケーキでしょうか」
ケーキ。
たしかに定番中の定番である。思いつかなかったことを不甲斐なく感じつつ、ナイトの隣にいる東海林を窺う。
「まあ……誕生日ケーキは欲しいよね。あと肉」
「やっぱりケーキは必須ですか」
「肉もだって」
頷くメイに東海林が強調して繰り返した。
「……お肉」
正直なところ、雪原が肉を喜んで食べる姿が浮かばない。
いや、自分が知らないだけで意外と食べていたり――あ、でもたしかに焼き鳥は好きだと言っていた。
東海林の想像している肉とは少し違うような気もするが、まあ細かいことはいいだろう。
メイが思考を巡らせていると「そうだ」とナイトが手を叩いた。
「せっかくなので手作りとかどうです? 雪原先生のお誕生日、クリスマスに近いので売ってるのクリスマス用のケーキばかりですし」
なるほど、手作り。
ナイトの言うとおりクリスマスシーズンはケーキもクリスマス用にデコレーションされているものがほとんで、通常のケーキは予約が必要なことが多い。
「いいんじゃない? けど七篠作れるの?」
「うっ、それは……火村さんに要相談……ですかね……」
東海林が同意しつつメイに訊いた。
きまり悪く視線を逸らしながら答えたメイを東海林は茶化さなかった。
「ああ、そうしたほうがいいよ。練習するにしたってもう日にち無いしね」
「味見役はいつでもしますので言ってくださいね」
ナイトも頷いて笑顔をメイに向ける。
「ありがとうございます!」
心強い味方と――ちゃんとした提案を胸に、メイはメモに追記を残した。
雪原先生のお誕生日お祝いメモ
・ハトのえさ
・カズくん好き♡(ハートマークが重要)
→サプライズ感があって良い
・バルーン
・手作りケーキ(火村さんに要相談)
・肉
→焼き鳥