一日前。 いよいよ明日に差し迫った雪原の誕生日を前に、メイは特対の三人を突撃していた。
忙しいなか、時間を割いてくれた三人には感謝してもしきれない。
「雪原先生の誕生日か」
「明日ですよね!」
春野と秋元がそれぞれ頷く。
「雪原先生の誕生日がどうしたの?」
夏井に訊かれてメイは定番となった質問を口にした。
「特対のみなさんが思うお誕生日って何ですか?」
「なにそれ、大喜利?」
夏井が怪訝そうな顔で首を傾げる。
「い、いえ、そういうわけでは……」
半分大喜利のようになっている気もするが、意図してのことではない。
慌てて手を横に振るメイに、春野が何か思い出すようにしながら候補を挙げていった。
「誕生日か。やはりプレゼントとケーキと……」
「歌ですかね? ハッピーバースデートゥーユーって」
「ああ、たしかに歌も定番だね」
春野の言葉を秋元が継ぎ、夏井もそれに納得して頷く。
「歌、ですか」
それは今までの案になかった。
けれど、言われてみるとたしかに誕生日ソングは切っても切れないもののような気がする。
あまり歌唱力に自信はないけど――と思っていると、秋元がニカっと笑ってメイを見た。
「よければ俺サックス吹きますよ!」
「本当ですか?」
「はい! 雪原先生にはお世話になってますし。録音でよければ」
ありがたい申し出にこくこくと何度も頷く。
一人で歌うよりもいくらかハードルが下がるし、なにより寂しくない。
メイが胸を撫で下ろしていると、秋元は何か思いついたように夏井へ視線を向けた。
「夏井さん歌上手ですし歌ってください!」
「は?」
冗談じゃない、と夏井が言うより先に春野が穏やかな顔で口を開いた。
「じゃあ俺はタンバリンでも叩こうか」
「え」
驚いて声をあげたのはメイである。
同時に夏井が勢いよく春野を見た。
「春野さん無理しなくていいんですよ」
春野がやるとなったらやらないわけにはいかない。
若干顔を引き攣らせながら夏井が春野を窺った――が。
「いや、雪原先生にはたしかに世話になっているし、いい機会だと思ってな」
あっさり返されて固まった夏井に、メイがおそるおそる声をかける。
「あの……夏井さんこそ無理せず……」
「べつに無理ってわけじゃ……俺も雪原先生にはお世話になってるし。いやでも歌うのが俺一人なのは……」
「あ、当日いただいた音源に合わせて私も歌いますよ」
「それならいいのか……?」
なにかまだ悩んでいるようだが、嫌だというわけではない……らしい。
それならご厚意に甘えよう、とお礼を言いつつ手元のメモに一文付け足す。
「明日なんですよね。今日中に録音したものメイさんに送りますね!」
「本気?」
夏井が改めて訊いたのに対して、春野と秋元は楽しそうに頷いたのだった。
雪原先生のお誕生日お祝いメモ
・ハトのえさ
・カズくん好き♡(ハートマークが重要)
→サプライズ感があって良い
・バルーン
・手作りケーキ(火村さんに要相談 済)
→野菜ケーキ(植物風?)
・肉
→焼き鳥
・おしゃれをする……?(ジョージさんにおまかせ)
→サプライズの一環
・煙草関連のプレゼント
・バースデーソング(with 特対)