三日前。「火村さん、ケーキの作り方教えてくれませんか」
十二月二十三日。
ついに雪原の誕生日まであと三日に差し迫った今日、メイはやはりメモとペンを片手に意気込んでいた。
「珍しいな。どんなケーキが作りてえんだ?」
「雪原先生の誕生日ケーキを」
「ああなるほど。そういやもうそろそろか」
頷く火村にメイは持っていたメモを小さく掲げる。
「はい。みなさんにアイディアいただいて。手作りケーキが提案にあったので、火村さんに教えていただこうと」
「ハハ、そういうことなら任せとけ。雪原先生に喜んでもらえるようなケーキにしような」
「はい!」
ケーキを作るの自体は前日の夜にするとして、どんなケーキにしようか火村と膝を突き合わせて相談する。
「あの人不摂生極まりねえからな、野菜ケーキにでもしておくか」
「いいですね」
たしかに栄養の取れるケーキというのはいいかもしれない。
うんうん首を縦に振っていると、背後からひょこっと直が顔を出した。
「センパイ! なにしてんの?」
驚いて小さく肩を揺らしつつ、そっと直のほうを向く。
「雪原先生の誕生日ケーキの相談をしてて……。直は誕生日何もらったらうれしい?」
「センパイからもらえるならなんでも!」
間髪入れず満面の笑みで答えた直に少々たじろぐ。
「そっ……それはありがとう……?」
ありがたいけれど参考にはならないな、とメイが思っていると直が「でも」と言葉を足した。
「雪原先生だったら……うーん……植物のなんか……あげておけば喜ぶと思います!」
「植物のなんか……?」
ずいぶんざっくりとした提案だ。
植物のなんかって……なんだろう?
メイが首を傾げていると、火村が楽しそうに笑った。
「ハハ、じゃあケーキを植物っぽくしてみるか」
「そんなことできるんですか?」
「ケーキに絵を描くだけだったら簡単だしな。あとはデコレーションの仕方でどうとでもなる」
頼りになる返答にメイと直は目を輝かせた。
「センパイ! オレも作るの手伝う!」
「うん。ありがとう」
果たしてどんなケーキになるのか。
――楽しみな気持ちを胸に抱きつつ、メイはそっとメモを書き足した。
雪原先生のお誕生日お祝いメモ
・ハトのえさ
・カズくん好き♡(ハートマークが重要)
→サプライズ感があって良い
・バルーン
・手作りケーキ(火村さんに要相談 済)
→野菜ケーキ(植物風?)
・肉
→焼き鳥