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    tis_kri_snw

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    tis_kri_snw

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    ばつ/桑さに

    健全ルート上がります

    ばつばつ

    「主、ちょっといいかな?」
    「え、どしたの桑名」
    部屋で読書をしていると内番着の桑名が顔を覗かせた
    「ちょっと聞きたいことがあってね」
    後ろ手に襖を占めると私の座る椅子の前にしゃがみこんだ。なんだろうと本を閉じて桑名に向き合う
    「松井から、主が野菜だけ毎度残しているって報告があったんだけど。」
    「…え?」
    嘘、なんで、私いつもご飯の時は誰もいない時間を狙って行ってたのに!!
    「そ、そんな事ないよ…?」
    「…僕の目を見て言ってくれるかな?」
    桑名の目は長い前髪に隠れて見えないじゃないとツッコミが口から出そうになったけど、桑名の声色から今回は結構本気で怒っていることが分かるから押し黙ることしか出来なかった
    「…んもぅ、正直に言ってくれれば許してあげようと思ってたのになぁ」
    はぁ、とため息をひとつ吐いて私の手を引き立ち上がらせる桑名
    「ちょ、桑名?何を」
    「何って、好き嫌いする悪い子な主にはお仕置しないとね?」
    首を少し傾けた際に前髪が横に流れて左目が覗く。
    その瞳はイタズラを思いついた無邪気な子供のような目をしていた。

    「ん"…ぁ…!!!!」
    「ほら主、もうちょっとだよ」
    「う"ぁ"………ッッ!!!」

    あの後ジャージに着替えさせられて連れてこられたのは桑名の管理する畑。そして今、私は倉庫から出してきた肥料を抱え動けなくなっていた。

    「くわな、重っ…」
    「えー?そんなに重くないはずだよ。2キロしかないんだから。」
    「2キロ?!え?!2kg?!嘘だ絶対もっとあるって!!」
    ちょっと持ち上がりかけた肥料を驚いた拍子に落としてしまいどすんと言う音と共に砂埃が舞った
    「ほらほら、この調子じゃ全部運んで畑にまいて整えるまでに日が暮れちゃうよ。頑張れ頑張れ」
    桑名は楽しそうにふくろを山盛りにリヤカーに乗せて運んでいる。あ、リヤカーずるい。私も使いたい
    「くわな、その文明の利器貸しては…」
    「だぁめ!さっきも言ったでしょ?これは好き嫌いして野菜を食べない主への罰なんだよ。これを使って楽するのは禁止。」
    「あーーーーん!!!」

    「は…っ…腰が…足が……!!」
    「んもぉ…主足腰弱すぎるよ。書類仕事でずっと座りっぱなしなんでしょ。ちょっとは運動しなきゃ身体ダメになっちゃうよ?」
    畑に中腰で肥料を撒き始めて15分。私の足腰はもう限界を迎えていた。確かに桑名の言う通り審神者も仕事も事務仕事が多くて一日の大半を椅子に座って過ごしている。だけどここまで弱っていたとは思ってなかった。
    「仕方ないなぁ、少しだけ手伝ってあげる」
    そう言いながら桑名は何故か私の腰に手を回した
    「へ?…く、桑名、何してるの」
    「何って、支えてるんだよ。主を」
    「いやもうちょっと他に助ける方法あるよね?!ちょっと桑名が作業してくれるとかさ!!!」
    「主がやらなきゃ意味ないでしょ。ほらほら早く手を動かして」
    「ん"ぁ"ぁ"ぁ"!!!!!」
    何とか畑に肥料を撒き終えた頃には産まれたての子鹿のようになっていた。

    「さ、最後は収穫作業だよ」
    「……これぜんぶ?」
    「うーん、全部は無理だから…ここからここまでかな」
    「………」
    見渡す限り畑。その中で桑名が指し示したエリアは一部だけど、それでも広かった。
    「もう少しだから、頑張ろうねぇ」
    なんであれだけ動いてまだ普通に動けるのだ。そりゃ刀剣男士として鍛えているのだから当然と言えばそうなのだけど、それでも桑名の体力には畏れ入る

    「はい、お疲れ様。麦茶だよぉ」
    「……………………アリガトウ」
    鉛のように重く感じる足を引きずり桑名の肩を借りて何とか縁側に座ると桑名は持っていた水筒からお茶を入れてくれた
    「んっ……く…………ん…………まぁ〜…………」
    なにこれ。信じられないくらい冷たい麦茶が美味しい。こんなに運動したあとの水分って身に染みるんだ。
    「ふふ、主今すっごいいい顔してるよ。」
    ぽんぽんと頭を撫でられてなんだかすごく安心した。
    「…桑名、ごめんなさい。私、こんなに大変な思いして野菜を育ててるって、知らなかった。みんなが頑張って作ってくれた野菜、ちゃんと食べるよ」
    桑名に向き合い自分の行いを反省し今後の誓いを立てれば桑名は満足気に笑う
    「うん、その言葉が聞けてよかった!」
    「えへへ…あ、私お風呂入ってくるね。土まみれだし。」
    よいしょっと縁側から下ろしていた足を引き上げて立ち上がれば桑名も立ち上がる
    「じゃあ僕は残りの片付けと収穫してくるね。また後で」
    「うん、お疲れ様」

    「主、入ってもいい?」
    「どーぞー」
    お風呂から上がって髪を整え終わったと同時に桑名の声が部屋の外から聞こえてきた
    「今日は本当にお疲れ様。これ、さっき収穫したばっかりのプチトマト。ご褒美に食べさせてあげる」
    はい、とヘタを取ってこちらにプチトマトを差し出す桑名。え?これ口を開けろってこと?
    「えーと、桑名さん?自分で食べれるよ?」
    「いいからいいから。…それとも、僕に食べさせてもらうのは嫌?」
    あぁ…桑名の頭の上にしょんぼりと項垂れた耳が見える…そんな顔をされては嫌なんて言えない。それをわかって彼はやっているのだから策士である。
    「…あー…ん、おいひい…」
    「ふふ、でしょ?採れたての野菜は美味しいんだよ」
    満足気に笑う桑名に恥ずかしさとかもどこかへ吹き飛んだ。その笑顔だけでご飯いけちゃうな。

    そのあとも台所から持ってきたというマヨネーズをきゅうりにつけて2人で齧ったり自然の恵みを楽しんだ。
    ふと時計に目をやるとまだ10時なのだが、久しぶりに運動したせいかすっごく眠い。
    「ふふ、主の目、とろんとしてる。疲れたんだねぇ。ほら、お布団に行こうねぇ」
    そう言う桑名に手を引かれて布団に入ればすぐさま睡魔に襲われる
    「お疲れ様、ゆっくり休んでね。おやすみなさい」
    「おやすみ、くわな…」
    桑名が布団をかけぽんぽんと布団を優しく叩くのを聞き届けると私の意識は夢の世界へと引き込まれていった

    翌日、すっごくスッキリとした目覚めでたまには畑仕事もいいかも…なんて思った私であった。
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