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    tis_kri_snw

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    tis_kri_snw

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    ・いちさに
    ・ちょっと一期も審神者も拗らせてるというかそんな感じ
    ・暗くは無い…と思う

    あまく、くるしい「…………もうダメ」

    時刻は間もなく11時。普通なら布団で寛いでいる時間だが、今日は月末の超繁忙期。お風呂だけは何とか隙間時間に済ませたものの、それ以外は休む間もなく働き続けていた。

    「ダメだ………眼精疲労で目が………あと肩こり……腰も痛い…………」

    机に突っ伏してうんうん唸っているとすす、と襖が静かに開く音が耳に入った。

    「主、お疲れ様です。進捗は如何ですかな。」

    声からするに近侍の一期一振だろう。何とか頭を机から持ち上げて「……ダメです」と伝えると、苦笑を浮かべて彼は言う。

    「でしたら今日はここでお休みになるべきかと…。あぁ、その前に少し休憩致しましょう。そのための支度をしてきましたので」

    よく見ると一期の手には何やら色々乗ったお盆がある。

    「そうする……」

    「恐らく夕餉が済んでいないと思いましたので、春雨スープを作りました。お野菜も沢山入っているので体にも優しいと思います」

    どうぞ、と置かれたお椀からはほっとする香りと湯気が立ち上っている。お昼から何も食べていなかった私には天の恵みであった。

    「わわ、美味しそう…!いただきます!!」

    「はい、どうぞ。お代わりもありますので、ゆっくり食べて下さいね」

    一期からお箸を受け取り少しかき混ぜるとスープに浮かんだ卵がふよふよと動く。その様子を見ているだけで先程までなかった食欲がどんどん湧いてくる。

    「……美味しぃ〜…」

    めちゃくちゃ沁みる。仕事で疲れきった心と体に沁み渡る。暖かいスープにここまで感動したのは初めてだ。なんだか涙が出てきた。

    「それは何よりですな。…あぁ、主は柑橘系の香りは苦手ですか?」

    「?柑橘系の香り?…好きだよ?」

    スープを冷ましながらキョトンとした顔で答えるその様が少し面白かったのか、一期はふふ、と美しい所作で笑った

    「よかった。乱からアロマキャンドルを借りて使おうと思ったのですが、主の好みをお聞きしておりませんでしたので…今回は万人受けする、柑橘系の香りをお持ちしました」

    そう言う間にもテキパキと準備を進める一期は本当にしっかりしている。彼無くして私の仕事は回らないくらい、いつも手を貸してもらっている。

    「はわぁ…いい香り」

    「ラベンダーも少し配合されているそうです。眠る前に心を落ち着けるには良いかと」

    彼の方から流れてくる香りは私の疲れや悩みを優しく溶かしていく。

    私の様子を見て満足したのか、私の近くにキャンドルを置いた一期はローテーブルに置きっぱなしになっている書類の整理を始めた。

    「…ごめんね、いつも頼ってばっかりで」

    ゆらゆらと穏やかに揺れる火を見つめながら呟く。

    いつも助けて貰ってばかりだから、今回はできるだけ自分の力で何とかしようと考えた。でも、やっぱり自分一人でできることには限りがあると思い知らされるという結果に終わった訳で。流石にちょっと落ち込んでいる。

    「…主。頼ることに罪悪感を感じる必要はありません。我々は皆、主を助けたいという想いを持っています。頼られることが、嬉しいのです。」

    叱るのではなく、諭してくれる彼。

    やっぱり一期は優しいなぁ。

    「…そっか、ありがとうね。一期」

    こういう時の気持ちは、素直に伝えるのが一番いい。
    一期は書類整理をしている手を止めて「いえいえ」と静かに笑った

    -

    「…これで全て終わりましたな。」

    「本当にありがとう。助かったよ」

    要領の良い一期はテキパキと書類を片付け、さらに返信用の書類の準備まで済ませてくれた。

    「これで本日はお休みになれますね」

    「うん、明日は特に用事もないしゆっくりしようかな」

    「そうされた方が良いかと。休息も大切ですからね」

    「確かにね。一期もしっかり休んでね」

    「ふふ、ありがとうございます」

    食べ終わったスープカップなどをまとめたお盆を持って一期は立ち上がる

    「ッ……待って」

    廊下に向かおうとする一期の内番服を少しだけ掴む。

    「……明日、一緒にいてくれない…?」

    あぁ、声が震えちゃう、どうしてだろう。
    一期の優しさに甘えている自分への不甲斐なさだろうか、それとも自分が人に頼るのが下手だからだろうか…

    いや、多分どれも違う。

    私だけのために時間を欲しいという、どちらかといえばドロドロとした独占欲。

    それを拒まれることに恐怖を抱いているんだ。

    「……分かりました。明日の私は、あなたの為に。」

    ゆっくり振り返りお盆を片手で持った一期は、私の手の甲にそっと口付けを落とした。

    ありがと、とぎこちなくお礼を言う私の顔を見て優しく微笑む一期の目はまるで飴を作る過程の砂糖のようだった。

    あぁ、ドロドロしたものを抱えているのは私だけじゃないのだろうか。
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