にょぎが妻のスマホゲームに課金したい飲み会の後実弥が指輪を外して帰って来たことが一度だけあった。聞くと、外れてしまったから無くさないように財布にしまっていたと言う。瘦せたんだなと、栄養のある美味しいご飯を作ってあげようと彼の体を気遣い健気に思っていた半年前。
「嘘つき」
匡近が言っていた実弥の初恋の人。恐らくその日に出会ったのだろうな。その人を騙して浮気をしていることを私は知っている。その人に触れた手で、口説いた唇で、何食わぬ顔で私の作った料理を食べ、宝物だとでも言うような触れ方で私を抱くのだ。
「私の恋した実弥は百年前に死んだ、お前とは違う」
私にはとても愛していた恋人が居た。優しくて誠実で、私の駄目なところも優しく包み込んでくれるような人だった。そろそろプロポーズしてくれるだろうかと思っていた矢先に出会ったのが前世の記憶を持った実弥だった。昔と今は関係ないと、思っていたのに。
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