そして、君の愛を知る。最終話1-5「まったく、いいかい。こんな馬鹿げた話があってたまるかい? ええ? 人類がいなくなってしまってからこんなことは初めてだよ。わたしがあの後どれだけきみたちを探したのか、どれだけ心配したのかわかっているのかい? いや、わかっていないから、こんな風に機体のあちこちを壊して、紛失して、二人仲良く地面に寝そべって楽しくお話をしていたんだろうさ!」
空はどこまでも青い。雨が過ぎ去ったあとの空気は澄みきっていて、時折柔らかく吹く風が心地良かった。
廃ビルの天辺から落下したハンナとオリヴァーは、仰向けになったまま雨が上がるまで待っていた。ハンナは左足と左腕を、オリヴァーは両足を破損し、とても動ける状況ではなかったからだ。不幸中の幸いというべきか、二機の頭部に損失はなく、ハンナとオリヴァーは落下後も意識がはっきりとしており、そろって自分たちのみっともなさに笑いがこみ上げて笑ってしまった。
どうせ動けないならば、と二機は誰かが助けてくれるまで、その場で談笑をしていたのだ。誰かが助けてくれるまで、とは言ったものの二機の頭の中には共通のアンドロイドが思い浮かんでいた。フジである。二機の想像よりもうんと早くやってきたフジは二機を見つけた途端に大声を上げた。そして今に至るのだ。
ハンナもオリヴァーも言い返せるような立場ではなく、けれどどれだけフジが大声で怒っていても、今はその裏にある優しさを感じることが出来て、不思議と笑みがこみ上げてきた。それがまた、反省していないとフジに受け取られて、彼女たちはしばらくその場で叱られ続けていた。
「ごめんなさい、フジ」
「ああ、悪かった」
二機が揃って謝ると、フジは一度大きなため息を吐いた。
「まったく……まあ、きみ達の関係が良好になっただけ良しとしてあげようか。しかしどうやって帰ろうか。一応工具箱は持ってきたけれど……オリヴァーの片足ぐらいしか直せそうにないね」
寝たままのハンナとオリヴァーの横でフジは工具箱の中をがちゃがちゃとかき回していた。この部品が足りない、とかあれも持ってくれば良かった、とか他にも何かを小さく呟いている。
ハンナとオリヴァーは見つめ合って静かに頷いた。
「それでいい。僕の片足がちゃんとくっつけば、ハンナと肩を貸し合って歩いて行けるから」