あたたかな呪い「おにーさんいい体してんね」
と言いながら左腕に絡まってきた女からは化粧と香水の匂いがした。町の中心から一本入ったホテル街で女と男が接触すれば、みなまで言わずともワンナイトか援交の誘いである。
「生憎お兄さんなんて年じゃなくてね」
「リップサービスだよぉ」
膝上二十㎝は固いジーンズからは白い脚がぬるりと伸びている。靴は自分の三分の二ほどしかない。
「花は花屋でしか買わない主義でね」
「えー残念」
じゃあバイバイ、と女はするりと腕をほどいて闇に消えていった。牛山は押し付けられた感触の残る腕をさすって反応しかけた息子を宥める。しかし頭に浮かんでくるのは先ほどまで触れていた女の生々しい感触ばかりで逆効果だった。
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