【🍑✌️】
「僕がもしも死んじゃったらさ、あの夜空の中、一番光るお星様になるんだ。」
君を掴んで脱け出した草原の上、二人並んで座りながら見上げていた星空を指して言う。
君は何も言わずに夜の肌寒さだけが二人の間を通り過ぎる。
「そうしたら…お星様が大好きな君は、ずっとずっと僕を追いかけてくれるでしょう?」
どの星よりも、きっと君の目に留まるように。
不意に暖かい何かが僕を包んで引き寄せる、見慣れた黄色の手袋越しに力が籠るのを感じた。
「俺様は、手の届く星にしか興味ねぇ。」
最後は早口になりながら、そう言ったぶっきらぼうな声が僕の胸を満たして埋めてゆく。
「じゃあ、流れ星にならなくちゃ。」
からかい半分にそう応えたら、今度はそのままグイッと抱き込まれた。
ねえ、このまま捕まえていてくれる?
そんな気持ちを伝えたくて、でも何だか言えなくて、だから君に少しでも分かって欲しいなと抱きついた。
【🍑←✌️前提の👁️(→)✌️】
「何故泣くことを知りながら、切り捨てることを選ばない。」
泣き腫らした瞳でボンヤリと机にうつ伏せた奴にそう問えば、眉間に皺がグッと寄っていく。
「うるへぇ…。」
「酒臭いな。」
「だーかーらぁ!うるへぇってんだよ!」
ガン!と机を叩きつける音と共に、また奴の目からポロリと透明な粒が零れ落ちる。
「わかってんらよぉ…でも、でもすきっ…すきなんらよぉ…!」
すき、すき、すき。
まるで壊れた蓄音機のように喚いては、雨を降らせて水溜まりを作っていく。
奴の顔は酷い有り様だ、だというのに何故だろうか…零れる雨粒はどうにも綺麗に見えた。
綺麗だ、と思うのと同じくゾワゾワとした得体の知れない何かが奥底に湧き上がるのを感じる。
恐怖とも殺意とも取れぬこの感覚は果たして何だと言うのだろうか。
ただ一つ…確かに思うことがあるとするならば、愚かしくも繰り返し涙するその姿を切り捨てられない、己も愚かなのだろう。
【🦇→✌️】
例えば幸せを感じる時、それは君の笑顔が誰よりも私の近くにある時。
例えば嬉しいと思う時、君が不器用な私の気持ちに触れてくれた時。
例えば悲しいと思う時、君が私だけではないと気付かされる時。
例えば悔しいと思う時、何もかもを君の隠し事に騙された後に知った時。
例えば苦しいと思う時、君が私を対等だと思わせぶる時。
それでも愛おしいと思える時、君が私の名を呼んでくれる瞬間(とき)。
君の存在が、仕草が、声が、他愛ない唇の動きが…その全てが私に価値ある生と死を与える続ける。
君に抱くこの愛情が届かなくても構わないから、どうか君の世界の終わりまで私を留まらせて欲しい。
君の幸福の為ならば、どんな事でも成し遂げられると君の足に口付けよう。
【🍎✌️】
「我が儘を言っても良いですか?」
緊張したような声色で尋ねる姿に、態々そんな了承など求めなくとも良いのに…と呆れつつもそんな真面目で自分に真っ直ぐな姿が好きなんだよなと思いながら、なんだ?と優しく返す。
「あの、僕…大王様…じゃなくてデデデさんにしてみたい事があってですね…。」
「俺様に?」
「っはい!あの!な、なので屈んで頂けません…か?」
食い気味に返事をしたかと思えば、最後は様子を伺うように不安そうな瞳が俺様を見上げる。
そうなんで怯えたような態度を取られるんだ?と内心少し…本当にすこーし!傷付きながらも屈んで見せる。
「そしたら、その…目を閉じて貰えませんか?」
「ん、閉じりゃあ良いのか?」
言われるがまま目を閉じると、暫く何かブツブツと呟くような…時折深く息を吐いたりするような気配を暗闇の中で感じた。
これはいつ目を開けて良いんだ?いっそもう開いちまうか…そう思った時に柔らかな感触が唇に触れた。
思わず目をバッと見開けば、茹で蛸のように真っ赤に染まったバンダナの姿が視界いっぱいに映る。
「わ!わ!わっ!あの、ぼく…すみません!いつもして貰ってばかりだから、僕からもって…だから!」
まるで目を回しているかのように、忙しなく視線をさ迷わせながらアタフタとする姿を見ているだけしか出来ない。
まるで身体が石にでもなったようだ。
「……デデデさんが、好きだから、お返ししたかったんです。恋人なら、対等じゃなきゃ…って。」
そう言われた言葉を最後に俺様の記憶は吹っ飛んでいた。
目を覚ますと泣きながら謝るバンダナの姿があって、色々申し訳ないやら不甲斐ないやらでまた頬に熱が集まるのを嫌でも感じる。
未だに謝り続けるバンダナの頭を優しく撫でた後、そのまま引き寄せてキスを一つ。
困惑するバンダナに内緒話でもするように、お返しだと囁く。
それから、嬉しかった…そう伝え終わる前に今度は青色のバンダナがクラリと遠退いていくのが見えた。
【🍎→✌️】
この気持ちに名前をつけるとするならば、一体何というのでしょうか。
「よし、いくぞお前ら!」
貴方の大きな背中は、変わらない憧れと共に昔から遠いままで…その背に追いつきたくて必死にもがいて手を伸ばしても、まぶしくて目が眩む度にもっと遠くへ行ってしまう。
こんなに近くで貴方を見て、笑う時も、泣く時も、どんな時でも側に居た筈なのに。
貴方の隣に、僕はまだ居れないのですね。
「デデデー!あーそーぼー!」
「ふっざけんなコラァ!城を壊すんじゃねぇよ!」
「えへへ、ごめんごめん!」
我が物顔で、いつも貴方の隣に立っていられる彼の事が…僕はとっても憎らしいんです。
そんな僕の目の前で、まるで嘲笑うようなとびきりの笑顔を浮かべる彼の事が、どうしようもなく憎らしいんです。
「お、メタナイト何読んでんだ?」
「な!勝手にページを捲るのはやめないか!」
何もしていなくても、貴方が隣に来てくれる彼の事が…僕はとっても妬ましいんです。
迷惑そうな素振りを見せながら、本当は嬉しくて、目尻を下げて笑みを浮かべてしまうその顔がどうしようもなく妬ましいんです。
「僕は、一体どうしちゃったのかな…。」
いつからこんなに、汚くなってしまったんだろうか。
ドロドロと溢れでる黒い感情が、いつしか腹の奥へと溜まって重苦しくなる。
吐き出して、何もかも全て消し去れたならば、きっと楽になれるだろうけれど…それでは意味がない事も。
そして貴方を一番困らせてしまう事も、分かっているのです。
「今日も頼りにしてるぜ、バンダナ?」
「はい!勿論です!」
貴方に求められることに悦びを覚え、貴方の隣に憎悪を覚え、ドロドロになった焦がれはまた腹の奥へと溜まっていく…でも、それで僕はいいのです。
届かなくていいのです、きっと僕が壊れてしまうから。
貴方の不幸になってしまうから。
【🦋✌️】
「何というか、お前は大人しいな…随分とまともに見える。」
何考えてるかは分からねぇが、そう内心付け足しながら隣で花を愛でる奴の横顔を眺める。
まるで感情の感じられない瞳が、この世の者ではない…と言ってるように思えた。
「大器晩成。」
「は?」
「急がば回れ…だ。」
「いや、意味分からん。」
急に何だよ、やっぱ気味の悪い野郎だな…怪訝そうな視線を投げ掛けても当の本人は気にした様子もなく、愛でていた花を徐に手折って此方に向けて差し出してきた。
「誰もがいずれは訪れる、その時までは今の君であればいい。」
手渡されたスノードロップは、悲しげに頭を垂れさせ風に揺られた。
【🍄✌️】
「恋をすると心拍数が上がるらしい。」
ほら、私の鼓動の早まりが分かるかい?
そう彼の手を取り私に触れさせれば、まるで苦虫でも噛み潰したような険しい顔で直ぐに手を振り払われてしまう。
「おや、酷い…何もそんなに嫌がらなくても良いだろう?」
「うるせぇ!つーか、俺様は手袋越しだしお前に至っては仮面越しなのに…どーやって鼓動なんぞ感じるんだよ!!!」
馬鹿にしてんのか!?と怒る彼の姿が愉快でついクスクスと笑えば、眉間の皺が益々深くなっていってしまう。
ああ、可愛い顔が勿体無い。
「別に馬鹿にしてはいないよ、ただ君に恋をする度に私の寿命はきっと短くなっていくのだろうと思ってね。」
「知ったこっちゃねぇし、んなもんテメェの勝手だろうが。」
「ああ、そうだとも。でも嬉しくてね…フフ。」
「嬉しいだぁ~?やっぱ狂ってんなお前。」
気持ちわりぃ奴…なんてそっぽを向いてしまった彼の目の前に浮かんで、顔を此方へとグイッと向けさせた。
何かまた文句を言おうとする前に、仮面を取ってその唇を塞ぐ。
目を白黒とさせる彼の頬を両手で包み込み、額を合わせ…触れあった素肌からじんわりと滲む彼の体温は心地好く思えた。
「私が君に恋する度に…君の寿命へ一歩、また一歩と近づくのだろう。そうして君と同じ終わりを迎えられたのなら、どれだけ素敵なんだろうと…ね?」
きっとそれは甘く柔らかな死なのだろう、この胸を満たすほどに…例えば君と交わす口付けのような。
【🥚✌️】
「キミを見ていると、王サマってのも考えものだなって思えてクルヨ。」
皮肉をたっぷりと混ぜた筈の言葉にも、大王様はニカリと人懐っこそうな笑みを浮かべる。
そういう所が気に食わなくて、ボクは彼が大嫌いだ。
「おお、そうだろ!王様なんて録な事ねぇしな、仕事に追われるし!」
「イヤ、それは普通デショ。」
寧ろアンタがやらな過ぎなんだよ、という言葉は飲み干しておく。
言おうが言わなかろうが、この大王様がまともに仕事をする日等きっとこないだろうから。
その癖、馬鹿みたいに裏でコソコソ器用に準備しては誰かの為に動こうとする、そういう所もボクは大嫌いだ。
「王様はもーっと自由なもんだと俺様も思ってたけどなぁ…。」
「自由過ぎだカラネ、言っとくケド。他のトコじゃ考えられナイヨ。」
他の奴らの反対を押しきってまで、裏切り者を放任する事も。
そんな裏切り者と分け隔てなく接する事も、まるで友達のように話し掛ける事も。
「本当に理解できナイ、カービィもキミも…どうしてボクを許すノカ。」
ハッとして、思わず口に手を当てる。
まさか、声に出してしまうだなんて…動揺を悟られぬように顔を背けたボクに彼は言った。
「理解なんてしなくていーんだよ、単純なことだ。友達なら間違ってる時は全力で止めて、そんで最後にゃ仲直り!…誰だって間違う、心を持っているのなら。」
「なにソレ…馬鹿じゃないノ。」
「馬鹿じゃねーよ!つまんねぇだろ、誰もが同じものを好きで嫌いでなんて。色んな奴が居て、色んな考えがあって…確かに争いだって起こるさ。でもそれ以上に、きっと楽しいことがいっぱい起こる!だから良いんだよ、お前の間違いだってこの宇宙の中じゃ豆粒みてぇにちっぽけだ!」
それに、俺様だって人に言えた義理じゃねぇし!…そう笑い飛ばした大王様がボクはやっぱり大嫌いだ。
でも、そんな彼を傷付けてしまった過去が、もっともっと嫌に思えるのは…きっとこの平和ボケした星のせいに違いない。