千と一夜のその先も「いらねぇ。」
それはまるで、子供のように。
飽きたと言わんばかりに彼の興味は既に失せ、目の前で嘆く者の影すら追わない。
可笑しなくらい優雅な足取りは、もう何もかも忘れているのか。
背から聞こえる懇願など、無意味そのものだ。
「なあ、何か面白い事ないのか?」
拗ねてしまった、子供のように。
唇を尖らせてせがむ彼に、では夢物語を…と告げれば無邪気な笑顔を浮かべる。
瞳には満点の星空の輝きが閉じ込めれているようだった。
「やっぱ、お前を拾って正解だったな!」
退屈しねぇのなんの…そう機嫌良く歩を進める彼の背は、酷く恐ろしく…そして愛おしく映る。
いつか、嘆く亡者と同じよう、その背に絶望を与えられるのだろうか。
君はまるで当たり前のように、私のことも処刑する(捨てる)だろうか。
あれ買って?
これ買って?
玩具を欲しがる、子供のように。
飽きたら捨てて、また新しい玩具を。
それを罪とはけして思わず、当たり前のように君は手放すだろう。
だから私は君へ囁く。
永遠の鎖にはならずとも、いつか見た昔話のよう君が私を手放せないよう…今日も君のための物語を紡ぐのだ。
何も知らない君の為だけの夢物語、もしもその終わりがきたならば…月と共に君と沈もう。
仄暗い水底へ、太陽も月も照らせない所まで、星の追えない所まで。