ジェイハン♀ラブホデート(仮) 今日はヤコさんと一緒に休みを取り、初めての王都デート。
初めていつもの装備ではなく、今日はヤコさんもオレも私服。買い物したり食事をする予定だ!
ヤコさんの手を取り、王都行きの小舟に乗りこんだ。
オレはエルガドという孤島の職場でずっと寝泊まりしていたからずっと隊服で、プライベートでは部屋着以外私服を着る機会がなく、隣にいるヤコさんは少し不思議な気分なようだ。
俺も同じく、いつもよりおめかししているヤコさんの私服のソメバナの着物姿に少し緊張してしまって、繋いだ手が手汗ドバドバなんじゃないかと気になっている。
本来ならこういうデートを一番最初にするはずなのに、エルガドに長期隔離されて暮らしてきたオレ達はやはり普通のカップルとは少しズレていると思う。
それにヤコさんは特に生まれてこの方狩猟一筋。生まれ育った場所や文化が違うのもあると思うが、話していても普通の若者らしい事はほとんど知らない。
ヤコさんに楽しいことをもっと知ってもらいたい。
ヤコさんの嬉しそうな笑顔がみたい。
それと、オレの故郷を少しでもいい所だなって思ってもらえたら嬉しいな…
そんな事を考えてこのデートをオレからヤコさんに提案したんだ。
ヤコさんと王都の港に降り立ち、一番の繁華街に案内すると、オレも久しぶりのショッピングでテンションが爆上がり!
ヤコさんも店に並ぶかわいい服や小物を眺めているうちに、幼い少女のようにキラキラと瞳を輝かせ、かわいらしい笑顔の花が咲いた。
普段狩猟時以外はカムラの伝統的なソメバナのキモノを着ているヤコさんは、シャツとスカートで分かれていると、どうコーディネートしたらいいのかわからないらしく、少しカムラノ装を連想するようなシンプルなワンピースを二着選び、お会計していた。
オレも普段は王国騎士軽装だから、いつ着るのかわからないっていうのに、ヤコさんと色んな服を間近に見て、二人で鏡で合わせあいっこをしていたら楽しくなっちゃって、ついシャツとズボンを買ってしまった。
ヤコさんの事だから歩き疲れたって事はないだろうけど、いきなりめまぐるしく色んな物を見て少し疲れてるかもしれないと思い、エルガドにも出店しているフルーツジュースのお店に誘い、ヤコさんには座って席を取っておいてもらって、注文の列に並んだ。
ヤコさんとオレの、初めてのデートらしいデート…
ヤコさんが初めての彼女なオレは、このデートが初めてのマトモなデートなわけだけど、今のところかなり満点に近い出来なんじゃないだろうか。
ヤコさんも日々忙しくてなかなかゆっくりショッピングなんてした事ないだろうし、この後はヤコさんが好きそうなアクセサリーの店に誘ってみようと考えているけど、他にヤコさんが行ってみたい店に入ったり、すでに買い物に疲れているなら公園でのんびりしてもいい。
そしてその後は大人っぽいレストランで食事をして、提督のようなカッコイイ大人の男らしさをヤコさんに見せるんだ…!へっへっへ!
ここはフルーツジュース店の本店だから、本店限定の灼熱イチゴのドリンクがあり、それを二つ購入してヤコさんの所に戻ると、オレが座るはずの席に見た事のある金髪と銀髪の二人組が座っていた。
「セルバジーナさん! ラパーチェさんも!」
なんと、二人はオレが買ってきた物と全く同じ物を先にヤコさんに飲ませ、さらにアイスクリームまで食べさせていた!
ヤコさんは幸せそうな笑顔を両手で包み、「おいしい〜♡」と満面の笑顔を咲かせている。
「ーーっ!? それ、オレがヤコさんにさせたかったヤツーーっ!! 何してくれてんですかぁぁぁ!!」
「だって、ひと休みしてたらヤコさんが一人で寂しそうに座ってたんだも〜ん!」
「はっはっは! ジェイのような子供に猛き炎の相手は務まらぬわ!」
「ひどいですよぉぉぉ〜!」
「あっ…、ジェイくんごめんね! 私、そんなつもりじゃ…! キャッ!」
ヤコさんはオレががっかりしたのを気に病んだのか、慌てて立ち上がってしまい、机の上のドリンクが倒れてしまった。
水の音と同時にヤコさんの服にそれがかかり、一瞬四人全員思考停止してしん…と静まりかえった。
「あ……」
「うわ! ヤコさん大丈夫ですか!?」
「………やってしまったな」
「あっちゃ〜! セルバジーナ、任務行かなきゃだしもう行こうっ! デートの邪魔してごめんね!」
二人が逃げるように立ち去るのを見送りながら、店員さんのアイルーから借りてきたタオルでヤコさんの着物を拭いたが、灼熱イチゴの赤い色がついてしまい拭いても取れなかった。
「ジェイくんごめんね…。もう大丈夫だから!」
「いや、オレは気にしていませんけど、濡れてしまった所が冷えませんか?」
「うん、大丈夫…!」
明らかに無理して笑うヤコさんが可哀想になってしまった。さっきまではあんなに幸せそうに微笑んでいたのに…
この後、シミがついて濡れてしまった服のままで買い物や食事は止めたほうがいいかもしれない。ヤコさんが恥をかいてしまう…
どうしようか考えあぐねていると、ラパーチェさんが早足でスタスタと戻ってきて、小声で囁いた。
「ねぇ、その紙袋の中身、服なんじゃないの? 着替えたら?」
「着替えたらっていっても…」
「この店の裏の路地の方にね、短時間だけ借りてOKの宿があるわ…!」
「…!?」
「ラパーチェさんありがとう! 助かる〜!」
「グッドラック♡」
ラパーチェさんはヤコさんと話していたのに、オレの方をチラリと見てパチリとウィンクし、言いたい事だけ伝えるとすぐに立ち去ってしまった。
ヤコさんも顔には出さないようにしていたが、デートをブチ壊してしまったかもと気に病んでいたのだろう。ラパーチェさんの提案に顔が綻んだ。
でも、その宿はおそらく……
「私、ラパーチェさんの言っていたお宿で、さっき買った服に着替えようかな。こんな汚れた服じゃジェイくんに恥ずかしい思いさせちゃうし…」
「オレの事は気にしなくていいんですけど…」
「ジェイくんもそこでさっき買った服着てみよ! さっきの服を着た姿、見てみたい!」
飲み物を零して少し落ちこんでいたヤコさんが明るく笑ってくれているし、「いいですね!行きましょう!」と言いたいところだが、ラパーチェさんが教えてくれたお宿はおそらくラブホテルだ…!!
ウィンクしたラパーチェさんはオレにナイストスをしたつもりなのだろう。
でも、今日はそんなつもりじゃない…!
ヤコさんにいっぱい買い物を楽しんでもらって、オレの故郷をいい所だなと思ってほしかったんだ!
王都はそんないかがわしい宿がある、怖い所だと思われたくない…
それにこの後、ヤコさんをディナーに誘いたいと思っていたし、致してしまうわけには…
でも、汚れた体をきれいにしてもらって、きれいな服に着替えてから気持ちよくディナーに行ってもらえるなら、それが一番いいのかもしれない。
この後ずっとヤコさんがしょんぼりしていたら、オレも悲しいし…
ラブホに入ったとしてもオレが手を出さず、風呂に入ってもらって、着替えて、少しおしゃべりしてから出てきたら全てが丸く収まるはず…!
ヤコさんとドリンクバーを出て、裏路地に入り、ラパーチェさんご推薦の宿まで行くと、料金と部屋の内装の絵だけ張り出され、受付は誰もいない。異様な雰囲気が漂っている。
オレは黙って我慢してヤコさんとここに入り、すぐ出ようと考えていたが、ヤコさんを騙しているような気がして良心が咎めてしまった。やっぱり騎士としてやってはいけない事だ。
「えと…、誰もいないね。入っていいのかな。」
「あ…、あの、ヤコさん…。やっぱり止めましょう。オレ、ヤコさんが汚れていても気にしませんし…」
「え…?」
「ここはその…、恋人同士で入る宿で…」
「だからラパーチェさんはここを教えてくれたのかな…?」
「いや、その…、まぁそうなんでしょうけど…、その…」
ヤコさんはとても心がきれいな人だ。
だからこそこういう時、遠まわしな言い方では通じない。ハッキリ伝えなくては…!
「どうかしたの?」
「この宿は…、だから、その、恋人同士が愛し合う場所で…」
「愛し合う場所?」
「くっ…、もうハッキリ言っちゃいますね! ここは恋人達がエッチするための宿なんですっ!」
「!?」
ヤコさんは驚いて顔を真っ赤にしてしまった。
「やっぱり、ヤコさんはジュースがかかってしまってベタベタして気持ち悪いだろうし、ちょうどよく先程買い物した服もあるので、サッサと身を清めて着替えちゃいましょう! その後、夕食に行きませんか?」
「夕食…」
「はい! なので夕食に行くために、オレは騎士の名にかけて何もしませんから! サッと入っちゃいましょう!」
「え…、う、うん…」
ヤコさんはドギマギしながらも頷いてくれたが、なんだか騙してホテルに連れこもうとしているようで、やはり良心が痛む…
だが、それはオレが宣言通り何もしなければいいだけの事なのだ。俺は騎士。絶対にやり遂げる…!
ヤコさんはフロントに誰もいないホテルの入口が不気味に感じるようでキョロキョロしながら怯えている。
オレも王国騎士なのに、こんな風紀の乱れまくった場所にいるのを誰かに見られたら大変マズイ気がして、空いている一番普通そうな部屋のルームキーをサッと取り、ヤコさんの手を握って急ぎ足で中に入った。
鍵にある番号の部屋を見つけ、急いで鍵を開け、ヤコさんを中に入れると、彼女は明らかに緊張している様子で頬を染め、黙って俯いている。
これはよくない。そういう雰囲気をオレがブッ壊さなければ…!
「あ…、あはは…! 緊張させちゃいましたね! ヤコさん、お湯ためるのでお風呂入ってきてくださいね! オレはテキトーにゴロゴロしてるので!」
怖がらせないようにヤコさんからパッと離れ、浴室に向かい、バスタブの蛇口を捻り、お湯が出るのを待っていると、この部屋がエッチするための部屋なのだとすぐに思い知らされた。
ここは浴室なのに、向こう側にデッカいキングサイズのベッドが見える。ベッドルームと浴室の仕切りの壁がガラスで丸見えなのだ。
これはマズイ。完全にマズイ!
ヤコさんもすぐそれに気がついたようで、頬を染めたまま俯き、俺と少し離れて立っている。どこにいたらいいのかわからなくなっているのだろう。
「あ…、えっと、ヤコさんがお風呂に入ってる間、オレは目をつぶってますから大丈夫です! 絶対見ませんから!」
「そんなの…、私の粗相で待たせてるだけでも申し訳ないのに、ジェイくんが可哀想だよ…」
「俺のことは気にしないでください! さっき買った服の紙袋はここに置いておきますね!」
本当にヤコさんの入浴は見ません!とアピールするために、サッと浴室を出て、背を向けてベッドに座った。
巨大で高級感があり、さぞかしふっかふかなベッドなのだろうと考えていたが、座ってみると意外と固めなベッドだ。
エルガドの俺の部屋の古くへたれたベッドの方がマットがくたびれていてまだ柔らかいかもしれない。
そうか! もしかしたら、ふかふかベッドだと足場が安定しなくてあれやこれやする時に上手く動けないのかもしれない。細かいところまで考えられているんだな…などと、妙に感心していると、浴室のドアがカチャリと少しだけ開いた音がした。
つい反射で振り返ってしまったが、ヤコさんはまだ先程の服装のままだった。
「あれ…? どうしたんですか?」
「慣れない場所だから怖い…。この部屋、変に静かすぎて…」
「あ…、それはこの部屋が音を遮断されているからで…」
「音を遮断…?」
「え、っと…、それはなんといますか、愛し合っている時の声が外に聞こえないようにですね…」
「っ…!?」
「だ、大丈夫ですよ! 全然怖くないです!ヤコさんの方からオレがここにいるの見えますよね?」
「うん……」
「…………?」
「あの…、あのね…」
ヤコさんは顔を赤らめて恥じらっている。
さすがにセックス専用の部屋で服を脱ぐのは抵抗があるのかもしれない。
「あの、ジェイくん…、お風呂の側にいてって言ったら…、いや…?」
「へっ…?」
「しんとした大きいお風呂で…、一人じゃ、落ち着かなくって…」
ヤコさんの言いたいことはわかる。
いきなり知らない場所のデカい風呂に入るのは落ち着かない。
それにヤコさんは生粋のハンターだからか、人工的な無音状態が気味悪く感じるようだ。
しかし、この返答によってこの後のスケジュールが変わってしまうし、オレの評価も大きく変わってしまう気がした。
ヤコさんの照れながらいじらしく伝えてくれた言葉から、おそらくヤコさん的にはシてもいいからオレに側にいてほしいって事なんだろう。
しかし、シてしまうとこの後ディナーには行けなくなってしまう。
まぁそれくらいは次の楽しみにしたらいいわけだが、ヤコさんがしばらくぐったりしてしまったら朝一番の便でエルガドに朝帰りになりかねないわけで、ヤコさんに恥をかかせてしまうかもしれない。それはマズイ気がする…
オレは女性の事後についてはヤコさんの事しか知らないが、ヤコさんはおそらくかなり感じやすい方というか…。
意識が飛ぶようにガクッと達してしまう事もあるし、終わった後は大抵気絶するように眠ってしまう。おそらくここでもシたら眠るだろう。
それとはまた別の可能性で、今のヤコさんの言葉が「エッチしていいよ♡」って意味じゃなかったらどうする…?
ヤコさんは優しいからオレがシたいって言ったら絶対受け入れてくれると思うけど、「やっぱりディナー行きたかったね…」と後から悲しげに言われてしまった時っ!!
言ってくれたらまだいい!
「ジェイくんってやっぱり本当はデートなんて二の次で、すぐにエッチしようとしてきて最低…」とか心の中でヤリチン認定されてしまった時!!
そうなったらオレは終わり、騎士失格だ…
オレは気高い王国騎士なんだから、すぐ女性に襲いかかる猿になってはいけないんだっ…!!
「あの…、ジェイくんどうしたの?」
「あ、いや! か、考え事をしてました!」
心がハッキリ決まらないまま、ヤコさんの側に行くと、彼女は鼓動がこちらに聞こえてくるんじゃないかと思うほど緊張していて、いじらしげに見上げる瞳に吸い込まれてしまいそう…
今すぐヤコさんのキモノの帯を解き、バナナのように剥いて彼女にかぶりつきたい衝動を必死に抑えながら、勝手にハァハァと息があがるのをどうにか整えようと試みる。
こういう時はアルロー教官の顔を思い出すといい。
しかし、目の前のヤコさんはやはり可愛らしくて、アルロー教官がすぐに霞んでいく。
「うっ…、や、ヤコさん、ダメですよ……。一緒に入ったら、その……」
「夕食に行くんだったよね…」
「それと、最後の便で、エルガドに帰れなくなるかも…」
「そう、だよね…。でも、こんな立派なお風呂に入った事ないし、やっぱりなんだ…」
「ちょっと浸かって温まるだけでいいじゃないですか。あっ、ほらこれ! 泡風呂にできる入浴剤ありますよ!」
ヤコさんは泡風呂を知らないようで首を傾げた。
「泡風呂?」
「あっ、カムラには無いですか? この入浴剤をお湯に入れて、蛇口から出したお湯でかき混ぜると水面にタマミツネが出すようなシャボン玉がいっぱい出てきて…」
「ジェイくん、詳しいね…」
「え!?」
説明しながら泡風呂を作っていたら、ヤコさんの口調が少し暗くて、振り返るとヤコさんの表情が曇り、さらにさっきより不安げな顔をしていた。何か勘違いしている!
ヤコさんを楽しい気持ちにさせたかっただけなのに、これはマズイ…!
「えっ、えぇっ!? もしかしてオレがこういう所に前にも来たことあるのか疑ってます!?」
「…………」
「ないです! ないない! オレも初めて! オレにはヤコさんしかいないですから! 入浴剤は実家の母や姉の影響で多少詳しいってだけで…!」
「……ほんとに?」
ヤコさんは今にも泣いてしまいそうな顔をしていて、慌てて彼女の体を抱きしめると、ヤコさんは少し震えていた。
ヤコさんは猛き炎だけど、本当に狩猟以外はごくごく普通の女の子。
やっぱりこんなセックス専用ホテルに連れこまれたのはどういう意図なのか、オレが何を考えているのか気になって混乱しているのかもしれない。
「でも…、さっきここに入る時も、ジェイくん慣れててよく知ってるみたいだった…」
「そ、そんなことないです! 本当に初めて!」
「……本当?」
「本当です! まぁ…、でもオレも一応男なので、もしこういう場所に入る事になったら女性に恥をかかせるわけにはいかないし、一応知識として知っておかなきゃいけないので、男同士で話したりだとかは…。それに、オレは騎士なので治安を維持しなくてはいけない立場で、王都のこういう場所もどういう仕組みなのかは一応理解しておかなきゃいけないといいますか…!」
「うん…」
ヤコさんはオレの体をきつく抱いて話を聞きながら頷いている。
「汚れた体と服じゃ、ヤコさんが気にしてしまって、この後のデートを心から楽しめないかなと思って…。本当にそれだけなんです。そりゃまぁヤコさんを抱きたい気持ちはいつもあるんですけど、今はヤコさんを困らせたくないので…」
「ジェイくんの事、信じてるし、疑うつもりなんてなかったのに…。変な事言ってごめんなさい…」
「いや、突然こんな場所に連れこまれて、ちょっと怖かったですよね…。オレもすいませんでした。」
「うん…、このお風呂、なんだか怖くて…」
確かにまるで水槽のような全面ガラス張りで、日常にはありえない異様な雰囲気だ。気持ちはわかる。
「私が粗相したからこんな事になってしまったのに、我儘だとわかっているんだけれど、ジェイくんもここにいてほしいの。話ができるくらいの所に…」
「う……、わ、っかりました……」
うぉぉ…、これは生殺しってヤツだ…!
もうオレはこの部屋に入って鍵を閉めた瞬間から、最強のアルロー教官の顔面を思い出しても打ち消され、もはや隠しきれないくらいラブホという空間とヤコさんに興奮していて、いつ襲いかかってもおかしくない状況だというのに、すぐ手が届く所でヤコさんがお風呂でチャプチャプしていたら自分を抑えきれるとは思えない…!
でも、泡風呂にしたのは正解だったかも…!
万が一見えてしまっても、浴槽から出ているのが肩から上だけだったら、なんとか耐えられるかもしれない…
「じゃあ…、オレは、ヤコさんが風呂に入り終わるまで、後ろ向いて目瞑っていてもいいですか? 見ちゃうと、オレもさすがに男なので…」
「うん…。ジェイくんありがとう。」
宣言通り、目を瞑って壁側を向くと、ぱさ…、ぱさ…とヤコさんが服を脱いで畳んでいる音、ひたひたと素足で歩く音、ザバッザバッとお湯をかける音、そして先に身体を洗っているのかカタカタと物音がして、それからまたお湯をかける音…
音と、今までに彼女を抱いてきた記憶から、服脱いだ時にたゆんと揺れる胸や、筋肉がついているのになぜか華奢に見える背中、水に濡れても弾くハリのある彼女の肌…、状況を全部鮮明に想像してしまう…
「ふふっ…、ジェイくん、もういいよ!」
「え?」
しまった! また呼びかけられて振り返ってしまった!
浴槽の中でひょこっと顔を覗かせたヤコさんはすっかり不安から解き放たれ、また元通りニコニコ笑っていてホッとしたのと同時に、少し水に濡れた黒髪やシャボン玉に塗れた肩がとてもセクシーで、すぐにマズイ事をしたと思った。
ヤコさんは無邪気に泡を両手で集め、オレの方にふぅっと吹きかけ、くすくすと笑っている。
「泡風呂って楽しいね!タマミツネになった気分!」