有明の月 窓を開けると、冬の早朝のまぶしい光がさしこんできた。青い空に白い三日月が見える。
いつもは聶懐桑が寝汚く布団にくるまって起きようとしないのを、厳格な宗主と世評に名高いその兄が叩き起こす。それはもう、容赦なく布団をひっぺがす。
今朝はどういうわけか、いつもとは逆に懐桑が先に起き、寝ている聶明玦を見下ろしていた。珍しいこともあるものだと、懐桑はこの機会に明玦をじっくりと観察した。ずり落ちかけていた薄い寝衣の肩を引き上げ、寝台の端に腰かけてのぞきこむ。体重をかけられた寝台がかすかにきしんだ。
明玦は懐桑の血をわけた兄だが、懐桑とは全然、似ているところがない。聶氏の修士を率いて大刀をふるう長身は逞しく、力と自信に満ちあふれていた。
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