キャンディおひとつどうぞ(マコタツ)「これ、よければどうぞ。ウチのオリジナルです」
そう言った店長がビビットな色のパッケージの飴を一つ渡す。小さな包みに器用に文字を詰め、風俗店の名前が書いてあった。担当の店がサービスの一環で飴をプレゼントすることにしたらしい。真虎はありがとうと小さくお礼を言って、それをポケットにしまった。
ヘビースモーカーの真虎に飴を食べる機会はない。タツヒコにでもくれてやろうと、スカウト通りへ足を運んだ。様々な女性に積極的に声を掛ける姿に感心しながら、仕事の邪魔をしないようにそっと近付く。真虎の存在にすぐに気付いたタツヒコが、お疲れ様です! と大きな挨拶をした。
「これ、あげるよ」
真虎はさきほど店長から貰った飴をタツヒコに渡した。怪訝そうに見つめるタツヒコに、真虎は事の経緯を説明した。
タツヒコは早速口に含む。けっこう甘いっスね! と言って嬉しそうに笑った。
「何味ですか? オレ結構好きな味っス」
何も知らない真虎は困った。後で聞いておくよ、と申し訳なさそうにいう。
タツヒコは特に気にする様子もなく、再び仕事に戻った。飴で少し膨らんだ頬が個性的な顔をますます個性的にさせている。
真虎はその場を後にしながら、すぐに店長へ電話をかけた。こんなことで、と少し恥ずかしく思いながら、タツヒコが好きだと言った飴の味を早く知りたかった。