学生の頃(マコタツ)朝から声を掛けた子が軒並み未成年だった。スカウト業にも慣れてきたというのに、ここまでミスをするのも珍しい。タツヒコはうーんと頭を悩ませ、ふと寮の部屋にあったカレンダーを思い出し、学生の冬休み期間になったのだと、そこでようやく気付く。
未成年は厄介だ。興味本位でやりたいと食いつかれると面倒で、働かせることができないと説明しても粘ってくる。少しくらい年齢を偽ってもバレやしないと高を括る子が多くて、昨今の業界事情を考えるととてもじゃないが首を縦には振れない。
「こんなんじゃ仕事になんなっすよ」
泣き言をいうタツヒコに真虎は笑った。そうだねえ、といいながらいつものように煙草をふかす。
タツヒコは諦めたように頭の後ろで手を組んだ。あーあ、と投げやりに溜息を吐く。
タツヒコは楽しそうにする学生たちを眺めながら、隣にいる真虎を覗く。
「真虎さんって学生の頃何してました?」
ふっと疑問が浮かんで、タツヒコは特に深い意味もなく尋ねた。
「うーん、もう何年も前の話だから……忘れちゃった」
真虎はふふっと意味深に笑う。それ以上突っ込んで欲しくないとでもいうようだった。
そうですか。タツヒコはすんなりと引き下がった。嫌がることはしたくない。
真虎が秘密主義なことは分かっていた。それでも、好きな人のことはどんなことでも知りたかった。