配達先のマンションに向かうと大きな鳥が見えた。白鳥程の大きさの翼だが、その色は漆黒でマンションの2階のベランダに降り立ったのがぼんやりと見える。ダチョウの群れはしょっちゅう見るがあの大きさの鳥が飛んでいるのは珍しい。もう一度見れないものかしばらくの間目を凝らしていたが、すでにどこかに行ってしまったようで諦めて仕事に戻った。11階建てのマンションは部屋に行き着くのも一苦労だ。最上階から順番に下の階へと移動してようやく最後の部屋までたどり着いた。配達物は衣類と書かれている。
チャイムを鳴らす。ピンポーンと間の抜けた音がしてすぐに中からドッシャーンガラガラと大きな音が響いた。おい、とかやめろ、とか男の人の声がドア越しに聞こえて、緊急事態が発生しているのかと焦ってドアをノックした。
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