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    きって

    @kitto13

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    いかがわしかったり、暗かったりする
    タビヴェン🧦🐣

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    きって

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    タビヴェン モブ目線

    #タビヴェン
    taviven.

    配達先のマンションに向かうと大きな鳥が見えた。白鳥程の大きさの翼だが、その色は漆黒でマンションの2階のベランダに降り立ったのがぼんやりと見える。ダチョウの群れはしょっちゅう見るがあの大きさの鳥が飛んでいるのは珍しい。もう一度見れないものかしばらくの間目を凝らしていたが、すでにどこかに行ってしまったようで諦めて仕事に戻った。11階建てのマンションは部屋に行き着くのも一苦労だ。最上階から順番に下の階へと移動してようやく最後の部屋までたどり着いた。配達物は衣類と書かれている。
    チャイムを鳴らす。ピンポーンと間の抜けた音がしてすぐに中からドッシャーンガラガラと大きな音が響いた。おい、とかやめろ、とか男の人の声がドア越しに聞こえて、緊急事態が発生しているのかと焦ってドアをノックした。
    「宅配便です!大丈夫ですか?」
    だいじょうぶでーすと今度は女の人の声が聞こえる。それでも何かが床にばらばらと落ちている音は止まず、不安は募る一方だ。こっちの心情を見透かしたようにだいじょうぶなんでちょっとまっててくださーいと女の人が言う。二三分程玄関で待っただろうか。やっと玄関ドアが開いて女の人が顔を出した。
    「こんにちは宅配便です…具合が悪そうですが大丈夫ですか??」
    出てきた女性は顔を上気させ、息も荒げて苦しそうだった。真冬なのに汗ばんだ首すじが赤らんで胸元から垣間見える鎖骨はその彫りを強調するかのように汗で光っていた。女の人は「ああ、大丈夫だ。気にしないでくれ」と言う。
    「野鳥が、部屋に入り込んできて、捕らえるのに難儀してたんだ」
    「それは大変でしたね!僕の部屋にも鴉が迷い込んできて出るに出れなくなって大騒ぎした事がありましたよ」
    女の人はにんまりと笑った。
    「お互い苦労させられるなあ!鴉には」
    「ええ!もう捕まえられたんですか?よかったら今日はもう上がりなので手伝いましょうか?」
    鴉ともなると警戒心が強くて大変だろう。純粋な親切心からそういうと「大丈夫だ」と女の人は言う。
    「同居人がいるから2人でなんとかする」
    「それなら安心ですね!」
    ちらりと部屋の中をみると薄暗い室内に男の人が座り込んでいるのが見えた。壁に背をもたれて疲弊した様子がみてとれる。よっぽど元気な鳥だったようだ。
    「それじゃあハンコをお願いします」
    「ああどうもありがとう」
    「失礼します!」
    タビコと書かれた伝票を受け取ると、僕は踵を返した。ドアの閉まり際に「早く…」と男の人の声が聞こえ、それから「良い子で待てて偉いぞ」と言う女の人の声も聞こえて不思議だった。マンションを出た後、そういえばあの部屋は2階だったことに気がついた。
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    きって

    MOURNING初夜失敗

    前半はTwitterに載せてた内容と同じなので読み飛ばしてください。
    えろくもないしほぼ会話文。
    リビングへと続くドアは細く開いたままになっている。開けっ放しはやめろと何度諌めても「どうせまた開けるんだからいいだろ?」と素っ頓狂な顔でタビコが言うものだからヴェントルーはその悪癖を直すことをとっくの昔に諦めていた。それでも開いたままのドアが目に入る度にその隙間を無くしてはいたものの、今日は全くその気になれない。
    タビコは今シャワーを浴びているはずだ。湯浴みが終わればあのドアからこの寝室に入ってくる。その事が恐ろしいのと待ち遠しいのとでヴェントルーの緊張は最骨頂に達していた。なんの前触れもなく寝室に入ってこられるよりかはドアの隙間からタビコの気配が伺えた方がいい。そう思って敢えて視界の端でリビングの様子を見てはいるが、結局はざわつく胸が抑えられず最終的には壁の一点を見詰めるのに留まった。ヴェントルーは落ち着きを取り戻そうとベッド脇に置いたルームライトに目を向けた。家電量販店で急遽手に入れた小ぶりなライトはリラックス効果だとかムード演出だとかそんな謳い文句が箱に書かれていて、ヴェントルーはむずむずとした心地でそれを手にしてレジへと向かった。アロマフューザーにも手を伸ばしかけたが、それはやり過ぎだろうとやめにした。今はそれを仇かのように睨み、ヴェントルーはベッドに正座する。
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    きって

    CAN’T MAKE死ネタ 卵を孵す話
    抱卵タビコに小さな卵を渡された。私が産んだんだと言うタビコに奇っ怪な冗談を言うものだと鼻で笑って見せると、至極真剣な顔で本当だと言うものだから面食らう。卵は一般的な鶏卵ぐらいの大きさで心做しか青みがかった殻を持つひどく冷たいものであった。
    「温めるのはお前に任す。孵るまで割れないようにするんだぞ」
    それじゃあといつも通りにタビコは仕事に向かって私と卵2人だけが家に残った。温めろと言われても吸血鬼の体温では具合が悪い。かと言っても湯で煮立たせる訳にもいかず、途方に暮れた私は野外の椋鳥に助けを求めると丁度産卵期だとかでついでに温めてくれるという。見返りとしてベランダの一角に巣作りと当面の餌やりを保証してやる。巣に置こうとするとそこには同じ様相の卵が4つ並んでいて自分の手元の卵と見比べるとこのまま置いてはどれがどれだかわからなくなるだろうと思いあたる。部屋にあったサインペンを片手に少し考え靴下のイラストを描いて、椋鳥の番には台所にあったイリコを分け与える。そうやって始まった抱卵は椋鳥の雛が孵化した後も終わることはなく、椋鳥の番と雛達はとっくに巣立って行ってしまった。仕方が無いので羽を入れた巾着袋にそっと卵を入れ、素肌に触れないよう首から下げる。最早手遅れなんじゃないかとタビコに聞いてみても彼女は慌てるんじゃないという。
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