「じゃあ、またな」
端末を耳から離して、スクリーンの終話ボタンを押す。
運動会と銘打たれたイベントごと。
休憩時間に、水色が印象的なジャージを羽織った姿で、今日は別の仕事のためにこの場に来られなかったユニットメンバーのたわいのない電話を再度受けていたのだが。
「今の相手、ころんだよねぇ?」
端末を運動場の仮設の机に戻して、うーん、と伸びをしていると、隣から同い年ということもあり親近感を抱いている、元教師の同僚の声がする。
「ああ。何か伝えておくことでもあったかい?」
「いや、別に。……お父さんみたいに優しい声だったから、ちょっと意外でね」
思わぬことを言われて、うん? と返事に詰まりながら伸びを解くと、先ほどの競技で疲れた面持ちをした相手の背後、こちらは観覧席から応援をそそぐエンジェルたちへのファンサービスに淀みなく勤しむ年下の先輩が、ふと興味を惹かれたかのように、キラキラとしたウインクを投げて寄越した。
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