好みのタイプの話「はい、オッケーです!お疲れ様でした!」
カメラマンの軽快な声がスタジオに響く。
ふう、と一息ついた雨彦が撮影場所を離れると、撮影用の衣装に身を包んだ想楽が入れ替わるようにその場に立った。
プロデューサーに一声掛け、その足で控え室に戻る。控え室に足を踏み入れると、先に撮影を終えていたクリスが、雨彦に気づきぱっと顔を上げた。
「雨彦、お疲れ様です」
「ああ、お疲れさん。後は北村の撮影が終われば、今日のスケジュールは終いだな」
どかりと椅子に腰掛けた雨彦は、早速窮屈だったネクタイを緩める。
女性向けのファッション誌に特集として掲載される今回の撮影は、読者の女性を恋人に見立てたものになるようだった。
「……あの、雨彦」
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