PM7:00 ネロがキッチンでフライパンを振るっている。今日の夕飯を作っている。昼にパンを外で食った帰りに食材を揃え、「今日はなんだ」と聞いた答えは「豚肉のトマト煮込み」だった。
トマトと聞いて一瞬顔を顰めた俺だったが、うまいの作るから、と言われれば頷くしかない。ネロが作る料理はいつだってうまい。
「あとどんぐらいだ?」
「あー、洗濯物畳んできてくれよ」
そう言われて立ち上がる。一を聞いて十が返ってくるのは、相変わらず楽だ。室内には取り込んでいたがそのままになっていた服を畳んでいく。
俺の下着、ネロのTシャツ、俺のシャツ、ネロのデニム。こうして服を畳んでいると、一緒に暮らしているのだと感じる。
飯は昔からしょっちゅう一緒に食っていた。そのまま一緒に寝ることもよくあった。けれどそのときだって住む家は別で、ついでにどちらかの服も一緒に洗うことももちろんあったが、こう何もかも一緒に同じように、というわけではなかった。片方の家にいるのではなく、同じ家にいるのだ、と思う。
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