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    急に降ってきたハサウェイSS アイディア自体は前にもつぶやいてます 怪我の描写があります そして軍規に関する知識が全く無い人間が書いたのでだいぶ間違っています

    #ハサウェイ・ノア
    hathawayNoah
    #閃光のハサウェイ
    Hathaway''s Flash

    マランビジー 感光してはならない。この瞳に共感し、感光してはならない。あの瞳は深い淵に開いた虚だ。そこから何がこんこんと湧き出してくるのか、わからないから。

     調書を取る行為はほんの数分で終わった。本人の自白も何もなく、多数の戦闘記録とケネス・スレッグその人のその時々の証言が彼──マフティー・ナビーユ・エリンの犯罪行為とその時間的経過を裏付けていたからだ。あとはほんの少しの確認が取れればよかった。だからあんな大怪我をした彼を取調室に軟禁してその体をさらに痛めつけるなんてことはせずに済んだ。僕はほんの少しの間警備の人員と共に彼の病室へ向かっただけだ。そして聞いた。これこれこうした日時にこの場所で脅迫目的のテロ行為を行ったことを認めますか? この行為を主導したのは間違いなくあなたですか? 馬鹿みたいな質問に、しかし彼、ノア、ハサウェイ・ノアは苦しい息の中なかからどれも真摯に答えた。ああそうだ。間違い無い。どれも合っている。動機に関しては、全て、(そうすべて、)攻撃前に行った電波ジャックの中で述べた通りだ。そうだ。僕が、……僕がマフティー・ナビーユ・エリンだ。

     僕は他人よりほんの少しだけ軍にいる期間が長くて、その分他人が全快することは不可能な傷を負ったところを見た経験も人より多くて、だからはっきりと目の前の彼がすでに完治不可能な怪我を負っている──軍人向けのインプラントを使用したところで完璧に後遺症から逃れられるなどと言うことはあり得ないだろう──ことを理解したのだけれど、不思議なことには、その、全身の傷とともにはっきりとダメージを受けただろう眼球と視神経が、(多少の濁りは見られたけれども、)ひどく深い洞察を含んだもののように見えたのだ。

     僕はその光を目にした瞬間に、いけない、と思った。見るな。いけない。目を逸らさなくてはいけない。この光に感応してはならない。だって、僕は、そう僕は、つまらない人間として生きていくほかは無いのだから。

     その眼差しは僕をひどく落ち着かない気分にさせた。僕はサインをすることさえも難しそうな彼に対して持っていたペンを差し出し、書けますか、と聞いた。早く終わってほしかった。早くこの、看護婦がどんなに拭っても覆っても消えない火傷から滲み出た体液の匂いと消毒液の匂いで満ちた部屋から抜け出したかった。もし、サインすることが難しければ、略式にはなりますが代理人を立てて、彼にサインを任せることが出来ます……そんな間の抜けた言葉を紡ごうとした僕の行手を遮って、ハサウェイ・ノアはいいや、書くよ、と言った。軍法と言うのも考えものだな。急場の人殺しはすり抜けたように見逃すくせに、こうしたところだけは大真面目だ。もつれる舌でそんなことまで言った。それを聞いて僕はああ、彼は知っている、と思った。恐れているかどうかはわからないが、彼は自分がもう言い訳の余地なく死ぬことを、殺されることを知っている。その傷の治療などこれ以上はもう行われないことを知っている。僕がこの病室に入る前、「大怪我をしている人なんです、死んでしまうかもしれませんから」と、勇気を振り絞って制止してきた看護婦のその祈りに答えられないことを、すでに知っている。何とかその死を前にして自分を強く律しようとしている。だからこんなに無理に平静なのだとそう思った。
    サインが終わり、僕が「これで終わりです、……」と言うまで、彼は静かな様子で僕が調書を留めたボードを受け取るのを見ていた。そうして言った。君も難儀だな。……こんな苦労をさせないように変わればいいんだが。

     そうして僕の方をちょっと見た時の、彼の、あの眼の光。深い洞からこんこんと、何か、澄んだ、ひどく危険なものが湧いて、それは僕の胸の中に滑り込んだ。僕は軽く頭を下げて、その眼差しからやっと逃れた。部屋を出る。警備の兵士に声を掛けて、調書を提出しに向かうその最中に、僕はその胸の中に流れ込んできた清流の、その寒々しいほど澄んだ匂いから目を逸らした。それは見つめ続けていると、僕をあらぬ場所へ向かわせそうな水の流れだったからだ。それは僕を死の方へ誘っている。緩慢な秩序の中ですべてに怯えて自重で沈みながら生きていくより、それでも正しさを求めて戦い、結局無駄死にする方向へと誘おうとしている。だから僕は目を逸らした。だってまだ生きなくてはいけなかったからだ。誰よりも僕自身のために……。

     そうして彼は死んだ。僕は処刑直後に出た不快な暴露記事と、その内容を噂し合う人々の群から逃げ隠れた。そうして僕は彼自身の名前を忘れようと努める。それだけが僕にできたたった一つの反抗だった。彼は英雄ブライト・ノアの息子ハサウェイ・ノアではなく、何よりも誰よりもまずマフティー・ナビーユ・エリン、おかしな多言語の合成によって宣言された、正当な預言者の王なのだと思うことにした。あの時殺されたのはマフティーだ。何よりも誰よりも先に姿を現し、変化の先駆けとして痛みを強いて死んでいく預言者の王、その最初の一人なのだと。僕は彼自身のことを何も知らない。先日来取り乱している様子が窺えるケネス・スレッグとは違い、彼自身との交友など何も無い。だからこそそう信じた。あなたはマフティーだ。世界で最初の、これからも、そうしていつまでも消えることのない爪痕、その象徴なのだとそう信じた。それでも僕の耳奥から、清い水の流れる音はまだ聞こえ続けてきていたのだけれども。
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    ai_2_siki

    DOODLE急に降ってきたハサウェイSS アイディア自体は前にもつぶやいてます 怪我の描写があります そして軍規に関する知識が全く無い人間が書いたのでだいぶ間違っています
    マランビジー 感光してはならない。この瞳に共感し、感光してはならない。あの瞳は深い淵に開いた虚だ。そこから何がこんこんと湧き出してくるのか、わからないから。

     調書を取る行為はほんの数分で終わった。本人の自白も何もなく、多数の戦闘記録とケネス・スレッグその人のその時々の証言が彼──マフティー・ナビーユ・エリンの犯罪行為とその時間的経過を裏付けていたからだ。あとはほんの少しの確認が取れればよかった。だからあんな大怪我をした彼を取調室に軟禁してその体をさらに痛めつけるなんてことはせずに済んだ。僕はほんの少しの間警備の人員と共に彼の病室へ向かっただけだ。そして聞いた。これこれこうした日時にこの場所で脅迫目的のテロ行為を行ったことを認めますか? この行為を主導したのは間違いなくあなたですか? 馬鹿みたいな質問に、しかし彼、ノア、ハサウェイ・ノアは苦しい息の中なかからどれも真摯に答えた。ああそうだ。間違い無い。どれも合っている。動機に関しては、全て、(そうすべて、)攻撃前に行った電波ジャックの中で述べた通りだ。そうだ。僕が、……僕がマフティー・ナビーユ・エリンだ。
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