先端恐怖症の🌸ちゃん「や!」
「頼むよなまえ一緒にワクチン打ちに行こ?」
「やだぁ……。」
このご時世避けては通れないのが新型コロナウイルスのワクチン。なまえはまだ一度も打ってない事が判明した、注射と言っただけで大きなおめめをうるうるさせている。
なまえは俗に言う先端恐怖症だ、勿論俺の仕事道具の縫い針はダメだし安全ピンや画鋲なんかも持てない。
「一緒に行ってやるからな?」
「一緒に診察室まで入ってくれる?」
一緒に診察室まで入ってと言うなまえは幼女なのか???クソ可愛い。成人を超えたいい大人が診察室まで一緒に入るのはなまえと俺くらいだろう。
「注射打った帰りに元気なうちにカフェでケーキも食べよう、な?」
「ケーキ……。」
しぶしぶ分かったと言うなまえ。言質は取ったので近くのクリニックで予約する。なまえが恥ずかしい思いをしないよう電話で予約する時に診察室に俺も同伴する事を予め伝えておく。
「今日の16時に予約したから。」
「今日!?」
するとさらに大きなおめめに涙を溜めて泣きそうになるなまえ、今日だなんて聞いてない!心の準備に24時間かかるの!あと2時間じゃん!!と遂には泣き始めた。
「ごめんごめん、ずっーと注射の事考えるよりも早く済んだ方がいいだろ?」
「……うん。」
「ちゃんと手握ってやるから。」
「絶対だよ?」
「うん絶対な?」
16時が近づくにつれて元気が無くなっていくなまえ。インパルスで病院に2人で向かうと不安からか後ろからぎゅ〜と抱きしめられる。
病院に入り予約していた三ツ谷ですと言えば二人ですんなり診察室に入れた。
医者はというと何度もワクチンを打ってきたのだろう慣れた手つきで用意していく。
「はい腕出してね〜。」
「たかちゃん……。」
医者から間の延びた言葉が発せられる。なまえはというと、遂にその時が来たと言う感じでガクガク震えながら服の袖を捲る。
「たかちゃん!手!手!」
「はいはい握っててやるからな。」
俺はそう言うと反対の手をぎゅっと握りしめる。
注射から目を逸らしたなまえと目が合う。
「やっぱりやだ!!」
そう言うと腕をブンと振り回すなまえ。急な動きに注射を持つ医者も驚く。
「動いちゃだめだろなまえ。」
「だってぇ……。」
仕方ない奥の手だ。
「なまえおいで。」
そう言って両手を広げると「怖かったぁ!」と胸に飛び込んでくるなまえ。捕まえた。そのまま抱きしめて抱っこする、そして医者の前に座りなまえに腕を出させる。
「たかちゃんのばかぁ!!!」
「はいはい大丈夫だからな〜。」
背中を擦りながら医者に動き止めてるんで今のうちに注射打っちゃってくださいと頼む。
なまえは物言いたげに俺の肩に頭を擦り付ける。
「はい!終わり〜頑張ったね〜。」
「すみません、ありがとうございます。」
俺はそう言うと抱きついて離れないなまえを抱っこしたまま診察室から出る。
診察室から出ると流石に恥ずかしくなったのか抱っこから手を繋ぐだけになる。
「ケーキ……。」
むくれた顔をしたなまえがぽつりと言う。
「頑張ったな、いい子いい子。食べて帰ろうな。」
この後めちゃくちゃ高いケーキ買わされる三ツ谷がいる。