コインランドリー2(仮)男は傘をポンと音を立てて差し、振り向いた。
「すぐそこだけど濡れるから入れよ」
「いーよ。別に」
「頭が濡れたらタオルとか貸すの俺だろ」
「だからいいって」
男と相合い傘なんかしたくねぇ。早く行けよ。後で追いかけるからよぉ。
そう思って待ってるのに、奴は俺の肩を抱いて歩き始めた。
「あ? おいっ!」
「ほら、ちゃんとくっついてないと濡れるぞ」
くっそ、無駄にでけぇマンションだから入り口が思ったより遠い。
結局10メートルくらい相合い傘で歩く羽目になっちまった。
白い大理石のエントランスは雨に濡れてツルツル滑りそうだ。転ばないように気を付けながら歩く。
こんな立派なマンション、俺みてぇな貧乏人には一生縁がないと思っていたけれど。
2159