宝箱の持ち主きれいな宝箱にいっとう大事なものを入れてしまっておこう。もう二度となくならないように。
「宝箱の持ち主」
幼少期にポチタと出会い、ずっと助け合ってきた。
最初は、俺が血をあげる代わりにポチタは俺をたすける契約で、都合が良いから一緒に行動していた。
ふたりで暮らしていく中で、助け合い、仲良くなって、俺にとってポチタはかけがえのない存在になっていった。金も飯も女もないけど、ポチタがいればいつだって楽しかった。ポチタといられることが幸せだった。
でもいなくなってしまった。
俺の心臓となって生き続けているのは分かってるけど、もう話すことも触ったり抱きしめたりすることもできないのは寂しい。
その後、公安に入ってアキとパワーと出会い、生活することになった。
最初は口うるさいアキと嘘ばかりのパワーに辟易していた。
さんにんで暮らしていく中で、アキとパワーと仲良くなれた気がして、家族になれた気がして、アキとパワーが大切な存在になっていった。くすぐったい気持ちだけど2人と暮らす毎日は幸せだった。
でもいなくなってしまった。
もう話すことも一緒にご飯を食べたり一緒に寝ることができないのは虚しい。
マキマさんを食べて少し経った頃、ナユタと出会い、育てることになった。
最初は支配の悪魔を育てることに不安があった。
ふたりで暮らしていく中で、たくさんいろんなとこに行って遊んで、楽しかった。遊び疲れてナユタと抱きしめあって眠る毎日は幸せだった。
でもいなくなってしまった。
抱きしめ合うことができないのは悲しい。
起きてから寝るまでずっと頭がゴチャゴチャしてる。もういなくなっちまった後なのに、どうすれば良かったのか、どうしたらみんながいなくならないで済んだのか、考えちまう。俺が馬鹿だからみんないなくなるしかなかったのかもしれない。もっと考えればポチタもアキもパワーもナユタもいなくならないで済んだかもしれない。こんな事考えて意味ねえのにずっと考えてる。
何日も何ヶ月も何年も頭がゴチャゴチャして、どうすればよかったのか意味のない自問自答を繰り返してたら、突然ひらめいた。
「大事なものや失くしたくないものは、宝箱にしまっておこう」
あぁ、俺はポチタとアキとパワーとナユタが大事だったんだ。失くしたくないものだったんだ。今更、彼らの存在が自分にとってどんなものだったか理解したと同時に、自分の大事なものが目の前からなくなってしまったのは宝箱にしまっておかなかったからなんだと気がついた。
「まずは宝箱からだな」
次の日、貯金をかき集めてマンションの一部屋を借りた。
そのマンションは頑丈で地震ではびくともしなくて、住人以外入ってこれないようになっている、大事なものをしまっておくにはうってつけの部屋らしい。