過信するなよ「今日は何人だった」
「4人かな」
「5。今日は俺が上な」
「横暴だな」
「今日は何人だった」
「8人」
「8人。最後の一人は」
「同時だな。じゃんけんで決めようぜ」
「今日は何人だった」
「たしか6」
「俺は5。仕方ないな、譲ってやるよ」
すました顔で言うものだから、つい思ったままの言葉が出る。
「おまえ、下がいいならそう言えよ」
かつん。
開けようとして空ぶった、プルトップを爪で弾いた音が響く。そのまま静止してしまうので、缶コーヒーが待ってるぜと声を掛けようとした。
蜜柑は時を止めたようだった。フリーズした表情に、はたと思い当たって口角を上げる。
「なんだよ、気づかれないとでも思ってたのかよ」
蜜柑は何かを言おうとして、そのまま口を閉ざす。俺の方をちらりと見てから、二度瞬きをしてふいと視線を逸らした。融通が効かない奴は大変だ。仕方ないから助け舟を出してやる。檸檬様は優しいので。