おかえり弱い使えないと散々罵倒され、置き去りにされて1人持参していた救急セットを取り出し、通路の隅に隠れ包帯を巻いていた時、旬の傍にいつの間にか男が佇んでいた
「えっ…誰…?」
旬は困惑し首を傾げる、今日の攻略隊にこんな男は居ただろうか…問い掛けに男はうっすらと口角を上げて、見下ろすだけで返事はない
「あ、の……っ、」
聞こえてないのかと再度声をかけると男は急にしゃがみ旬の顎を掴み上向かせ顔を覗いてくる
「っ!おいっ、いっ…ひっ!?」
好き勝手に右に左にと旬の顔を無理やり動かし観察する、何が面白いのか男はニタニタと意地の悪い笑みを浮かべていたが、目だけは驚くほど冷たく旬は恐怖に蝕まれる
「っ…はなせっ…」
「…なぜ?」
「え?…あがっ…が!?」
それでも恐怖に抵抗し足掻く…が、男の逆鱗に触れたのか顎を掴んでいた手が下に移動し首を絞められる
片手で簡単に気道を抑えつけられ、呼吸が出来ず身悶え引き剥がそうと腕を掴むがびくともしない
「あがっ…、はっ、…」
「よわいな…ほんとうに、弱い」
「んぐっ…ひゅ……ひ…」
酸素を求め口を開くが全く呼吸ができず、男を掴んでいた手はいつの間にか地面に落ち、不自然に体は痙攣を起こす
「…息吸いたいか?」
「…ぅ…ぁ、」
まだ死にたくない、旬は小さく頷く
「はっはははっ」
はくはくと酸素を求めあえぐ旬の姿が面白いのか、男は声を出して笑う、遊ばせていたもう片方の手を旬の首に添わせ、両手で更に締め付けた
「だめに決まってるだろ」
無邪気に笑う男の顔を最後に、ぐるりと目が回り旬は意識を手放した
締めていた両手を離せば重力に従い旬の体は崩れ落ちる
生理的な涙と飲み込みきれなかった唾液で顔は濡れ、激しく呼吸をし、痙攣する姿にゾワリと背中に電流が走る
「さぁ、かえろう」
完全に意識を失い、脱力した旬を抱えあげ出口に向かう
首は欝血し手形がくっきりと残っており、満たされ男はまた声を出して笑った
低級ゲートがダンジョンブレイクし攻略隊の全滅が報道された