We wish you love and ……「京?あけましておめでとう。」
『あけましておめでとうございます、友一先輩!もう、家戻ったんですか?』
事前に言っておいたとはいえ、ワンコールも待たずにあった応答に半ば引きぎみで新年の挨拶をしたら、やけに弾んだ声が返ってきた。
「……いや、事務室から。さすがに疲れたから、家戻ったらすぐ寝そうでさ……」
『お疲れさまです。実は僕も、割りと徹夜気味なんです。』
「なんで?」
『バスケチームのみんなと年越し初詣行って来ました!めっちゃ混んでて、その後近くの千聖先輩の家で遊んでさっき戻って来たんです。』
「相変わらず仲良いんだな。」
『おかげさまで。……ねぇ、先輩。もっと何かしゃべってください。』
「え?何かってなんだ?」
『じゃあ、今日あった仕事の話。』
なんだかよく分からない要望に、細かい作業や十二時前後の同僚との会話とかを適当に話していたら、京は相槌だけ打って静かに聞いていた。いつもの煩い雰囲気と違い過ぎるので、もしかして眠いのかと思い「京?」と呼び掛けたら、
『……うーん、やっぱり電話、いいですね。先輩の声がこんな近くに聞こえる。このままずーっとしゃべっててくれませんか?一緒に寝てるみたいでサイコーかも!あ、そうだ。先輩、僕の家来て一緒に寝ませんかー?』
と来た。
「バーカ。」
ダメだ、こいつ。
徹夜でテンションがおかしい。
『天才に向かって失礼ですね。ところで先輩、次の休みいつですか?初めての“恋人”デート、楽しみにしてるんですが……』
「休み?……えっと、いつだっけ……」
目の前のシフト表を見ながらいくつか読み上げ始めると、
『それ、全部平日ですよね。』
「そうだな……」
『僕、高校生って分かってますよね?』
「おぅ……」
『来週の土曜日、空けて下さい。」
「え?」
『元々入ってない時間だって事、ちゃんと覚えてます。僕の記憶力なめないで下さい。』
「でも……」
『努力してくれるんですよね?』
「……分かった……」
珍しく威圧的な口調で言われ戸惑っていたら、電話の向こうからクスクス笑う声が聞こえた。
『夕方は空いてるので、無理しなくていいですよ。』
「確定したら知らせるから。」
『はーい。じゃあ、先輩も疲れてるだろうからもう切ります。友一先輩、おやすみなさい。』
「……おやすみ、京。」
電話を切る。
この一年つきあって、生意気なところを差し引けばわりとカッコいいヤツだよな、と思っていたが意外とそうでもないのかも。
スマホをしまって、あくびでもしようかと伸びをしたら胸ポケットが揺れたので、しまったばかりのスマホを取り出した。
新着メッセージを見て、一瞬で眠気が吹っ飛ぶ。
“最後のおやすみ、録音しちゃいました”
“変態!”
俺は軽く笑いながら、朝日の当たり始めた外に一歩踏み出した。
冷たく凛とした静寂の中へ。
《A happy new year 》