冬至の祭り軍旗祭当日、営内には来賓や市民が集まり、大掛かりな飾り付けも相まって、普段の殺伐とした男所帯とは全く違った賑やかな雰囲気だ。栄誉礼や分列行進、模擬戦などをつつがなく終えると、お楽しみの宴会や余興の時間となる。
百之助と急いで兵舎に戻ると、滅多に着ない一装品をさっさと脱ぎ捨て、前日に預かった女物の洋装を広げる。
「おい、汚れるから先に化粧をするよう言われただろう」
「そうだったね。えーっと何からするんだっけ」
借りた化粧道具一式と一緒に渡された丁寧な手順の書付けを二人して覗き込む。
「じゃあ僕が先にお前の化粧やってみるから、顔貸せ」
差し出した僕の掌に大人しく顎を乗せて目を閉じているのが何かの動物みたいで可笑しい。めちゃくちゃな化粧をしてやろうかと思ったけど、こいつの素直さに免じてちゃんと手順通り化粧を施してやる。
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