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    あお(蒼原)

    @aohr_damanya_sf

    『SPY×FAMILY』のダミアン×アーニャ(ダミアニャ)の二次創作の小説を上げています。
    基本的には、

    ・自ツイアカで連載中の作品
    ・「供養」(完結の目処が立たなくなった)の作品
    ・一般受けしなさそうな自己満でしかない作品

    を上げます。
    ノーマルで完結しているものはpixivに上げます。

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    あお(蒼原)

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    バーリント市内でのフェスティバルを通じたダミアニャ。

    ・成長if(10年生)
    ・ダミアニャ交際していない
    ・諸々捏造

    #スパイファミリー
    spyFamily
    #ダミアニャ成長if
    damianiaGrowthIf

    Festival!「アーニャがフェスティバルのボランティアに?」

     登校前の朝食時、ダイニングテーブルを挟んで向かいに座るヨルからの発言に、アーニャはスプーンを止めて聞き返した。ロイドも興味を持ったようで、コーヒーに口をつけつつ隣のヨルを見る。

    「はい! 来週の土日に市が主催するオータムフェスティバルがあるのはご存知ですよね?」
    「うん」

     知っている。市内のあちこちに告知ポスターが貼られているし、ここ2週間以上ヨルは準備に追われて帰宅が遅いのだから。

    「勿論、市役所の職員総出でスタッフとして動員されるんですけど、当日どうしても人手が足りなさそうなので、職員の家族でお手伝い出来る人を募集する事になったんです。
     ボランティアなので、お給料は出ないんですけど、無料で屋台の物を食べたり飲んだりは出来る事になっています」
    「ふぅん……。お手伝いって何をやるの?」
    「そうですね……具体的には断言出来ませんが、アーニャさんは17歳でまだ未成年ですから、お酒やタバコが関係する所はないはずです。あと、女の子なので、力仕事とか警備も除外されますね。
     多分、出店での売り子か裏方になると思いますよ」

     ふむ……とアーニャは考える。
     ベッキーとの約束はしていないし、今は定期考査の時期じゃないから勉強に追われていない。宿題は出るだろうが、ルーティン的に来週末に苦手な数学は出ないはず。
     あと――実はここ2年くらい前からテレパシーの能力を制御して『声』をある程度遮断出来るようになったから、人混みも昔に比べて平気になったし――

    「参加していいんじゃないか、アーニャ」

     そう言ってきたのはロイドである。

    「市のボランティアに参加するのは、立派な社会貢献の1つだ。この件だけでステラ獲得とはならないだろうが、何かの時に今回参加した事が実績として加味される要素にはなるかもしれない」
    「なるほど……」

     ちちの言うことは尤もだ。<梟>は終わっているけど、どうせならなってみたい<すっからかん>まであとステラ1つ。ならば、

    「はは、アーニャ、ボランティアやります!」
    「ほんとですか ありがとうございますアーニャさん!」


    ◆◇◆


     その日の学校での昼休み。
     ベッキーから一旦離れて、お手洗いに向かおうと廊下に出た瞬間、

    「おいフォージャー」

     呼ばれてそちらを向くと、ダミアンが立っていた。何故かやや緊張した面持ちに見える気がするが……

    「なぁにじなん?」
    「来週の土曜か日曜空いているか?」

     問いに、アーニャは記憶を巡らせて、答えた。

    「ごめん、来週の土日は空いていない。先約入ってる」

     今朝、ヨルにボランティア参加を約束した。先約優先だ。
     すると、

    「え、あ、そうなのか……」

     ダミアンはあからさまに残念そうな表情になった。今まで何度か2人で出掛けた事あるのだから、今回くらい断ってもそんな顔しないでほしい。

    「なぁ、ちなみに先約って――」
    「ごめんじなん、アーニャ、今すぐ行きたい所があるから後で」
    「あ、あぁ分かった……」

     もうすぐ授業が始まるから、その前にお手洗いを済ませたい。アーニャは遮った事を内心で謝りながら廊下を小走りで抜けて行った。


    ◆◇◆


     小走りで去ったアーニャの後ろ姿を見送って、ダミアンはもやもやしていた。

    (……俺の話を遮ってまで、今すぐ行きたい所って何だよ?)

     アーニャが会話を遮ったのは、休み時間の残りが少ないからだし、行き先を濁したのは、女子が男子に対して『お手洗いに行く』と直接的に言いづらい心理が彼女にもあっただけなのだが――普段のダミアンだったらその辺りを何となく察せられたであろうに、誘いを断られた事がショックだったため、冷静な判断力が失われかけていた。そのせいで更に変な勘繰りまで始まりだす。

    (まさか……土日の先約って男か 男とデートか あいつ、今そいつの所に行ったのか)

     大いなる勘違いなのだが、残念ながらそれを訂正出来る者はいない。

    (そう言えば、来週の土日は市内でフェスティバルがあるって掲示板にポスターがあったけど、それか それに男と行くのか くっそどこの誰だよ)

     フェスティバルが関係しているのは正解なので、勘がいいのか悪いのか。

     ――もしこの後、ダミアンがアーニャに土日の件を改めて尋ねれば、彼女は素直に話していただろう。それによってダミアンは自分の誤解に気付いたはずだった。
     しかし、ダミアンは尋ねられなかった。もし本当に他の男とのデートだったら立ち直れない、と自己分析をしていたから。
     そういうわけで、ダミアンは悶々となり、アーニャもアーニャで、『じなんからすごい圧を感じるっ……』と彼の異変を察知するも、テレパシーで読むのがなんか怖かったので遮断し、目線が合う頻度も減り、それがまたダミアンの悶々に拍車をかける事になり――その結果、ダミアンは10日間も苦しみ続ける事態に陥ったのであった。


    ◆◇◆


     フェスティバル当日。

    「――では皆さん、このフェスティバルを無事成功させるため、各自頑張って下さい!」
    『おー!』

     フェスティバル開始の10分前、会場となっている広大な中央公園の大広場に集めた職員やボランティアスタッフ達の前で、市長が拡声器で簡単な挨拶をし、今終わったところだ。解散してそれぞれが持ち場へ向かって行く。

    「楽しみ! わくわく!」
    「一緒に頑張りましょうね、アーニャさん」
    「うぃ!」

     アーニャは、ヨルと同じ場所を受け持つ事になった。マルシェエリアの1つ、世界各地の民族衣装や伝統工芸品を扱う店での売り子である。食品や食材を扱っている店ほど忙しくないだろうが、昨今民族的なアイテムや文化のブームが来ているので、例年よりは客が多いと見込んでいるそう。なので、商品数も去年までより少し多めに揃えたらしい。
     大型タープをいくつか繋げた下では、世界中の工芸品や民族衣裳が並べられている。こと、民族衣装に関してはディアンドルが人気で、特に子供向けサイズを多めに取り揃えたとヨルから聞いていたわけだが。

    「ははが言ったとおり。ディアンドルよく売れるね!」

     フェスティバルが始まって1時間が経った頃、子供サイズのディアンドルをお買い上げの親子を見送って、アーニャは隣に立つヨルに向けて言う。

    「そうですね。最近はイベントにディアンドルを着て行くのがブームだそうですよ」
    「だから今日も着ているちびっ子が多いんだね」

     この売り場はメインストリートに面しているので、とにかく人の行き交いが多いのだが、幼い女の子がディアンドルを着ている親子連れがそこそこ目につく。

    「ねぇ、アーニャちゃん」

     呼び掛けられ振り向くと、同じ売場担当の女性がいた。栗色の髪を肩の辺りで揃えている彼女の名前は確かローザ。ヨルとは部署が隣で年も近いので顔見知りだと紹介されたのを思い出しながら、アーニャは応じた。

    「はい、何ですか?」
    「ねぇ、もし良かったら、ディアンドル着て立ってみない?」
    「へ アー、じゃない、私が」
    「えぇ。ほら、子供サイズは売れているけど、大人サイズはなかなか売れていないでしょ? 実際に着ている人がいるとまた売れ行きが違うと思うのよねー」

     彼女が言う通り、子供サイズは順調に売れているが、大人サイズはそうでもない。

    「アーニャちゃん、ディアンドル着た事ある?」
    「うーん……多分ないです」
    「じゃあちょうどいいわ! 着てみましょうよ!」
    「えーと……はは?」
    「ふふっ、アーニャさんの判断にお任せします」

     ヨルから再びローザを見て、既視感を覚えた。
     あ、思い出した。この人の今の目、アーニャを着せ替え人形したがっている時のベッキーと同じだ。生身の人間に着せ替えしたがる人種がベッキー以外にもいたとは……。
     ベッキーがこういう目つきになっている時、アーニャには抗う術がない。だからきっとこの人もそうだ。断れないやつ。無理に断ってははの立場を悪くさせるわけにもいかないし……

    「……えーと、じゃあ、着てみます……」
    「そうこなくっちゃ! じゃあ衣装は私に選ばせて♪ うーん、どれがいいかしら~」

     やっぱりベッキーと同じだ。アーニャは抗わずに、着せ替え人形になりきる事を決め込んだのだった。


    ◆◇◆


     一方。イーデン・カレッジの敷地内では。

    「――……」

     午前11時。本来だったらアーニャとデートをしていたであろう時間だが、断られて時間を持て余したダミアンは、休日でも開放されている図書館の自習スペースで過ごしていた。
     気を紛らわせるつもりで勉強しようと寮から出て来たというのに、ここに座ってから1時間以上、握ったペンは殆んど動いていない。

    「――……」

     ……天気いいな今日は……デート日和だな……アイツ、楽しんでいるんだろうか……明日も天気いいらしいし……明日もデート日和だな……どこの男と一緒なんだろう……アイツに近寄ろうとする男はとことん排除してきたつもりなんだがな……でも現状のままだと、イーデン生以外は無理なんだよな……もっと守備範囲拡げるか……でもそれはさすがに――

     こんな思考をぐるぐるしている有り様だ。アーニャがどこかの男とデートしている前提で考えている辺り、本人は自覚していないがかなりの重症である。
     と、ダミアンの腹からぐぅ、と虫の音が微かに鳴って我に返った。
     そう言えば、今朝はロクに食事が通らず殆んど食べられなかったのだった。昼食にはまだ早い時間帯だが、食堂に行って何か軽く食べよう。
     机に広げただけだった教科書類を片付け始めたところで、あ、と思い出した。
    そう言えば今日、食堂は、フェスティバルに『イーデン・カレッジ 出張ダイニング』と称して、一般の方々にイーデン校の食事を体験してもらうと言った目的で出店しているため、昼食は提供出来ないと言った旨の通達があった。
     では寮はというと、セシル寮調理場はメンテナンスとクリーニングのため、9時から17時まで利用出来ないと言う。
     そして、敷地内のカフェテリアは元々土日祝日は休業日。

    (え、俺、今日は昼飯にありつけないのか……?)

     再び空腹を訴える音。まずい。デズモンド家の次男とあろう者が、空腹で腹を鳴らすとは。
     しかし、一度覚えてしまった空腹感はなかなか払拭出来ない。ましてや、16歳でまだまだ食べ盛りのお年頃。朝食もきちんと食べていないのに、昼食は完全抜きで夜まで待つのさすがにつらい。

    (……仕方ない、外に出て食う事にするか……)

     己の情けなさに嘆息しながら、ダミアンは席を立った。



    〈続く〉
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