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    あお(蒼原)

    @aohr_damanya_sf

    『SPY×FAMILY』のダミアン×アーニャ(ダミアニャ)の二次創作の小説を上げています。
    基本的には、

    ・自ツイアカで連載中の作品
    ・「供養」(完結の目処が立たなくなった)の作品
    ・一般受けしなさそうな自己満でしかない作品

    を上げます。
    ノーマルで完結しているものはpixivに上げます。

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    あお(蒼原)

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    SPY×FAMILY
    シリアスめな成長ifダミアニャ。
    数日前からアーニャの異変に気付いたダミアン。それから間もなく異変の理由を知って――と言った内容。

    ・11年生設定(にした筈)。
    ・両片想い状態。
    ・ダミアンはスカラー、アーニャはスカラーまであと一歩。

    #スパイファミリー
    spyFamily
    #ダミアニャ成長if
    damianiaGrowthIf

     放課後の、誰もいない筈の物置きになっている空き教室で――

     ガンッ!

     蹴り飛ばされた金属製の古びたバケツが派手な音を立てて壁に当たった後、床の上をごろごろ転がって、止まった。そのバケツは大きくへしゃげていた。

    「ひぃっ」

     それを眼前で見ていた男子生徒は、変な悲鳴を上げて壁に背をつけてズルズルとへたりこんだ。
     一方、もう1人の男子生徒は、自分が蹴り飛ばしたバケツには一瞥もくれず、底冷えするような目つきでへたりこんだ男子生徒へ悠然と近付く。

    「――こちとらサッカーやっていたんでな。蹴りには自信があるんだよ」

     両手をズボンのポケットに入れたまま低い声音でそう言うと、へたりこんだ男子生徒は蒼白になって震え出す。

    「あ、あ……」
    「けど、今の俺はかつて無いほどブチ切れているから、ひょっとすると加減を間違えるかもしれねぇな」
    「……ひ、あぁ……」
    「はっ、何ビビってんだ? まだ何もしてねーだろ?」

     口調は穏やかだからこそ、冷え切った表情が酷く怖い。それに、『まだ』と言う事は――

    「出来ればこのままトニトゼロのまま卒業したいから、この件も極力穏便に行きたいんだよ。こう見えても俺は平和主義者だ。素直に全部吐けば痛い真似はしねぇけど……」

     そこまで言って、見下ろす男子生徒――ダミアンはへたりこんだ男子生徒の手前で立ち止まると、さっきバケツを蹴り飛ばした右足を持ち上げて、男子生徒の顎下に靴の爪先を当てて軽く上げた。すると、男子生徒の顎が持ち上げられる。強制的に上を向かされ、恐怖でいよいよ涙を流し出した。

    「嘘ついたり下手な事言ってみろ。そのツラ、二度と外歩けねー状態にすっからな」

     この男子生徒にとって、ダミアン・デズモンドを怒らせた代償は、余りにも大きいものになった。


    ◆◇◆


     ここ最近、アーニャ・フォージャーの様子がおかしいとダミアンが気付いたのは、一昨日の水曜日の事だった。
     教室内にいる時は普通なのに、教室から出るとどこか不安そうな表情になって、周囲をやたら見回したり、足早に移動したり。時折急に動きを止めて何かに集中しているような仕草も見せる。
     おかしいという疑念が確証に変わったのは、気付いた翌々日の今日、彼女の親友・ベッキーが学校を欠席した日の始業前の事だった。

    「……ねぇじなん、1つお願いがある」
    「お、おう、何だ改まって」
    「今日ベッキーお休みだから、今日はずっとじなんのそばにいたい」
    「え」
    「アーニャ、1人になりたくない。でもベッキー以外に頼めるのはじなんしかいない」
    「……俺じゃなくとも、ブラックベル以外の女友達がいるだろ?」
    「じなんがいいの! ダメ?」
    「いや、まぁ、構わねーけど……」
    「やった! ありがとじなん!」

     すぐに始業のベルが鳴ってしまい詳しい事情が訊けなかったが、この頼まれ事と彼女への違和感が直結するであろう事は、これまでの経験則から予想出来た。しかし、その後も彼女の方から事情を話してもらえず、ダミアンも彼女が頼ってきてくれたのが嬉しくて――事情を聞き出そうとすると「やっぱいいや」などと言って離れてしまうような予感が何となくあったので、敢えて触れずにいた。

     だが――事態は思ったより深刻だった。

     その日の最後の授業が移動教室のため、休憩時間に廊下を並んで歩いていた時の事だった。
     大勢の生徒達が行き交う中を縫いながら歩いていると、彼女が不意に立ち止まったと思うや、ばっと背後を振り向いた。息を呑んで硬直している身体と表情に反して、視線は激しく動いている。まるで何かを探しているかのように。

    「……フォージャー? どうした急に?」
    「……ううん、何でもない。ごめん。行こ」

     前に向き直って再び歩き出したが、俯き加減な表情は固いまま。しかも、そっとダミアンが羽織っている皇帝の学徒インペリアル・スカラーのマントの腰辺りを握って来た。
     いつもだったら「そんな所握るな。シワになる」とか言って茶化していただろうが、今は無言でそのまま歩き続ける。
     ややあって、人が少なくなった場所まで来たのを見計らってダミアンは切り出した。

    「……何でもないように見えねぇんだがな」
    「……」
    「今日俺の傍にいたいって言ってきたのと、今のお前がそうなっているのは共通の事情があってなんだろ? 俺を巻き込んでおいて、何も説明しないってのはどうかと思うぞ。俺はそこまで都合のいいヤツじゃない」
    「……うん。ごめんなさい」
    「放課後、俺と一緒にスカラーの談話室に行くぞ。話を聞かせろ」
    「え、アーニャ、すっからんじゃないから入れない」
    「談話室に限っては、スカラーと一緒なら一般生徒も入れる。一般生徒の相談にスカラーが応じる事も想定している部屋だ。だから問題ない」
    「……」
    「防音がしっかりしているから、会話が外に漏れる心配もない」
    「……」
    「一応言っておくが、何日か前からお前の様子がおかしいって俺は気付いていたからな」
    「……気付いてたんだ」
    「当たり前だ。俺をナメんなよ」
    「……うん。じゃあ、話を聞いてほしい」
    「おう」


    ◆◇◆


     一日のすべての授業の終わりと放課後の始まりを報せる鐘が鳴り響く。
     部活動に、自宅に、図書室に、と各々の生徒達が教室から散っていく。
     鐘が鳴った直後の廊下は生徒達でごった返す。人混みが苦手らしいアーニャに合わせて、すぐに教室の外に出ようとせず、ある程度捌けるまで待つ。

    「フォージャー、そろそろ行くぞ」
    「……うぃ」

     ダミアンとアーニャは連れ立って教室を出た。廊下の個人ロッカーに入っている荷物を取るために一旦離れて、ダミアンは自分のロッカーから今日の宿題で使う参考書を鞄に詰めた。
     重たくなった鞄を提げて、ロッカーの扉を閉める。

    「よし、行くぞ……」

     数メートル離れた所にロッカーがある彼女の方を向く。自分のロッカーを開けたままで、彼女は自分の足元を凝視したまま固まっていた。その顔色は、悪い。

    「どうした」

     嫌な予感しかしない。すぐに駆け付けて彼女の傍に立つ。

    「……じなん」

     見上げてくる彼女は今にも泣きそうだ。

    「何があった」
    「きもちわるい……」

     彼女の足元を見る。写真と、折り畳まれた白いハンカチが落ちていた。

    「――……」

     しゃがんで、取り敢えず先に写真を手に取る。
     写っていたのはアーニャだった。校内の廊下を歩いている時の何気ないシーンではあるが、離れた場所から勝手に盗撮したものにしか見えないものだった。
     続いて、白いハンカチを取ろうと手を伸ばし――

    「それ、触らない方がいいっ……」

     制止するアーニャのそれに、ダミアンは反射的に止めて彼女の方を見た。

    「……そのハンカチ、何日か前に失くした思ってたアーニャの物なんだけど……それ、中開いたら……汚されてて・・・・・……」
    「……?」
    「きもちわるい……。多分、だけど、男の人の……あの……」
    「っ!」

     そこでようやく彼女が何を見たのか悟った。

    「分かった。言わなくていい」
    「……うぅっ……」

     ついにアーニャの両目から涙が零れた。ダミアンは反射的に自分のハンカチを取り出そうとしたが――今のこれで憚られてしまい、迷う。

    (あぁクソ! なんなんだ! 誰がこんなっ――)

     ダミアンは我知れず拳を作り、奥歯を噛み締めた。胸中に激しい怒りが沸き上がり、激しく渦巻く。

    (フォージャーにこんな……許せねぇ!)

     目の前が暗くなるほどの激情だったが、大きく深呼吸して一旦沈めた。今自分も怒りの感情を露にしてしまったら、彼女の感情も更に昂ってしまうだけだ。冷静になれ、俺!
     自分に言い聞かせて、ダミアンはアーニャの方を見上げて極力静かな声音で告げた。

    「……フォージャー、とりあえず、この2つは俺が預かる。いいな?」

     俯いたままだがこくりと頷いたので、ダミアンは丁度持ち合わせていた空き袋に入れた。ハンカチは入れる前に確認のためちらりと開き――やはり予想した通りのもので汚されて・・・・いた。下衆野郎が!
     瞬間的に沸騰しかけたが、ここでもどうにか抑え込んで、立ち上がった。

    「ロッカーから取り出したい物あるか?」
    「……数学の、参考書」
    「他には?」
    「……無い」
    「じゃあ、場所を移そう。歩けるか?」

     アーニャは頷いた。左手に自分のと彼女の鞄を、右手は彼女の手を取って、ダミアンはアーニャの歩調に合わせて歩き出した。


    ◆◇◆


     ここイーデン校には、皇帝の学徒インペリアル・スカラーの専用の建物がある。
     本来、一般生徒であるアーニャは入れないが、1階にある談話室はスカラー同伴であれば入れる事になっている。7年生でスカラーになったダミアンも実は少し前までその規定を知らなかった。
     まさか知ってからこんな早く使う機会が来るとはな……と思いつつ、ダミアンはいくつかある談話室の中でも一番奥の部屋を選んだ。
     扉に使用中の札を提げて、中に入った。
     ダミアンも初めて入ったここは、四角いテーブル1つに、それを囲むように2人掛けソファーが1つ、1人掛けソファーが2つずつ設置されていた。他にも、簡易的な給湯スペースがあって、お茶くらいなら用意出来そうだ。

    「俺もここを使うのは初めてなんだ。だから俺もよく分からないから適当に座っててくれ」
    「……うん」
    「時間制限はないから、少し休んでから話をしよう」
    「……うん」

     アーニャが2人掛けソファーに座ったのを確認してから、ダミアンは早速給湯スペースに入ってお茶の準備を始めたのだった。


    ◆◇◆


    「――おいしい。本当にティーバッグの紅茶?」
    「そうだよ。淹れ方さえ間違えなければ美味く淹れられる」
    「じなん、お坊ちゃんなのにすごい」
    「嗜みの一つだから大した事ねーよ」

     紅茶淹れたくらいで感心されて、ダミアンはこそばゆい気分になるが、それはおくびにも出さず、ティーカップを傾けるアーニャを眺めた。
     目の周りはまだ赤いが、気持ちはある程度落ち着いたように見える。ほんのり微笑みながら少しずつ飲む姿に、ダミアンは安堵感を覚えた。
     このままティータイムで終わらせたいところだが、そうもいかない。いつ切り出すか迷っていると。

    「――先月から、何となく変な視線は感じてた」

     昏い表情でカップに視線を落として、アーニャが突然切り出した。ダミアンも慌てて頭の中を切り替えた。

    「教室にいる時はないけど、廊下とか、外とか、バス停とかにいると、何か遠くから見られている気がした」

     普通だったら、『そんなの気のせいだろ』と言ってしまうところだが、どういうわけか彼女の『気がする』は高確率で的中する。だから彼女のそれは軽視出来ない。事実、今回もそれが当たっていたわけだ。

    「写真が毎日1枚入れられるようになったのは、今週の月曜から」
    「ってことは、今日で5日目か」
    「うん。朝学校に来てロッカー開けると入ってる」
    「その今までの写真、持ってるか?」
    「気持ち悪いから捨てたかったけど、一応……」

     言って、鞄を置いている荷物置きの方を見て立ち上がろうとしたので、それを手で制して代わりに彼女の鞄を持って来て渡す。「あざざます」と受け取って、膝の上で鞄のサイドポケットから紙袋を取り出した。最近流行りのファンシーショップのそれを今度はダミアンが受け取って、袋を傾けると中身が滑り落ちてきた。確認する。

    「……どれも盗撮だな」

     カラーの写真が合計5枚。食堂で食べているところや、バス停でのバス待ち、図書館で勉強中など、シチュエーションはバラバラだが、どの彼女も10メートルは離れた位置から写した物で、いずれも視線が撮影者の方と合っていなかった。

    「今朝も写真入ってたけど、放課後にも入れられていたのは今日が初めて。それと……あの、写真じゃない物も……」
    「その……ハンカチはいつ失くなった? 1回だけか?」
    「1回だけ。昨日の朝に無いって気付いたから、失くしたのは一昨日。でもタイミングは分からない。予備だから使っていないし、それを入れてる左のポケットにはハンカチ以外は入れてないから、落としたんじゃないと思う」
    「……一昨日は体育があったよな。着替えた時に落とした可能性は?」
    「あ、そっか……」
    「授業中に着替えた制服は更衣室に置いていたか?」
    「うん」
    「――……」

     あくまで可能性だが、授業中に女子更衣室に侵入して盗ったと言う事も考えられる。もしくは女子生徒の共犯者がいる……?

    「他に失くした物はないか?」
    「今日はないけど……ハンカチと同じ日にペンを1回失くした。でも、移動教室から帰ってきたらそれがアーニャがいつも教室で座る席に置いてあった」
    「それはどうした?」
    「気持ち悪いから、買ってくれたははに心の中でごめんなさいして、そのまま捨てた」
    「そうか。それで正解だな」

     何せ、アーニャのハンカチを汚して・・・返したくらいだ。ペンにも何をしているか分かったものじゃない。

    「――まぁ、状況はある程度分かった。
     ……けどな、フォージャー」

     そこでダミアンは大きく嘆息し、膝に肘をついて続けた。

    「――こんな事になってて、何で黙ってた?」

     左の手のひらを額に当てて前髪をくしゃりとやる。もやもやしたり、やり場のない悔しさが胸の内に湧き出た時にやってしまう悪癖。自覚しているが、抑えられなかった。

    「その様子だと、誰にも話していないんだろ? ブラックベルにも、先生にも、親にも」
    「……うん」
    「先生とか親に話しづらいのは分かるが、俺やブラックベルには相談してくれても良かったんじゃねぇの?」
    「……心配、かけたくなかった……」
    「後から知る方が余っ程心配になるっつーの」
    「……ごめんなさい」
    「あ……悪りぃ、言い過ぎた」

     ――責め立てるつもり無いのに、何で俺はこんな言い種になっちまうんだよ。落ち着け!

    「ここまで一人でよく耐えたな。でもこれからは俺もいる。助けるから安心しろ」
    「うん。……ふぇええ……」

     張り詰めていた感情が緩んだのか、アーニャが声を上げて泣き出した。そんな彼女がたまらなくなって、ダミアンは彼女の隣に座って、自分の胸に彼女を抱き寄せた。

    「こんな事なら、お前がおかしいって気付いた時点で訊いておけば良かった。ごめん」
    「じ、なんは、悪く、ないっ」
    「でも、お前がこんな風になるまで放置したのは事実だ。
     だからさ、これからはお前に何かが違和感覚えたら尋ねるし、お前も何か困った事が起きたら、俺とかブラックベルに相談しろ。な?」
    「……うん……あり、がと……」
    「ここは防音だし、俺以外の誰かに見られる心配もない。だから、ここで今のうちに思いっきり泣いとけ」
    「……ふぇぇ……っく……」

     ダミアンの身体にアーニャからの重みが増したのを感じて、彼女をしっかり抱き締めた。


    ◆◇◆


     月曜日を迎えた。

     普段の今頃は起床したくらいの時間帯だが、ダミアンは制服とマントをしっかり着込んで、バスの発着所近くのベンチに座って読書をしていた。程なくして朝一番の通学バスが入ってきた。ダミアンは本を閉じて立ち上がると、発着所の元へと歩き出す。
     発着所から数メートル離れた所で待っていると、男女併せて10人ほどが降りた後、最後にアーニャが降りてきた。彼女にとってもこのバスはいつもよりかなり早い時間だが、約束通り遅刻せずやって来たのでひと安心だ。

    「おす」
    「おはやいます」
    「無理、していないか?」
    「……うん。大丈夫」

     2人は連れだって、まだ人が少ない校内を歩き出した。
     朝早く登校した理由は、写真がどのタイミングで入れられているかを見極めるため。この時間で既に入れられていれば、犯人はこの朝一番のバス通学者か寮生であろうという所まで絞れるし、入っていなければ見張って現行犯で犯人を押さえる事態も視野に入れている。

    「今日は俺が先にロッカーの確認する。いいな?」
    「うぃ」

     校舎に入り、2人は言葉少なに真っ直ぐ自分達の教室の方へ向かう。いつもは生徒達や教職員で溢れるこの校舎だが、この時間はまだ登校している者が少なくて、校舎に入ってから今のところ誰とも遭遇していない。耳を澄ましても、聞こえてくるのは外のグラウンドでスポーツ系の部が朝練に励んでいる生徒の掛け声くらいで、あとは2人の足音や息遣いだけ。やけに大きく響いている気がして、何だか不思議な感覚だ。
     やがて――

    「周り、誰もいないよな?」
    「……うん、いない」

     アーニャの個人ロッカーの前。数歩離れた場所から見守る彼女の代わりに、ダミアンがドアに手を掛けた。

     ――キィ。

     微かな音を立ててドアが開いた。全開にして中を見ると――

    「……写真、入ってる」

     また1枚、写真がロッカー内部の棚の上に鎮座していた。
     先週金曜日、最終下校時間直前に確認した時は入っていなかったのに、今朝のこの時点で入っていると言う事は――

    (犯人は、家から早朝に登校する奴か寮生と言う事になるか……)

     写真をつまんで、確認する。
     やはり、少し離れた位置から撮ったような構図なのだが――


    ◆◇◆(場面飛んで)


    「おはようアーニャちゃん!」
    「おはやいますベッキー」
    「あら、デズモンドも一緒?」
    「ブラックベル、始業前に話がある。いいか?」
    「何よいきなり」
    「こいつに関する事だ」
    「……何かあったの?」
    「場所を移してから話す」
    「分かったわ」
    「フォージャー、お前はどうする?」
    「……教室に居る。そこなら大丈夫だから」


    ◆◇◆(場面飛んで)


    「フォージャーの代わりに俺が説明する」
    「で、何があったの?」
    「まずはこれを見てくれ」
    「何これ……隠し撮り? ……まさかストーカー」
    「恐らくな。毎朝フォージャーのロッカーに1枚ずつ入れられているらしい」
    「何ですって いつから」
    「先週の月曜から。しかも、金曜はエスカレートしやがった」
    「エスカレート?」
    「朝しか入れられなかった写真が、金曜は放課後にも入れられていた。それと――」

     ここでダミアンはハンカチの件をどこまで話すか逡巡したが、こいつなら大丈夫か、と少し声のトーンを落としてありのまま告げた。

    「――っ 嫌っ! 変態! 汚らわしい!」

     さすがの彼女も、青褪めて顔を歪めた。

    「フォージャーの事をそう言う目で見ているってアピールだろうな」
    「先生に言うべきよ!」
    「俺もそう思うんだが、当のフォージャーがそれを望んでいない。大ごとにしたくないって」
    「大ごとも大ごとよ! 警察に相談してもいいくらいに悪質じゃない! なんで……」
    「父親の仕事に影響出たら大変だからとか言っていた」
    「ロイド様のお仕事……って、今も総合病院で精神科医をされているはずよね? 影響って何かしら?」
    「分からない。そこは頑なに教えてくれなかった」
    「そう……。釈然としないけど、アーニャちゃんがそう言うなら尊重しましょう」
    「質問だが、フォージャーは先月から誰かの視線を感じていたらしいんだが、ブラックベルには心当たりないか?」
    「先月から? ……残念ながら分からないわね……」


    〈続く〉
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