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    ぽぷろあ

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    ぽぷろあ

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    タル鍾短文 恋人設定 幻覚強め なんでも許せる人向け
    いい夫婦の日記念 甘々になってたらいいな

    #タル鍾
    gongzhong

    知らなくていい事正午を少し過ぎた頃、鍾離は冒険者協会のある階段の下で一人佇む。上では旅人たちが依頼の完了を窓口に報告している所だろう。

    旅人が受けた依頼は新たに出現した秘境の調査だった。何があるのか解らないから。と、旅人に助力を請われ、鍾離は快く引き受け共に出掛けた。が、秘境自体は大した仕掛けもなかった。中に巣くっていたヒルチャールを掃討しただけに終わり、現在に至る。

    この後の予定をどうするか。そう胸中で呟きながら鍾離は腕を組む。難解な秘境である可能性を考慮して、今日一日丸ごと予定を空けていたのだ。思わぬ余暇に頭の中で予定をいくつか組み替える。今日は夕飯を作らないつもりだったが、この後、買い出しに出掛けて何か作るのもいいかもしれない。それから…

    「お待たせ、鍾離先生」
    「待たせたなー!」

    階上から、旅人が鍾離の前に駆け寄ってきた。遅れて、パイモンがふよふよと飛びながら、旅人の顔の横に並ぶ。依頼が滞りなく終わったお陰か、二人の顔には嬉しそうな笑みが浮かんでいた。

    「ああ、今日の依頼はこれで終わりか?」
    「うん、そうだね。手伝ってくれてありがとう先生」
    「構わない、今日は特に予定もなかったしな」
    「それより旅人ぉ…オイラ、お腹空いたぞ…」
    「お昼過ぎちゃったもんね。どこか食べに行こうか」
    「そうこなくっちゃ〜!どこに行こうかなぁ」
    「あ、もう…先に行くとはぐれるよ!」

    機嫌良く回りながら先に行こうとするパイモンと、苦笑いしながら窘める旅人。その二人の微笑ましいやり取りに鍾離が笑っていれば、パイモンの方を見ていた旅人がこちらを向く。

    「先生も良よければ一緒に行かない?」
    「いいのか?」
    「今日手伝ってもらったお礼も兼ねて、どうかな?」
    「そういう事なら馳走になろう」

    歩き出す旅人に鍾離も並び揃って歩みを進める。昼時のせいか、はたまた冒険者協会の周辺に飯屋が多いせいか、あたりは大変賑わっていた。

    「なあなあ!今日はどこで食べるんだ!万民堂か?チ虎岩にある屋台か?んひひ、オイラはどこでもいいぞ〜!」
    「うーん、どうしようか」
    「どれも美味しそうでオイラ決められないぞ!……ん?あれ?あそこにいるのは公子じゃないか?」

    パイモンが指し示した方向を見れば、チ虎岩の広場、そのど真ん中に佇むタルタリヤの姿が見えた。仮面をつけた部下を複数連れてその場を陣取っているせいか、異様な雰囲気を醸し出している。訝しんだ周りの人々が様子を伺い遠巻きにしている為、昼時で混雑しているはずの場所がそこだけぽっかりと空間が出来てしまっていた。

    「おーい!公…むぐっ」
    「パイモン!…流石に今は止めといたほうがいいよ」

    パイモンの声に気付いたのかタルタリヤがこちらを一瞥する。いつもの人のいい笑顔は鳴りを潜め、凍てついた視線が一瞬こちらを射抜いてきた。が、すぐに逆方向に逸らされる。彼の視線を追えば、スネージナヤの高官だろう異国めいた服装の人物が複数が合流してきたようだった。
    二言三言ほど言葉を交わした彼らは伴って緋雲の丘の方へと歩を進めていく。彼らが雑踏に紛れた事によって妙な緊張感を醸し出していた広場も、ようやくいつも通りの賑やかさを徐々に取り戻していった。

    わざと目立つように歩くとは珍しい。そう鍾離が感心していると、旅人に離してもらえたパイモンが鍾離の眼の前にふわりと浮かぶ。

    「なぁ、お前ら一緒に住んでるんだよな?…あんな感じで大丈夫なのかよ?」

    鍾離とタルタリヤは恋仲だし確かに一緒に住んではいるが、パイモンが何を心配しているのか分からず鍾離が首を傾げていると、先程のタルタリヤの態度について言っていると補足されてようやく合点がいった。

    「ふむ、特に問題は感じないが?」
    「ええっ!あれで??」
    「本当に大丈夫なの?」
    「ああ、心配する事はないぞ?」

    心底心配そうな表情を浮かべる友人達に笑って返せば、不思議そうに二人で顔を見合わせていた。根拠はあるし説明もできるが、鍾離はそれを敢えて口にせず笑みを深めていった。

    ✦✧✦

    火加減を慎重に見ながら時々円を描くようにかき混ぜる。慣れた手付きで夕飯を作っていった鍾離だが、ふと昼間のことを思い出して思わずクスクスと笑う。事情を知らない者から見れば確かに心配するのも分からなくもない。が、二人が心配することは何も無いのだ。

    何故なら…。

    そこまで考えて完成した鍋の火を止めると、同時に、玄関から物音が聞こえた。噂をすればなんとやら、タルタリヤが帰ってきたようだった。時間通りに出来たことに満足して鍾離は鍋に蓋をする。出迎えるために玄関の方に顔を出すと、タルタリヤが入ってきた所だった。

    「おかえり、公子殿」
    「先生っ!!昼間のアレは違うからねっ!!!」

    悲痛な面持ちをしたタルタリヤが家中に響き渡るような声量で叫び、鍾離に抱きついてきた。ビリビリと鼓膜を震わせるそれに鍾離が呆気にとられていれば抱きしめる力がどんどん強くなっていく。流石に苦しくなってきたので、なだめるように背を優しく叩いた。

    「公子殿、少し緩めてくれ。それにきちんと理解しているから大丈夫だ」
    「ホント?よかったぁ…ううう、あんなオッサンなんか置いて俺も先生と出掛けたかったよ…」

    腕が緩んだ隙にタルタリヤの顔を覗き込めば、涙目になりながら心底残念そうにため息をつく姿が鍾離の目に映る。

    心配しなくていい理由はこれだった。誤解になりそうな事があれば、今回の様に直ぐに訂正し愛情表現を欠かさない。タルタリヤは鍾離に対して常に誠実だった。誤解が無かったとしても、常に愛を囁き真っ直ぐに鍾離に何かしらの感情を伝えてくれる。

    ここまで大仰な表現になったのは鍾離のせいでもあった。想いを交わしあって間もない頃、恋愛感情に疎い鍾離が戸惑い悩んでいたのが発端だ。鍾離が不安になる度に、それを察したタルタリヤは言葉を重ね、忙しい筈なのに会う日が増え、遂には立場もあるだろうに一緒に住むまで発展していったのだ。

    思えば、タルタリヤには何かして貰うばかりだ。と、今更ながらに鍾離は気付く。果たして、同じだけの物を自分は返せているのだろうか?と。

    「…先生、どうしたの?何かあったの?今日なんか問題あった?相棒に何か言われた?それとも、誰かに何かされた?何だったらやっぱり昼間の事気にして…」
    「いや、待て、それは違う」
    「でも、ちょっと落ち込んだでしょ?俺の目は誤魔化せないよ」
    「誰のせいでもない。…ただ、その……」

    俯いてタルタリヤの胸元あたりを見ながら言い淀む。けれど、それを許さないと言わんばかりに両手で頬を挟まれて顔をのぞき込まれてしまった。

    「約束したよね?立場上言えない事以外はお互い隠し事は無しだって」
    「ああ、そうだな。その…」
    「うん、ゆっくりでいいよ。どうしたの?」
    「………俺はきちんと返せているだろうか?」
    「うん?」
    「公子殿には以前からずっと良くしてもらっている…だが、俺はそれに見合うだけのものは返せているだろうか?」

    キョトンとしたタルタリヤが数度瞬き、沈黙が辺りを支配する。変な質問をしてしまっただろうか。その考えがよぎる前にタルタリヤが満面の笑みを浮かべる。

    「えー?気付いてないんだ、そっか、そっか」
    「……何がだ?」
    「そうだね…例えば、いつも今日みたいに出迎えてくれる。それも、俺がどれだけ遅くなっても灯りをつけて待っててくれる所とか。出掛けるときもそう、先生が早出じゃない日は絶対見送ってくれるよね?それだけで超愛されてるなーって感じちゃうなー!それに、普段はそうでもないのに、休みの日は先生の方からくっつきに来てくれたり、手を繋ぎにきたり、二人並んで座ってたら肩に寄りかかってきたり甘えてくれてすごく嬉しいよ。休日といえばベッドの中だと、もがっ…!」
    「わかった!十全に伝わっていると理解したからそれ以上はいい!!」

    意識してやっている事から無意識にしている事まで列挙されてしまい顔から火が出そうだった。ギロリと睨んで慌ててタルタリヤの口を塞ぐが、どちらも効果はなさそうだった。

    「ぷはっ……あはは、顔真っ赤でカワイイ。というワケで、こんなに愛されているんだもん。先生に不満なんてないよ?逆に先生こそ何か不満とかないの?」
    「そうだな…今、一つだけあるな」
    「えっ!?…な、なななな、なに?ど、どのへん??!!」
    「……おかえり」
    「へっ?」
    「…挨拶が重要だと言ったのは公子殿だろう?」
    「え??…あっ!……ただいま、先生」
    「ああ、おかえり」

    そう言って、お互い自然と口付けを交わす。こういった恋人としてのタルタリヤの側面を知るのはきっと鍾離だけなのだろう。旅人たちは知る由もないだろうし、改めて知らせるつもりはなかった。

    誰も知らなくていい。二人だけが知っていればそれでいいのだから。
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