──コウくん、今日お誕生日なんだ。
じゃあ、お祝いしないと
───僕、お花とってくる
別にいいよ、お祝いなんて──
柄にもなくガキの頃を思い出したのは、今日があの日と同じような天気で、同じ面子で、同じ日付けだからだろう。
『主役は座ってて』なんて同じ台詞まで言われたら、暇をもて余した身としては思い出す余裕もある。
テーブルの中央に陣取ったビター味のチョコレートケーキは、青空の下で用意され土と野花で作られたケーキとよく似ていて、動き回る二人を眺めるのにいいつまみになった。
「あーー!!コウがつまみ食いしてる!」
「えぇ?! もうちょっと待っててよ!」
欠けたケーキに文句を言いながら並んでいく料理は少しばかり量が少なく思ったが、どれも俺の好物だ。
「うるせぇ、腹減ってんだ。待ってんだから早くしろ」
「もぅ、可愛げないなぁ」
「ンなもん俺に求めんな」
準備が終えたのかエプロンを外しながら言う文句は見慣れたもんだ。
「まぁまぁ、コウは寂しかったんだから仕方ないよ」
「はぁ?!」
「お兄ちゃん寂しがり屋だから。あの時みたいに放っておかれて寂しかったんだ。
拗ねてる。」
「本当だ…あの日と同じ顔してる」
「どんな面だよオイッ!」
訳が分からなくて怒鳴ってもコイツらには微塵も効果がなくてニヤケていたルカに無理矢理、冷えたコーラの瓶を渡された。
「コウ、誕生日おめでとー」
「お誕生日おめでとう!」
「待てコラ!」
三本の瓶がぶつかる音が響く。
「ほらコウ喰おう」
「まずは自信作のステーキから!」
「…たくっ、仕方ねぇな」
ガキん頃からちっとも変わらない顔で笑う二人を見てると、言いたかったことはため息と一緒に消え失せた。