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    biommsour

    @biommsour

    過去に書いたものの置き場です

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    ゆさあお/島くんと遊作/Aiと遊作(ハロウィン)

     LINK VRAINSに初めて没入した日のことを、財前葵はよく憶えている。
     アバターを作成するにあたって、すでに葵はモチーフを心に決めていた。幼い頃に兄に与えられた絵本──何度読み聞かせをせがんでも兄は嫌な顔ひとつせず、幼い葵に読み聞かせてくれたものだし、自分で読めるようになってからだって、葵は何度も何度もこの絵本を繰り返し読んだのだ──に描かれていた心なき御使い『ブルーエンジェル』。
     幼い葵はおよそ思いやりというもの、人の心とか慈愛といったものを持たず苦悩する天使をいたく気に入った。それは他人に対していまいち積極的に関わっていけない葵が唯一心を向けた存在だった。神の偉きな愛を伝達する機関としての無垢は、人間の信仰は理解出来ても心までは理解しえないのだ。幼い葵は、なんて神様は無慈悲なのだろう! と思ったものだ。そうして、心なき御使い、ブルーエンジェルが本当の愛を獲得するまでの物語は、読み返すごとに葵の心の隅々まで浸透した。それは触るとひんやりするようで、透き通る青い色をした読後感だったのだ。
     アバターを一から作成することもできたけれど、それはわりあいに手間のかかる作業だ。一般に推奨されるLINK VRAINSでの基礎的なアバターの作成方法は、自分の身体情報を基準値として入力し素体をつくり、後は好みに合わせてすこし手直しというするもので、この作成方法ならギャップが少なく済んで現実へのフラッシュバックが基準範囲内に収まる。アバターに仮想空間での自身の分身として、現実の理想や願望を反映させることは言うまでもなくよくあることで、だから、一から自分の理想像としての自分アバターを作成する者も珍しくはなかった。
     LINK VRAINSは利便性の高い空間ではあったが、まだ試作段階のプログラムがテストされるなど、実際は実験の域を出ない開発途上の仮想空間で、生身を持つ人間が見たい夢を見るにはいまだ不完全である。
     葵は身体データを元に、基準範囲内で数値を調節しながらも、ブルーエンジェルにアバターを近づけていった。この時点で、この御使いは紛れもなく、もう一人の自分であった。


     何もかもが0と1とで定義され構築されるもう一つの現実、LINK VRAINSの地に初めて降り立ったブルーエンジェルは、思わず、たったいま、自分が舞い降りてきた頭上を仰いだ。
     どこまでも拡張し続ける電子の空。ホログラムにノイズが走るのを眺めていると、ふと、風を感じた気がした。
     LINK VRAINSにも風は吹くのだろうか……何もかもが仮想の現象なのに? 風が吹いて……それをこの電子の身体は感じたはずなのだ。
     ブルーエンジェルが再び見上げた空は、家にひとりでいたときにつけたTVの画面に映る砂嵐の色をしている。



    「お兄さま、今日はLINK VRAINSに入ってきました」
     夕食の席で、葵はお兄さまに日々の出来事を報告する。週に一度は必ず一緒に食事を取ること、それは二人の約束なのだ。日々の出来事の報告とはいっても些細な事柄で、けれど兄は優しい相槌と眼差しを葵にくれるのだ。葵のあまり起伏のない平穏な日々は、彼女が他人と積極的には関わらないことや兄の厚い庇護によって成り立っていた。葵はただ、兄がいつも無条件で広げてくれる大きな庇護の下にいるだけで、わりあいに幸せだった。だから、葵にとって他人はあまり必要ではなかった。
     兄は、ふたりに降りかかった不幸以来、ずっと葵のことを庇護し、愛情を持って接してくれている。この夕食だって、残業続きの仕事の都合をつけてわさわざ設けてくれている。兄は葵に対して自らの境遇に対する弱音を吐くことは決してなかった。葵は幼い頃から、歳の離れた血の繋がらない兄の、そういう優しさや強さを尊敬し、血よりも濃い親愛を感じていた。
    「そうか。アバターを見せてごらん……よく出来てるじゃないか。これは『ブルーエンジェル』だね」
    「そうです。お兄さま。憶えていてくださったのですね。お兄さまがいつも読み聞かせてくださった絵本のブルーエンジェルです」
    「葵はあの絵本が大好きだったね」
    「はい。私は……いまでも……」
     着信のけたたましい電子音を鳴らしながら、財前家の汎用型家事ロボットがふたりの食卓へ近づいてきて、葵の言葉は途切れる。今は一家団欒の時間なんだから……とお兄さまは電話に出もしないで、ロボットに着信を切るように指示をした。
    「ごめんな、食事中に。それよりいま、何か言いかけてなかったか?」
    「いいえ、お兄さま」と葵は会話を区切る。「LINK VRAINSに入ることで、お兄さまのお仕事を見ることができるようで、とても嬉しいです」
    「まだまだ発展途上だけどね。葵がそう言ってくれると、社員としてはもっと頑張らなきゃ、と思うよ」
     お兄さまは優しい、と葵は心の中で唱える。お兄さまは優しい……自分のためにこんなに良き兄として振る舞ってくれている、それをわかっているのに、どうしてこんなに会話が上滑りしていくように感じてしまうのだろう? そうして、心が満たされないと感じてしまうのだろう? 
     葵はその日の夕食の席で、いまでもブルーエンジェルを、あの無慈悲な天使を……心に留めていることを、お兄さまにはついに言えなかった。
     自分は絶えず兄という太陽の光に無条件に照らされ育つ植物のようだと葵は思う。いつでも兄の光の中に葵はいて、光の方を向いていた。なのに甘受する光の中で葵が育つにつれ、彼女は自身の足元に生まれる影を無視できなくなっていた。いつからか、自分の足元ばかりを見て、兄の方を向かなくなっていた。
     ただ、兄の光は変わらずに自分を照らしつづけている。その光だけを感じていた。


    「アイドルごっこはもうやめなさい。もう十分遊んだだろう」いつからかお兄さまは繰り返す。「お前が心配なんだ、分かるだろう?」とか「どうして分からないんだ」とか。
    「はい。お兄さま」と葵は繰り返す。肯定も否定も示さない言葉で。「はい。お兄さま」何度も繰り返すだけだ。
     現実の身体はお兄さまと対面していたけれど、お兄さまを見てはいなかった。仮想と現実、どちらが本当らしいのだろう、と葵は、ブルーエンジェルは、考える。足元の影が延びていく。お兄さま。お兄さま。お兄さまに……お兄さまの光から切り離されたところでも、認めて欲しいと思うのは……間違っていることなのでしょうか?
     私の天使たちは輝く舞台へと登っていきます。私の天使たちは自ら光を放っているように、輝いているように思えてならないのです。ならば、きっと私は……。


    ──強く風が吹いている。やはり、LINK VRAINSに風は吹くのだ! 
     ブルーエンジェルは、データマテリアルの流れが頬を撫でる感触に、初めてここへきた日のことを思い返す。あの日と変わらず、電子の空は死んだテレビ画面の色をしている。心なき御使いが遊ぶ天上の御国は、こんなにも暗い。

     すぐ近くで爆発音がする。
     異常事態だと悟ったときには、空を旋回する敵性体がブルーエンジェルを捕捉していた。彼女は慌てて駆け出したが、背後から破壊の限りを尽くす炸裂と爆風が彼女を呑みこもうと迫り、追いついた──そうして、彼女は激しい風の中で、Playmakerと出逢ったのだ。


    ────────────────────


     学校の外で、ましてやLINKVRAINSの外で、彼と会うのは初めてだった。
     そういえば……とわざわざ言い回しを改めて付けて、初めてだな、なんて無関心を装って思い返してみるほど、葵は他人に対しての関わり方に慣れているわけでもなく、だから素直に、彼に会うという予定が特別なのだと思い返す。放課後の部活動の後での待ち合わせで、陽はもうすぐにも落ちてしまいそうに、統制され建ち並ぶ摩天楼の隙間にわずかだけ引っかかり、滲むような淡い夕陽の茜色を放射している。
     広場まで来ると、遊作の姿が見える。いつも広場に停められているキッチンカーの手前に彼は立っていた。
    「藤木くん、お待たせ」
    「ああ、財前。そんなに待ってはいない」
    「そう……」
    「……」
    「……」
     会話はそれで途切れて沈黙する。お互いにどう話しかけたものだろうか、という思案だけは伝わるのに、なかなか次の言葉は出てこない。
     ビルの外装の硝子に反射して残っていた夕陽が溶け落ちて、辺りの空気は茜色から青色を濃く塗り重ねていく色へと変化していく。夜の気配がDen cityにくまなくヴェールをかけて、それは沈黙するふたりにも降りかかる。色とりどりのネオン管が点灯し、電脳都市めいた夜がはじまる。
     葵は隣の遊作の顔をそっと目だけで見やってみた。薄い青のような、黒のような、不思議な空気の中で、遊作にネオンの電光が重なる。髪や横顔や制服の襟や……薄い暗闇の中で遊作の輪郭を確認するように、葵の瞳は遊作を辿った。
     その瞬間に、こちらを見た遊作と目が合う。光が、街やネオンや葵を見る無数のさまざまな光が、遊作の瞳の緑に映っていた。
     葵は何故か広場の雑踏や騒がしさが聞こえなくなって、それは一瞬だったはずなのに、とても長い時間を、遊作と見つめ合っていたような気になった。
    「な、なに……?」
    「そっちこそ、なんだ」
     会話はまるで弾まないのに、葵はそれをあまり気まずくも嫌だとも思わなかった。それよりも、いまの一瞬を、見入ってしまった遊作の姿を、きっと自分は忘れないのだろうと、直感した。したのに、でもそれが何故だかはわからない。
     無数の人工的な光が陽に代わり、Den cityを、ふたりを、闇に淡く浮かび上がらせる。まるでネオンのよう。遊作は……そうだ、夜闇に溶けたネオンの鮮やかなその電光に似ているのだ、私たちが暮らす街の、そのランドスケープそのもの。それを綺麗だと思うこと……口に出して伝えるには、まだもう少し彼は遠い。そんな気がして葵はまだ、黙ったままでいる。


    ────────────────────


     遊ぶ、という文字よりも、一般に、優しいとか勇ましいだとかの字を使うのではないか、と島直樹が勝手に思ったりするのは、クラスメイトの藤木遊作の名前についてだったのだが、名前というものは、親が子どもの意思や希望とはまったく無関係に付けるものだし、つまりは親の趣味なのだからそれまで、と言ってしまえばそれまでのことで、それにしても、数ある漢字の中から選ばれたそれが、遊ぶ、なのはそこに何か意味があるのだろうか、と彼は関心を持ったのだったけれど、当の遊作本人は、そんなことは知らないと言うし、そんなものに意味はない、とまで言い切ったので、ちょっと面食らって、この、自分が話しかけなければ、向こうからは決して話しかけてこようとはしない、いつもひとりでいるクラスメイトを、やっぱりちょっと変わった奴だと改めて思い、けれどそんな奴にわざわざ構う時点で自分も同じようなものであることくらいは充分にわきまえている島は、それ以上、その話題を続けるのはやめ、当たり障りのない、授業がめんどくさいとかだるいとか眠いだとか、それ自体には意味のない言葉で会話を一方的に投げて切り上げてしまった……ということを、ふと思い出したのは、藤木遊作がしばらくの欠席、休学ののち復学して、学年がひとつ違ってしまった彼を偶然廊下で見かけたときで、久しぶりに見た彼は、少し痩せていて、なんだかそれが彼を大人びて見せ、休学していた期間にきっと何かがあったことを感じさせるのだったけれども、さすがにそれを聞き出すほどには打ち解けていないとわかっていたので、島は、以前と同じようにちょっかいをかけるような素振りで遊作に話しかけ、久しぶりだなとかどうしてたんだとか、やはりそんな差し障りのないことを言い、それは島なりの気遣いだったのだが、久々に話した元クラスメイトで変わり者の藤木遊作は、少し柔らかな表情をしてから、久しぶり、と返したので、島は驚き、それはすごく驚いてしまったので、もう同じクラスじゃないんだな、などと余計な一言を言ってしまったことはすぐに後悔して、遊作をうかがい見たのだけれど、遊作は、たまに話をするのは結構楽しかった、ありがとう、などと柄にもなさそうなことを言ったので、それにも更に驚いてしまい、けれどもしかしたら、藤木遊作という元クラスメイトは、自分と同じで、本当はこんなふうに他人と関わりたかったのかもしれないし、そういえば、いつか遊作自身は意味などないと言っていた名前の遊ぶは、だだその文字の通りに、遊ぶことだったとしたら、今度は遊作を部活に誘ってみようと思い、それでなくても、デュエルができたらなあ、とまた勝手に、元クラスメイトよりは友人として、思うのだった。


    ────────────────────


     6歳のときに初めて殺人を犯したという稀代の殺人鬼マイケル・マイヤーズは、10月31日の前夜、収容されていた精神病院を脱走し、あの不気味な白いマスクを被った姿でヒロインの前へ突如として現れ、肉切り包丁を振りかざし襲いかかるのだったが、そんな映画を見ようと誘ったのは、まあハロウィンにちなんでAiが提案したちょっとした娯楽のつもりで、しかし、そもそも遊作が映画を、というか、ホラー映画を楽しめるような感性の持ち主だったかといえば、それは怪しい。
     それに6歳というのは遊作にとって示唆的な年齢だ、Aiは少し気後れして、こんな映画を選ばなければよかったかもしれない、あらすじなんて検索するどころかストリーミングの再生ボタンの横にだって載っているのに、そこまで気というか頭が回らなかったのは、いったいどういうことだろうと自らの電脳を疑うし、遊作の顔色をうかがうし、その遊作は映画がはじまってから眉をぴくりとも動かさずに画面を見つめているし、なんだか、Aiが予想(というより妄想)した、遊作がちょっと怖がる様子というものは、だから全く見られなかったのだ。
     ヒロインが二階の部屋からのぞいた庭先で見つけるのは素敵な恋人ではなく殺人鬼で、すぐに古典恋愛劇のワンシーンを参照したAiは笑えてしまい、この暗黒ボーイ・ミーツ・ガールを遊作がどう思ったのかを、素直に聞いてみたい気にもなり、そうするとまさか遊作相手に肉切り包丁が何をあらわしているのかまでを議論しなければならない気までしてきたので、Aiは勝手に喋り出しそうな口をつぐむのだが、わざわざホラー映画など見なくても不条理な恐怖というものを知っている遊作には、もしかしなくても余計なお世話かもしれない。
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    biommsour

    PASTあいゆオンリーの無配でした。ありがとうございました!
    愛の生活「久しぶりだな、この部屋もさ」
     久しぶり、というAiの言葉に、いったいどれほどの感慨が込められているのだろうか、と遊作は思い、けれど、いちいち感傷じみた気持ちを浮かべてAiを見つめるのは、なんというか、それは違う、と自分に言い聞かせて、ただ、そうだな、と彼は返事をした。
     心が壊れるかのような別離からしばらくして、Aiはひっそりと、遊作のもとへ帰ってきた。帰ってきたというのが正しいのか、遊作はこれから考え続けなければならない、と思っている。あのとき、Aiは遊作の目の前で、遊作の選択で、消滅したからだった。繋がりの途切れる瞬間を見た。あれは、確かに死だった。
     Aiは、体重を掛けると金属のフレームが軋んで耳障りな音をたてる質素なベッドに座って、壁の方へ視線を向けていた。ところどころ塗装が剥げた壁は内部のブロックが露出している。Aiの過ごしてきたシミュレーションという那由多の時間に比べたなら、まだ新しいと言えるかもしれないこの部屋の壁にも、遊作やAiやロボッピや、その前の住人たちの時間が、埃やシミとなり、キズや塗装の剥がれとなって、確かに堆積しているのだ、と遊作は考え、やはり、自分は幾らか感傷的になっているのだと自覚した。
    1969

    biommsour

    PAST以前ラキカで公開したロアロミの再録です
    「わたし、けっこう料理が上手くなったと思うんだけど……」
    「この惨状を見てもそう言えるワケ?」
     一般的に料理とは、鍋から噴水のようにあふれ出し、部屋を汚したりするものではないとロアは思うのだが、ロミンにとってはそうでもないらしい。
     彼女はその壊滅的な料理のセンスでロアの部屋をカレーの海に沈め(るだけならまだしもマンションごとカレー浸しにして管理組合にひどく怒られた)たのだが、そんなことではめげないらしく、初めて作ったカレーが案外好評だったのが相当な自信になったようで、それから今にいたるまで、彼女はときおり彼の部屋に、ただ、カレーを作りにくる。
     ロミンがカレーと呼ぶ極彩色は、刺激を与えなければ鍋の中にとどまっているところまで来たが(?)ほとんど爆発物だと思って取り扱わないと危険なそれを料理と呼ぶのが適当なのか、ロアは途中から考えるのをやめ、そのくせ、口に入れてしまえばわりといける味で、だから彼は、もう少しバンド活動を広げて、まだ一応は賃貸だったこの部屋くらいはせめて買い取らなければと、ふたたび鍋から噴き上がりはじめたカレーを見て、思ったりする。
    3748

    biommsour

    PAST大華と龍久
     両親は姉弟に対して、特にその役割や立場を押し付けるような教育方針ではなかったから、龍久ははじめ、大華のことを名前で呼んでいたし、そういう姉弟の関係性について、何も考えたことがなかった。確かに大華は姉であり自分は弟なのだが、この名前の通りに、大きな華の咲くように何事も派手なところのある姉を、そういう姉を持った弟にはよくありがちに、畏れ、圧倒されつつ、一番近くで一番遠巻きに眺めて育ったのだった。他人から見ればよく似ているまごうことなき姉弟は、しかし、本人たちにしてみれば、かなり違うところがあり、姉は常に強く、弟は常に弱かった。
     姉はいつしか龍久が名前で呼んでも反応してくれなくなり、大華をタイガーと読んで呼べと大仰に言い、龍久はちょっと困って、しばらくは姉の変化に戸惑うことになった。名前が変わることはそのまま、ふたりの関係性が変わることだった。別の名前で呼べという癖に、自分は頑なに、なんとか太郎だとか姉の印象丸出しで弟を呼び、正しく名前を呼ぼうとはしなくなっていた。もっとふたりが幼い頃は、姉は龍久と名前で呼んでくれたこともあるはずなのに、それはもう遠くなりはじめた幼少期の、思い出の中だけの出来事で、姉も自分もそこへ戻ることは二度とないのだと、弟はいつも不意に、姉との関係を思い知らされる。
    2060