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    biommsour

    @biommsour

    過去に書いたものの置き場です

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    PASTあいゆオンリーの無配でした。ありがとうございました!
    愛の生活「久しぶりだな、この部屋もさ」
     久しぶり、というAiの言葉に、いったいどれほどの感慨が込められているのだろうか、と遊作は思い、けれど、いちいち感傷じみた気持ちを浮かべてAiを見つめるのは、なんというか、それは違う、と自分に言い聞かせて、ただ、そうだな、と彼は返事をした。
     心が壊れるかのような別離からしばらくして、Aiはひっそりと、遊作のもとへ帰ってきた。帰ってきたというのが正しいのか、遊作はこれから考え続けなければならない、と思っている。あのとき、Aiは遊作の目の前で、遊作の選択で、消滅したからだった。繋がりの途切れる瞬間を見た。あれは、確かに死だった。
     Aiは、体重を掛けると金属のフレームが軋んで耳障りな音をたてる質素なベッドに座って、壁の方へ視線を向けていた。ところどころ塗装が剥げた壁は内部のブロックが露出している。Aiの過ごしてきたシミュレーションという那由多の時間に比べたなら、まだ新しいと言えるかもしれないこの部屋の壁にも、遊作やAiやロボッピや、その前の住人たちの時間が、埃やシミとなり、キズや塗装の剥がれとなって、確かに堆積しているのだ、と遊作は考え、やはり、自分は幾らか感傷的になっているのだと自覚した。
    1969

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    PAST以前ラキカで公開したロアロミの再録です
    「わたし、けっこう料理が上手くなったと思うんだけど……」
    「この惨状を見てもそう言えるワケ?」
     一般的に料理とは、鍋から噴水のようにあふれ出し、部屋を汚したりするものではないとロアは思うのだが、ロミンにとってはそうでもないらしい。
     彼女はその壊滅的な料理のセンスでロアの部屋をカレーの海に沈め(るだけならまだしもマンションごとカレー浸しにして管理組合にひどく怒られた)たのだが、そんなことではめげないらしく、初めて作ったカレーが案外好評だったのが相当な自信になったようで、それから今にいたるまで、彼女はときおり彼の部屋に、ただ、カレーを作りにくる。
     ロミンがカレーと呼ぶ極彩色は、刺激を与えなければ鍋の中にとどまっているところまで来たが(?)ほとんど爆発物だと思って取り扱わないと危険なそれを料理と呼ぶのが適当なのか、ロアは途中から考えるのをやめ、そのくせ、口に入れてしまえばわりといける味で、だから彼は、もう少しバンド活動を広げて、まだ一応は賃貸だったこの部屋くらいはせめて買い取らなければと、ふたたび鍋から噴き上がりはじめたカレーを見て、思ったりする。
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    PAST大華と龍久
     両親は姉弟に対して、特にその役割や立場を押し付けるような教育方針ではなかったから、龍久ははじめ、大華のことを名前で呼んでいたし、そういう姉弟の関係性について、何も考えたことがなかった。確かに大華は姉であり自分は弟なのだが、この名前の通りに、大きな華の咲くように何事も派手なところのある姉を、そういう姉を持った弟にはよくありがちに、畏れ、圧倒されつつ、一番近くで一番遠巻きに眺めて育ったのだった。他人から見ればよく似ているまごうことなき姉弟は、しかし、本人たちにしてみれば、かなり違うところがあり、姉は常に強く、弟は常に弱かった。
     姉はいつしか龍久が名前で呼んでも反応してくれなくなり、大華をタイガーと読んで呼べと大仰に言い、龍久はちょっと困って、しばらくは姉の変化に戸惑うことになった。名前が変わることはそのまま、ふたりの関係性が変わることだった。別の名前で呼べという癖に、自分は頑なに、なんとか太郎だとか姉の印象丸出しで弟を呼び、正しく名前を呼ぼうとはしなくなっていた。もっとふたりが幼い頃は、姉は龍久と名前で呼んでくれたこともあるはずなのに、それはもう遠くなりはじめた幼少期の、思い出の中だけの出来事で、姉も自分もそこへ戻ることは二度とないのだと、弟はいつも不意に、姉との関係を思い知らされる。
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