コンビ愛が強過ぎる芸人で有名な事で知られている私達ではあるが、極稀にピンの仕事が入る。
大抵、髙羽だけが呼ばれるのはどっきり企画ネタだ。
千年も生きていると、大体の事象の前兆が分かってしまう。
だからどうやって知らないふりをしようかと、悩んでこたつに入りながら考える。
「ふわー?」
「おや、ふわ髙どうしたのかな?」
こたつでボーッとしていた私の元に、ふわ髙がやって来ていた。
愛らしい丸いフォルムを潰さない様に、両手で掬い上げてこたつの板の上に乗せる。
「ふわ、ふわわ!」
「あぁ、髙羽は今居ないよ。ん?のる髙が居ないのか、何処かな」
どうやらのる髙が見当たらないらしく、私に知らないかと聞いてきたらしい。
居るとするなら、髙羽が買ってきたふわとのるのダブル髙の為のベッドだと思っていた。
ふわ髙を肩に乗せて、ベッドの側に行くが見当たらない。
何処だと探していると、DVDを板の上に見立てて綿の塊二体とのる髙がネタ合わせをしていた。
頑張ってフリップに手を掛けているのる髙は愛らしいが、いかせん綿の塊二体が邪魔過ぎる。
フリップ芸を見せているのか、のる髙は一つ終わるとあの小さな手足を動かしてフリップを捲ろうとしていた。
可愛らしい光景に微笑んでいると、のる方の綿がネタの駄目出しを始める。
その気持ちは分かるが、ネタ以上に可愛いから許してやればいいのにと自分を棚に上げて思う。
「のるるぅー。のる、ののる!ののるる?」
あのさぁ、そのギャグ、観客が付いてけないの!分かる?って、それはそうだった。
でもあの短い手でフリップが落ちないように、必死だったから気付かなかったのだろう。
もう少し手を加えれば、どうにか二人、せめて三人くらいは笑ってくれるネタにはなる。
とどのつまり全員を笑わせるには、パンチが弱すぎるギャグだ。
「の、のる……」